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連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。

【相談内容】
最近、クレジットカードを作ろうとしたのですが、審査に引っかかり作ることができませんでした。これまで、カード類を作ったこともなかったので不思議に思っています。思い当たることと言えば、水道や電気などの公共料金の支払いとスマホ(本体の)代金の支払いが滞っていることくらいです。

公共料金の支払いやスマホ代金の支払いが遅れて、ブラックリストに載るなんてことはあるのでしょうか?

【プロからの回答です】

公共料金の支払いが遅れること自体で、ブラックリストに載ることはありません。しかし、公共料金の支払いをクレジットカード払い等にしている場合、カード代金の滞納ということでブラックリストに載る可能性があります。また、スマホの端末を分割払いで購入し、その分割代金を滞納したことによりブラックリストに載る、という可能性は十分にあります。最近は、スマホ代金滞納によるブラックリスト入りのケースが急増しているようです。

○ブラックリストについて

誤解されている方も多いのですが、ブラックリストという名簿があるわけではありません。個人の経済的な信用を登録している「信用情報機関」に、「この人は返済が滞っているよ」というような事故情報が登録されることを、俗に「ブラックリストに載る」、と表現しているのです。「信用情報機関」とは、金融機関が、ローンを組ませたり、貸し付けを行ったりする際に、「この人物は信用できるのかな?」という与信審査を行うために設置された情報機関です。信用情報機関に登録される情報のうち、個人の経済的な信用力(返済能力)が低いと思わせるような情報を事故情報と呼びます。具体的には「延滞情報」や破産等の「債務整理を行った事実」等が該当します。

信用情報機関のシステムは、次のとおりです。クレジットカードを作ったり、ローンを組んだりという場合、まず、「信用情報機関」に顧客情報が登録されます。ある一定期間返済が滞ったり、破産等の事情が生じたりした場合、これらの事情は「事故情報(異動情報や延滞情報、ネガティブ情報ともいいます)」として登録がなされます。これを通称「ブラック情報」、「ブラックリスト」などと呼んでいます。

「カードを作りたい」、「借り入れをしたい」等の申請があった場合、金融機関はこの信用情報機関の情報を参照し、他社での利用状況や事故情報を確認するわけです。事故情報が記録されている、ということになれば、当然金融機関としては、「この人物は危ないな」と思い、貸付等を控えるわけです。

主に、金融機関は、「銀行」・「消費者金融」・「信販会社」に分類されます。この業態により加盟する信用情報機関は異なります。現在下記3機関があります。

・全国銀行個人信用情報センター…銀行系の信用情報機関
・株式会社 シー・アイ・シー(CIC)…信販会社の信用情報機関
・株式会社 日本信用情報機構…銀行・消費者金融系・信販会社系の信用情報機関

○ブラックリストが及ぼす影響

ブラックリストに載ってしまった場合、これが登録されている期間の目安は、「支払予定日より3カ月間支払いが遅れた場合は5年間」「自己破産した場合は7年〜10年間」「任意整理をした場合は5年間」などとなっています。ブラックリストに載っている期間中は、金融機関が「この人は信用が低いので貸付ができない、ローンを組むのは難しい」と判断する可能性が高いことになります。ですので、この期間中は、新たにカードを作ったり、新たな借入をしたり、自動車や住宅のローンを組んだりすることが難しくなります。また、携帯電話の分割払いによる購入ができない、等の影響も考えられます。

引っ越しの際、家賃等の保証人として保証会社が指定されている場合、保証会社が信用情報機関に問い合わせをし、保証会社に拒否されるということも考えられます。また、家賃の支払い方法として、クレジット会社による引き落としが指定される場合がありますが、その際も信用情報機関への問い合わせがなされ、審査が通らないという可能性があります。そのため、事実上、引っ越したい物件に引っ越せないというリスクもあり得るかもしれません。ただ、上記のようなケースでない限り、大家さんが信用情報機関に問い合わせたりはしないので、保証人等の要件を満たせば引っ越しに支障が出ることはないでしょう。実際に、任意整理中や破産中に引っ越しをする方はたくさんいらっしゃいます。

また、ブラックリストは一生ものではなく、「一定期間」を過ぎれば登録は削除されます。なので、その期間を過ぎれば、新規にクレジットカードを作ることも、ローンも組むことも可能となります。

「ブラックリスト」と聞くと、犯罪者になったかのようなイメージを持つ方もいるようですが、あくまで新規の借入等ができなくなるだけです。逆に、それ以外の影響はほぼありません。選挙権がなくなるなどと誤解をしている方もいらっしゃるようですが、ブラックリストでの影響はあくまでも「金融機関が参照する個人の経済的な信用」の側面です。したがって、ブラックリストに載ったからといって、就職に不利になる、勤務先に調査される、資格の制限が出る等の影響は基本的にないと考えていただいて大丈夫です。また、信用情報はあくまでその個人のものである以上、家族、親族等に不利な影響が出ることも原則としてありません。ただ、勤務先が、銀行や金融機関、カード会社ということになると、信用情報と密接にかかわっているため、事実上の影響が出る可能性は否定できないかもしれません。

○ブラックリストに登録されているかどうか確認の仕方

ブラックリストに登録されているかどうか確認するためには、各信用情報機関に対し、個人の信用情報を開示するよう請求することになります。これにより、自身のローンやクレジットなどの契約内容や支払状況等に関する情報を確認することができます。手続きは、電話、窓口での申し込み、郵送等の方法により行うことができますので、各機関のHPなどを参照してみてください。信用情報の開示請求によって、「氏名、生年月日、電話番号などの個人を特定する情報」、「クレジットやローンなどの個人の取引に関する情報(利用金額、残高など)」、「取引から発生する情報(支払遅延、法的手続きの有無など)」の内容を確認することができます。

一般には、約定返済日より一定期間返済が遅れたり、3回以上滞ったりすると、「延滞」の事故情報となります。また、民事再生、自己破産、任意整理などの借金整理の手続をした場合は「債務整理」として事故情報の扱いとなります。また、契約者が返済不能となり連帯保証人等から代わりに弁済することになった場合などの「代位弁済」も事故情報として扱われます。これらの情報が登録されている場合、ブラックリスト入りしていると考えた方がよさそうです。

また、「事故情報」として登録がなくとも審査が通らない場合がありますので気をつけてください。新たな貸付の申込をすると、貸金業者等が与信審査のために、個人信用情報を閲覧することになりますね。その際の閲覧情報も信用情報として記録されています。これを「申込情報」と言います。この情報は6カ月間登録されることになります。

例えば、1カ月に3つ以上の会社に申し込みをしたなど、短期間に複数のクレジットカードの申請があった場合には、いわゆる「借り回し」と判断され、審査が通らない可能性があります。要は、「お金に困っていて首が回らないのではないか」という判断につながる可能性がある、ということです。通称「申込みブラック」などといわれますが、「事故情報」ではなくとも、事故情報が載ったと同様の効果となりえるので、このような呼び名となっています。

実際にはそのような事実がないのに、信用情報に間違った事故情報が載っている、ブラックリスト入りしてしまっている、といった場合には、その信用情報の記録を削除・訂正するよう申し立てることができます。

○今回のケースでは?

今回のケースは、「カードを作ったことがない」とのことですから、公共料金の滞納によりブラックリスト入りをしたとは考え難いです。ですので、やはり、「スマホの分割代金の滞納」がブラックリスト入りの原因となったと考えるのが自然でしょう。もし、気になった場合は、信用情報の開示請求をするべきですが、滞納分を一括で返済したとしても事故情報が消えるわけではないので注意が必要です。

また、最近多く聞かれるのが「奨学金の滞納」によるブラックリスト入りのケースです。これまでは、奨学金の滞納でブラックリストに載ったという話をあまり聞いたことがなかったかもしれません。実は2010年4月から、奨学金の滞納についても、「返済を3カ月以上滞納した場合には信用情報機関に登録する」という運用が開始されています。奨学金というと、勉学のためのお金、というイメージで、ブラックリストとは程遠いイメージかもしれませんが、返済を滞納してしまうと、いわゆる「サラ金の滞納」と同じような扱いでブラックリスト入りをしてしまいます。

また、最近は、「軽い気持ちでお金をつぎ込んだことによりブラックリスト入りする」ケースが増えています。例えば、スマホゲームの課金や、芸能人のCDの大量購入、フィギュアなどの趣味での消費、夜の店への入りびたり、等の原因です。軽い気持ちで出費や借金を重ねているのかもしれませんが、予想以上に借金が膨らんでしまい返済が困難になった、というケースも多いので注意が必要です。

○ブラックリスト入りしないために気を付けること

最近は、ブラックリストに載る原因として、「え? そんなことが原因で?」と思わず言ってしまいたくなるようなケースが増えています。

例えば、携帯電話やスマホの購入代金滞納の事例では、月々の分割払いは、安ければ月額1,000円程度という金額のこともありますよね。ですので、うっかり滞納を続けてしまっても、本人はさほど大きいこととは思っていない、ということなのでしょう。しかし、金額の大小は関係ありません。極めて少額であっても、滞納すればブラックリストに載ってしまうというのが、信用情報のカラクリなので、気をつけねばなりません。いったんブラックリストに載ってしまうと、ローンが組めない、カードが作れないといういわば経済的信用にレッテルを貼られるわけです。このレッテルが少なくとも5年間は貼られ続けるかもしれない、必要な時にローンが組めないかもしれない、この影響は決して小さいものではありませんね。

「今月は予想外の出費が多かったから」「月々数千円であれば余裕」などと言って、安易に少額の借入れや、ローンに手を出してしまうと、その後は通常借金が膨らむだけです。その時点で一括払いが無理である以上、大幅な給与増額等の事情がない限り、その後の返済は困難に陥るということを肝に銘じていただく必要があります。借り入れやローンには「利息」が乗っかってくるのでむしろ当然です。

また、一般的には、一度借入れをしてしまうと、「借入れできる限度額が自分の預金のように思えてきてしまう」傾向にあり、「ショッピングローンなども借金という意識が薄れてしまう」というのが顕著です。これにより新たな借り入れやローンにさらに手を出すというサイクルに陥ってしまいます。月々の返済額がその余剰を超えてしまえば返済できなくなり返済のためにまた借りる、返済額が増えたのでますます返済できなくなる、という悪循環に陥ってしまうのです。

○まとめ(メッセージ)

「今月だけ借入をしよう」「一括払いで購入できないけどローンで購入しよう」と思った瞬間は危険信号です。その一歩が、「借りたものを返済できないサイクル」への一歩です。借金、ローンのはじめの一歩を踏み出してしまう前に、ご自身の収入と支出を紙に書き出すなどして改めて認識し、家計を見直すことをお勧めします。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

篠田 恵里香(しのだ えりか)

東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。 ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」

(アディーレ法律事務所編)