病気予防政策で医療費がむしろ増加するという逆説

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 前回の本コラムでは、2016年度から、健康保険に「インセンティブ制度」が導入されることをお伝えした。

 医療費の利用が少ない人を優遇する仕組みを作って、国民に自発的に病気予防や健康作りの「自助努力」をしてもらおうというもの。増え続ける社会保障費を削減するための国をあげた健康増進計画で、次のようなスケジュールが示されている。

◆2016年度〜:自治体などが主催する健康教室の参加者にヘルスケアポイントを付与する仕組みの拡充

◆2018年度〜:健康づくり支援や価格の低い後発医薬品の普及で成果をあげた健康保険組合などの保険料負担を軽減。現役世代負担している高齢者医療制度への支援金の負担を減らし、加入者の保険料の引き下げを可能にする。

 それぞれの健康保険組合は、国が作るガイドラインに沿って、病気予防や健康づくりの努力をした加入者に対して、ヘルスケアポイントの付与や保険料のキャッシュバックができるようになる予定だ。

 これが現実のものとなると、医療の利用が少ない人の保険料の負担は実質的に引き下げられる反面、健康に不安のある人の負担が重くなる可能性も出てくる。健康リスクによって保険料に差がつく仕組みは、「応能負担」という社会保険の原則を破壊し、国民皆保険の根幹を揺るがすことにもなるため、慎重論も出ている。

 では、国威発揚のごとく打ち上げたられた健康増進計画には、本当に医療費を削減する効果があるのだろうか。

予防や健康づくりをすると
逆に医療費が増える!

「健診による病気の管理、適切な食生活や運動による健康づくり」⇒「病気知らずの健康体になれる」⇒「その結果、医療費が削減できる」

 病気の予防や健康増進活動による医療費削減のロジックは、一見、もっとものように思えるものだ。その考えは万国共通のようで、世界のさまざまな国で予防による医療費削減のモデル事業や研究が行われてきた。

 だが、医療経済を専門とする日本福祉大学の二木立学長の研究によると、病気予防や健康づくりによって医療費が削減できると実証されたものはない。

 予防や健康増進活動によって健康状態の改善は認められるものの、「医療費の節減効果はほとんど確認されていない」という。その逆に、「厳密なランダム化比較試験に基づき、広く社会的次元で費用計算を行った研究では医療費を増加させるとの結果が得られて」いるというのだ(「健康寿命延伸で医療・介護費は抑制されるのか?――『平成26年版厚生労働白書』を読む」より」)。

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