『SWITCH』2015年5月号。特集は「ジャズタモリ」。タモリ本人や周辺のインタビューが充実。宮沢りえからの手紙も入っています。

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7月25日〜26日にかけて放送された今年の27時間テレビは、「めちゃ×2ピンチってるッ!本気になれなきゃテレビじゃないじゃ〜んがテーマ。『めちゃ×2イケてるッ!』のメンバーをメインに、”テレビの危機”を救うべく、様々な企画に挑戦するという内容だった。

その結果を数字で見ると、平均視聴率10.1%、瞬間最高視聴率19.1%。歴代でも低い水準となり、グランドフィナーレでは日テレ『イッテQ』(イモトのマッキンリー登頂)に負けた。

内容についていろいろ言いたいことはあるのだけど、ここでは日曜に起こった「奇跡」について触れたい。キーワードは「おっぱい」だ。

7/26 14:30『27時間テレビ』 劇団ひとりの訴え


26日の13時より始まった「TED×27hTV」は、芸人たちがテレビのありかたについて「本気」でプレゼンするコーナー。TEDカンファレンスを模したセットで、ロンブー淳や光浦靖子などがプレゼンを行った。真面目な内容も一部あったが、いい話をしていた出川哲朗を無理やり落とし穴に落とすなど、オチを求める演出も目立った。

そこに「テレビが失ってしまった大切なモノ」というテーマで登壇したのが劇団ひとりだった。袖から出てきた時点で既に泣きはらしたような目をしている。スイッチが入り、完全に仕上がっていた。

「芸人とは職業のことではありません。生き様のことなんです。そして僕は、生きる場所として、ここ、テレビを選んだ。なのに、ここにはなかった。子供の頃、食い入るように、必死にしがみついて観ていたテレビは、もうここにはなかった。どこに行ったんですかあのテレビは!」

毎日流れるあたりさわりのない番組。僕らが観たかったのはこんなテレビではない。僕らが観たかったのは……。

「僕が、僕達が観たいのは、子供のころ、夢中になって観ていたアレ……おっぱい……おっぱいが観たい!」

昔のテレビにはおっぱいがあった。ゴールデンタイムの水泳大会でポロリがあった。「あのころのテレビはあらゆるところにおっぱいがあった!」「やれ4Kだ。やれ8Kだ。肝心のおっぱいも映さないで、高画質が笑わせてくれるな!」と唇を震わせ、鼻水を垂らしながら、声を張り上げる劇団ひとり。

「先日、とある女優が、とある番組で、なぜ照明の仕事をしているのかわからない、そう発言して、物議を醸した。僕もあの放送を観ていた。照明さん、なんであの時言わなかった!あの子に言うべきだった!…………お前さんのおっぱいを照らすためだよ……」

客席の芸人から「単独ライブでやれ!」などのヤジが飛ぶなか、激情が止まらない劇団ひとり。「おっぱいは逃げない。逃げてるのはテレビだ!」と叫び続け、おっぱいの代わりに俺が謝る、と土下座をやりかけたところで強制終了。CM入りの瞬間に、ひとりの「あとちょっとあった…」と素の声が入っていた。

7/26 23:15『ヨルタモリ』 「サンタフェ」の未公開写真


その9時間後のフジテレビ。
『ヨルタモリ』のゲストに現れたのは篠山紀信。バーのママを勤めるのは宮沢りえ。宮沢りえと篠山紀信と言えば……『サンタフェ』である。1991年、人気絶頂の宮沢りえが突然発表したヌード写真集。155万部のベストセラーとなった。

隣に座る近藤さん(タモリ)と会話しつつ、「片付けていたら昔の写真が出てきたの」と篠山紀信がカバンから取り出したのは『サンタフェ』に使われたポラロイド。裸で立つ18歳の宮沢りえ。そこにはもちろん、おっぱいが映っている……!

あれから24年経ったいまになって、篠山紀信のカバンから未発表のヌード写真がどんどん出てくる。カメラは篠山紀信の手元を映すだけでなく、ちゃんと別に物撮りをしている。大画面テレビいっぱいの宮沢りえのおっぱい。

近藤さん「だいたい、篠山さんのヌードってエロくないですよね」
篠山紀信「そこがアタシの欠点だね。写真が上手いんだねきっと。下手な方がいやらしく見える。素人にはかなわないですよ」

水泳大会のポロリと、篠山紀信の写真とを比べてはいけないのかもしれない。でも、テレビからおっぱいが消えたことを嘆いたその夜に、なんの煽りもなくするっとおっぱいがテレビに映った。この奇跡に何も感じないわけにいかない。

「やる気のある者は去れ」


今年の『27時間テレビ』のテーマは「本気」だった。めちゃイケの通常回では、縁のある芸能人たちに「本気の出演」をオファーして回った。SMAP、さんま、EXILE、とんねるず。その中にタモリはいなかった。タモリは岡村の復帰の恩人でもあり、ナイナイに縁が深い存在。しかし、27時間テレビの本編でも出番はなかった。

ここで思い出すのが、タモリが常々語る「やる気のある者は去れ」という言葉だ。
27時間テレビの「本気」と、タモリの「省エネ」志向は、全く噛み合わないのだ。

『SWITCH』(2015年5月号)で、タモリは「やる気のある者は去れ」という言葉についてこう語っている。

それはお笑いの業界に限らずなんですが、やる気のある人って、大抵物事の中心部分しか見ないんです。でも面白いものって意外とその周辺にあるような気がしていて。やる気のあるやつは真ん中だけを見ていきり立っているから、いつまでたっても面白いことができない。そういう人よく来るんですよ。まず暑苦しい(笑)。スポーツ以外そんなに物事ってやるきにならないだろうと。(P.77)

今年の『27時間テレビ』は、これまでのテレビの作り方に固執し、真ん中だけを見ていきり立っていたのではないか。

人と時間とお金をかけ従来の方程式に則った『27時間テレビ』。
字幕も煽りも番宣も演出も排除した『ヨルタモリ』。

『27時間テレビ』が壮大なフリとなって『ヨルタモリ』でオチた週末。ピンチってるテレビを救うのは、実は『ヨルタモリ』のほうではないかと思うのだ。
(井上マサキ)