現在、スバルで最も新しい車名は今年6月に発売されたクロスオーバー7である。ただ、カタログなどに記される車名ロゴでは冒頭に小さくEXIGA(=エクシーガ)と書かれるので、このクルマの正式車名は"エクシーガ・クロスオーバー7"である......といった回りくどい説明をしなくても、その実体は既存のエクシーガ(第21回参照)のプチ整形グルマであることを知っている人は多いはずだ。

 クロスオーバー7のモトとなったエクシーガは、スバルがつくった唯一の本格ミニバンであり、2008年に発売された。見た目はレガシィ・ツーリングワゴン(第36回参照)をちょっと背高にしただけ......のエクシーガは、ミニバンとしては背が低めで、リアドアが普通のスイング式であることが特徴だった。

 エクシーガはとても良くできたミニバンではあった。見た目から想像しづらいほど、3列目まで健康的な居住空間だったし、現在の目で見ても、エクシーガの走りの良さは際立っていて、クルマ好きのツボをもっとも刺激するミニバンでもあった。

 ただ、エクシーガ発売当時、ミニバンはすでに淘汰の時代に入っており、ミニバン市場には「背高スライドドアのタイプ以外は売れない」という傾向がハッキリ出つつあった。スバルとしては「走りのスバルのミニバンはこれしかない!」という強い思いで開発したのだろうが、エクシーガはデビューした瞬間から「今さら?」の感があったのも否定できない。事実、エクシーガは一部マニアから高い評価を受けたものの、ベストセラーランキング上位に顔を出すことはほとんどなかった。

 繰り返しになるが、そんなエクシーガをハヤリのSUV風味にプチ整形して、ちょっとだけ地上高をカサ上げしたのがクロスオーバー7である。興味深いのは、クロスオーバー7の発売と同時に従来型エクシーガは廃止されて、スバルはこれを「SUV風のミニバン」ではなく「7人乗りのSUV」として売り出したことである。戸籍上(?)の正式名に「エクシーガ」という出自を残すのは言い訳みたいなもので、車体に貼られるバッジにはエクシーガの文字すらないのだ。

 こうしたプチ整形はクルマ業界にはけっこう昔からある手法で、通常は、悪い意味での"哀愁"がただようことが多い。骨太な思想のクルマをありがたがる傾向の強いマニア筋には、このようなナンチャッテ感の強いクルマは、本来はツボの対極に位置する。

 しかし、実際のクロスオーバー7はなんか魅力的で、どうにも憎めない。もともとのエクシーガがステーションワゴンに毛が生えたスタイルだったせいか、こうしたSUV風の化粧直しがやけに似合っていて、ツボを心地よく刺激されるのはワタシだけではあるまい。

 クロスオーバー7はもとがミニバンだけに、サードシートを畳んでSUVとして見ると、トランクが巨大で使い勝手がいい。ミニバンとしては「こういうカタチのミニバンは、やっぱり3列目がせまいなあ」と意地悪になってしまうのだが、SUVとして見れば、いきなり「イザというときに7人乗れるなんて超便利!」とポジティブシンキングになってしまうから不思議......というか、われながら人間なんてチョロイもんである。

 もっとも、クロスオーバー7のツボはこうした企画の妙だけでなく、その整形技術もじつは高いこともある。新しいスバル顔もモトのシルエットにうまく融合しているし、SUV化のキモであるルーフレールやリアスポイラー、下半身のブラックアウト処理も、見事なバランス感覚のプロの仕事というほかない。ちょっと日本車ばなれした明るいブラウン内装も、どうしても生活くさいミニバンのイメージから脱却させるのにメチャ効いている。

 走りもそう。クロスオーバー7は、スバル最新のチューニング技術に加えて、「しょせん地上高が大きいSUVだし......」という割り切りが良い方向に転んでいて、ほどほどに穏やかで大人っぽいツボをついた乗り心地に仕上がっている。乗るだけでホッコリする癒し系なのに、ステアリングは正確なのだ。それに4WD技術はスバルの十八番。クロスオーバー7のように地上高をちょっと上げるだけで、悪路性能もナンチャッテSUVをまとめて倒せるレベルになってしまうのだ。

 ワタシ個人はこうしたプチ整形ナンチャッテ系の延命商品は嫌いである。なのに、クロスオーバー7は、不思議なほどツボにあふれる。これはちょっとした奇跡だと思う。

佐野弘宗●取材・文 text by Sano Hiromune