アイドル主演映画というと、演技派俳優は数えるばかりで主演と同じ事務所のバーターキャストによる茶番劇。いや、出演アイドルを愛でられることが第一義であり、そういった要素がカリカチュアされた作品であることがむしろ正解──

 概ねそんな感じのモノがアイドル主演映画とすれば、プロレスラー主演映画も大体似たようなもの! まさにそんな感じの作品が『あゝ一軒家プロレス』(2004)です。

 アダルトビデオ製作で知られるソフト・オン・デマンドがテリー伊藤を総合演出に、5億円で自主制作したとして話題になった本作は、当時「ZERO-ONE」を率いていた橋本真也を主演に迎え、ヒロインには当時やけにマッチョだったソニン。その脇を固めるのは、佐野史郎、菅田俊ら極僅かな演技派俳優と、その他、多くを期待してはいけない布陣です。

 プロレス団体「ZERO」を率いる獅子王(ししおう)耕太は、妻・麻美の実家である一軒家を無事改装。しかし改装記念パーティーに、かつて獅子王が試合中の事故で命を奪ってしまった選手の弟・マーク一条が現れ、血の気の多い招待客やZERO所属選手らとバトルを開始。おかげで改装された家は何故か爆発し、取り残された妻・麻美は大火傷を負い入院する事態に。

 病床の麻美の願いである一軒家の夢を捨て切れない獅子王は、選手にも給料も払わず、闇社会風の人に借金して新築工事を発注。見習い選手以外が離反する中、麻美の身体に異変が起こり、皮膚がただれ、謎の奇病に冒されていることが判明する。

 かねてから獅子王を密着取材していたTV局ディレクターの山路は、借金返済や麻美の治療費のために、アメリカの殺人プロレス団体のオファーを橋渡し。最初は拒否した獅子王だったが、麻美が自殺未遂に及んだことから渋々承諾。
 新築された獅子王邸を舞台に"殺人(一軒家)プロレス"の火蓋が切って落とされる一方で、衝撃の事実が明らかになるのだった!

 ......といった感じなんですが、新築された獅子王邸が「これ一軒家っていわねぇだろ!」な規模なので、タイトルの『一軒家プロレス』を拡大解釈する心の余裕が必要です。また、嫁の奇病(人魚病)の必然性の無さについても同様でしょう。ついでに、あらかた話が済んだ50分過ぎに新築獅子王邸でのバトルになるんですが、「ここからまだ50分残ってんのかよ!」とビックリしたことを付け加えておきます。

 とはいえ、橋本以外にも新築バトルシーン(60〜70年代のカンフー・武侠映画風セット・演出)に登場するザ・プレデター(WWEではシルベスター・ターカイ)などを含め、日本・海外のZERO-ONE所属・参戦選手(当時)によるバトルシーンはしっかり見応えがあり、その点では見事です。
 本職女子レスラー、エイプリル・ハンターと闘うソニンさんもバトルシーンだけでなく、橋本との濡れ場(正確には"噛み場")にも挑戦していたりと、なかなか身体を張っております。
 
 しかし、本作最大の魅力は、やはり"世界一凛々しいおデブ"橋本真也を愛でられることでしょう。演技になってない変なボディアクションや、声がまったく張れてなくて「『警視-K』の勝新太郎かよ!」みたいなシーンが多数(何故か英語台詞の方が滑舌が良い)ですが、まったくもってそこがイイ。勿論、デブなのにカッコイイ!な場面もあるにはあるよ!

 そんな橋本さんが急逝して今年でちょうど10年(2004年7月11日逝去)。10周忌の供養に、本作を観てみるのはいかがでしょうか。

(文/シングウヤスアキ)