惜しくもW杯優勝を逃した、なでしこジャパン。大会後、その健闘を讃える声とともに多く聞かれたのが「普段の彼女たちはヒドい境遇に置かれている。かわいそうだ」という同情の声だ。

だが果たして、本当にそうなのか? 例えば、スタメンのプロ率。W杯でブレイクしたDF有吉以外は全員がプロであり、待遇改善は進んでいる。それは代表選手レベルだけでなく、リーグ全体でも同様だ。

今年からなでしこリーグは、1部で1クラブ当たり最低3名、2部で1クラブ当たり最低1名を「サッカーに専念できる選手」とするようガイドラインを設けた。つまり、プロ契約を結ぶなり、クラブで雇用して負担の軽い業務につけるなりして、ノンアマチュア的な選手を増やそうとしている。

確かに、なでしこリーグはサッカーだけで生活できない選手が多数派だ。しかし少なくとも以前のように、不安定な雇用状態に選手が頭を悩ませることは少なくなってきた。

そもそも、なでしこリーグの普段の試合にまで足を運ぶファンの数は限られている。入場料収入やグッズ販売だけで経営を回していけるクラブは皆無であり、そのギリギリの状況の中、なんとか経営を安定化しようと頑張っているのだ。

なでしこジャパンを「現代の女工哀史」扱いする新聞などの記者たちは、国際大会の時だけ“にわか”なでしこ番になる。そこで彼らが理想郷として挙げるアメリカにしても、内情は決して甘くない。

「確かに、国内プロリーグのNWSLは、なでしこリーグより多数の観客を動員しています。しかしそのアメリカでさえ過去に2度、中継TV局の撤退やスポンサー離れが原因で、プロリーグの崩壊を経験している。その反省からNWSLは選手の年俸を低く抑え、シーズン期間を春から夏までと短くし、さらに使用料の安い地元大学のスタジアムを試合会場にするなどして非常にこぢんまりと運営されています。

そんなリーグですから、代表クラス以外の選手はクラブの支払う年俸だけでは生活できず、シーズンオフは海外クラブへ期限付き移籍したりパートタイムの仕事に就いたりしている。つまり、日本と格段の差があるわけでもないのです」(サッカー誌デスクA氏)

しかも代表選手クラスでさえ、CM出演料収入などで億単位の収入があるアレックス・モーガンなどを除けば、日本円にして300万から600万円程度の収入しか得ていない。

「当然です。報酬とは市場での需要から決定されるもの。アメリカで女子サッカー人気が高いといっても、4大スポーツの観客数やテレビ視聴率にはまるで及ばないわけですから大金など手にできるはずがない」(A氏)

ドイツやフランスなど欧州強豪国のリーグにしても、シーズンこそ長いものの給料面ではさして変わらない。その上、リーグでは限られた2、3のクラブの実力が突出していて、大差のつく試合が多いという問題も抱えている。

「そもそも、女子のプロサッカーリーグがスポーツ興行として完全に成立している国は世界のどこにもないのです。それどころか今回の女子W杯で8強入りした国を見渡してみると、準々決勝で日本に惜敗したオーストラリア代表には、日頃はバリスタや薬剤師助手や配管工見習いや小学校教諭として働いているアマチュア選手が普通にいますし、開催国カナダに至っては全国リーグそのものが存在しません」(A氏)

これでも日本の女子サッカー選手のプレー環境は“劣悪”だと言えるだろうか? 男子のみならず、長く日本の女子サッカーも追いかけてきたベテランジャーナリストのC氏が言う。

「もちろん、すぐにでも改めるべき点はあります。スポーツ演出の専門家のアイデアを借り、なでしこリーグの会場で試合以外にも楽しめる部分をつくって観客を増やしていくべきだし、リーグ全体のレベルアップや国際舞台でのフィジカルやスピードに慣れるため各チームが外国人選手を積極的に受け入れられる態勢を整えることも必要です。

ただし、なでしこリーグは現時点でも決して強豪国のそれに劣らないどころか、かなり高い水準で運営されていることを忘れてはなりません。女子サッカーをよく知らない外野の声に踊らされて、身の丈以上の変化を考えたりせず、日本ならではの長所は残しつつ、できるところから手をつけていけばいいのではないでしょうか」

なでしこジャパン同様、なでしこリーグも日本独自のスタイルを磨き上げるべし!