会田誠さんTumblerより

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10月12日(月・祝)まで東京都現代美術館で開催中の「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」展において、現代美術家・会田誠さんと、その妻・岡田裕子さん、その息子・寅次郎さんからなるユニット「会田家」の作品が撤去要請を受けていることが、7月25日に明らかになった。

【なぜ妻と息子と制作したのか? 会田誠、東京都現代美術館の作品撤去要請を巡って作品の意図を説明の画像・動画をすべて見る】

同時に、会田さんは、会場で公開制作もしており、撤去要請に対して「不当である」として声明を発表し、そこで明らかにされている撤去要請の経緯について、物議を醸している。

撤去要請に至った経緯


当初、「美術館側は、改変は要求したが撤去は要請していない」、「クレームではなく、展示趣旨についての質問が寄せられた」との一部報道からにわかに注目を集めていたが、改めて会田さん自身が自分の言葉で騒動について触れた形となった。

撤去の対象となっているのは、「文部科学省に物申す」という大きな見出しと文部科学省への不平の文章が6メートルの布に書かれた作品「」。会田さんが個人で制作した「国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ」という映像作品の2つ。

会田さんのTumblerの投稿によると、今回の撤去要請は、観客からのクレームと、それを受けた東京都庁のしかるべき部署から求められたもの。美術館側が協議の末、展覧会のスタートから約1週間後に会田さん本人に言い渡したという。

しかし、会場で公開制作もして、来場者の温かい声援も受けていたという会田さんがその要請に疑問を持ち、詳細を尋ねたところ、「(東京都現代美術館の)友の会会員1名」からのクレームだったこと、そして都庁の部署名は「言えない」という回答だったことが綴られている。

会田誠の反論


会田さんは、波紋をひろげている作品「檄」の制作意図について説明。「芸術を使って政治的アピールはすべきでない」という、かねてからの持論を改めて強調した。


この作品は、見た目の印象に反して、いわゆる「政治的な作品」ではありません。現在の政権や特定の政党を、利する/害するような文言は一言も書いてありません。文部科学省という役所全体に対して、不平不満を述べているだけです。

「檄」について(会田誠さんTumblerより)



そして「現代の日本の家庭なら、ごく普通にありうべき不平不満だと思います。しかし完璧に国民的中庸な意見とは言いません。『当然偏りはある』という前提で読んでもらうべき、『一家庭における一サンプル』にすぎません。」と、 家族そろったユニットとして制作した意図を述べた。

また、「内容が子供展に相応しくない」という意見に対しては、日本の教育制度についての内実を隠蔽するのは子供のためにならないという考えの元、今回の「子供展」の枠組みに対して熟考した作品だと主張している。


ここに書かれているのは日本国の教育制度に関する話--いわば「大人の事情」ですが、そのようなものを子供たちの目から意図的に遠ざけ隠す行為は、基本的に良くないことだと僕は考えます。
(中略)
「大人たちの作った世の中の仕組みは、ただ従順に信じるのではなくて、つねに疑いの気持ちを胸に秘め、警戒して生きてゆく--そういう“背伸び”はした方がいいんだよ」という、これは僕から子供たちへ伝えたい大切なメッセージです。

会田誠さんTumblerより



表現の自由は誰のもの?


東京都現代美術館Webスクリーンショット

東京都現代美術館Webスクリーンショット



今回の騒動を受け、ネット上では、子供向けの展示に対して「配慮に欠ける」といった撤去に賛同の声も挙がっている一方で、「表現の自由」について言及する意見もまた多く挙がっている。

会田さんは2013年にも、森美術館で行われた展覧会「会田誠展 天才でごめんなさい」において、四肢を切断された少女を描く「犬」シリーズなどに対し、児童ポルノや女性蔑視、障害者差別を容認する作品を展示しているとして、撤去要請を含めた抗議を受けたこともある。

また、抗議をきっかけに実際に改変に至った例としては、2014年、東京都美術館で開催された「第7回 現代日本彫刻作家展」において、中垣克久さんの「時代の肖像――絶滅危惧種」という作品が、「政治的な宣伝になりかねない」として美術館側から作品の撤去を求められ、協議の末、作品の一部を削除して出展され大きな議論を呼んだことも記憶に新しい。




しばしば巻き起こる「芸術表現」と「モラル」の問題。作家・キュレーター・観客によって見解はわかれるが、今回は果たしてどのような決着を見せるのだろうか。