白鵬が旭天鵬の花道を優勝パレードで飾った日、アレが若の里の花道を何で飾るのかと思ったら、特に何も飾らずの巻。
大先輩が今場所かぎりで引退パワー、出ず!

大盛況の中、大相撲名古屋場所が終わりました。その盛り上がりとは裏腹に心の中に吹く風は物寂しいものでした。優勝制度が定められて以降では最年長となる37歳8ヶ月での優勝も記録した、旭天鵬が引退することがほぼ確実となったからです。現在のモンゴル時代を築いた1期生の最後の生き残りであり、日本に帰化して優勝をはたした最後の日本人優勝力士でもある。まさに日本とモンゴル、双方にとってのレジェンドです。

若い頃には稽古の厳しさ、先行きへの不安でモンゴルまで逃亡帰国をしたこともありました。当時の師匠であった大島親方はモンゴルまで飛んで「才能があるから辞めるな」と説得したといいます。あの日逃げ帰った青年が、いつしか幕内出場回数史上1位を記録するまでの名力士となるとは。運命とは本当にわからないものです。いつも柔和で、笑顔がいっぱいで、受け答えなども機微に飛んだ愛すべきキャラクター。おそらくこれが最後と思われた土俵で鳴り響いた万雷の拍手こそ、旭天鵬がいかにファンの心をつかんでいたかの証左でしょう。

現在の師匠にはまだ正式な報告をしていないとのことですが、かねがね本人も十両では取らないことを明言しています。白鵬は優勝力士インタビューで「大先輩が今場所かぎりで引退ということで、その最後の花道に優勝パレードに一緒に乗せることができた」とフライング気味に語りました。すでに心は決まっており、ごく近しい人にはそれを打ち明けていたのでしょう。土俵を降りたあとの涙と、支度部屋での笑顔のコントラスト。それだけで十分な報告です。

祖国に帰ろうと思って、やっぱり相撲をつづけたことで名力士となった。師匠の定年退職に伴い引退して部屋を継ごうとも考えたが、やっぱり現役をつづけたことで優勝をはたした。迷って迷って出した決断で、いつもよき道をつかんできた旭天鵬です。今後は元々の師匠であり養父でもある元・旭國さんから大島株を継承し、大島部屋を再興することになると思われますが、次の決断もきっとよい方に転ぶはず。師匠として、自分を越える力士を土俵に送り出してほしいものです。長い間、お疲れ様でした。

ということで、旭天鵬にまつわる美しい物語を踏まえつつ、「このパワー出んかったか?」という説教をアレにしていきましょう。

◆白鵬は引退の花道を優勝パレードで飾ってやったというのにアレは!

旭天鵬の引退が大きく採り上げられる中、もうひとりのベテラン若の里も決断の時を迎えています。1976年生まれの39歳。旭天鵬と同じ平成4年の三月場所で初土俵を踏んだ同期生。今場所は西十両11枚目という地位での土俵となりましたが、4勝11敗の低調な成績。来場所は幕下に落ちることが確実となりました。もちろん相撲をつづけるという選択肢もゼロではありませんが、関取の座を失ってつづけるとは考えにくく、おそらくは引退ということとなるでしょう。

さて、ここに座れ、アレ。

見ろ、「鵬」の字を持つふたりの美しい物語を。兄の鵬が優勝をはたした際には横綱でありながら弟の鵬が優勝パレードに同乗し、優勝旗を持つ仕事をしていただろう。そして、兄の鵬が引退を決断した場所では、何としてももう一度パレードをという想いで、弟の鵬が見事な優勝でその機会を作った。「大先輩が今場所かぎりで引退パワー」を見事に発揮したじゃないか。

それにひきかえ、「の里」の字を持つ兄弟弟子である若の里とアレはどうなんだと。「大先輩が今場所かぎりで引退パワー」の形跡すら見えないではないか。五月場所で安美錦が見せた「付け人が今場所かぎりで引退パワー」とか、今場所の白鵬が見せた「大先輩が今場所かぎりで引退パワー」とか、そういうのがチョロっとでも見える感じは出せないものか。

二日目に早々に黒星を喫して優勝戦線から後退すると、ちょっと可能性が見えてきたかなという七日目には碧山に案の定のチカラ負け。鶴竜と白鵬が相次いで栃煌山に敗れたタイミングでは、自分も照ノ富士に完敗してキッチリと足並みを揃えて後ずさり。鶴竜との一番は見事な勝利で一瞬だけ「オッ」とさせるも、終わってみれば10勝5敗と何だでもない成績。叩くほどでもなく、褒めるほどでもない大関及第点のド真ん中。「無風」そのものです。

全然パワーが出ていないならそれはそれで問題ですし、これで相当なパワーが出ている状態ならクンロクどころかハチナナまでチカラは落ちているんじゃないのか。「若の里関が今場所で引退というのが濃厚になりましたが…」「優勝した場合、旗手を頼む相手は…」「大先輩の花道を…」という話を記者がアレに聞きに行くことすらない静けさ。存在そのものがスーッと流れていくこの感じ。一体、今以上の爆発的チカラを出させるにはどうやったらいいのか、ますますわからなくなりました。

↓白鵬は旭天鵬の引退を優勝パレードで送り出したというのに…。


鵬グループ:「我々の大先輩が今場所かぎりで引退ということで」
鵬グループ:「その最後の花道で優勝パレードに一緒に乗せることができたんでね」
鵬グループ:「いいなと思います」
の里グループ:「へぇー、すごいなー白鵬」
の里グループ:「…………」
の里グループ:「すごいなー…白鵬…」

↓旭天鵬が引退の花道をオープンカーで駆け抜けたというのに…。

鵬グループ:「今日は大先輩のためのパレードですよ」
鵬グループ:「いい眺めだねぇ」
鵬グループ:「ほら、みんな先輩に手を振ってますよ」
の里グループ:「アレ、どんな風景なんだろうな」
の里グループ:「…………」
の里グループ:「今度、白鵬に頼んでみるか」
の里グループ:「1回でいいんで乗せてくださいって」
の里グループ:「お前も乗せてもらったらどうだ」
の里グループ:「たぶん、お前、自分じゃ乗れないから…」

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鶴竜を破った取組などは、優勝あるいは横綱に十分届くチカラを感じさせるものでした。同時に、照ノ富士に敗れた取組は「得意の型での真っ向勝負を誘われた」「その上で負けた」「そうか、もう抜かれてるんだ」と感じさせるものでした。たぶん鶴竜との取組がまぐれなのでしょう。場所前には白鵬と互角の勝負をしたとかいう記事も出ていましたが、それも誤報でしょう。そもそも稽古で調子がいいとか悪いとかはあまり関係なくて、期待感以外は栃煌山とドッコイくらいの力士なのでしょう。「たまに勝っちゃうこともある」程度の。

今後は、僕も今までの姿勢を改めて、別の角度からの活躍を応援していきたいと思います。アレに横綱だの優勝だのを期待していはいけない。アレが目指すべきは旭天鵬のように、愛すべきキャラクターで、長く長く土俵に留まりつづける力士です。40歳を超えてもクンロクとかハチナナとかをつづけていく頑張り屋さん、その方向性でいきましょう。

「高齢なのに頑張っている」というキャラの存在は、昨今のスポーツ界では重要な要素です。野球には山本昌がおり、サッカーにはキングカズがいる。頑張っていること自体が尊い価値として受け入れられ、中高年のハートをガッチリとキャッチしています。それには煮え切らない心情、強すぎず弱すぎない程度の力量、とにかく丈夫な身体、心技体すべてでハイレベルなものが要求されますが、アレはそのすべてを兼ね備えている。条件を満たしています。

下手にオオゼキという地位を意識すれば、少しは優勝争いに絡むべきかという余計な力みも生まれます。もっとリラックスして「10勝」を大目標として、それ以上を見上げないようにしてほしいもの。10勝が大目標であるならば、五日目までを4勝1敗、十日目までは7勝3敗(※3勝2敗ペース)、千秋楽まで10勝5敗(※3勝2敗ペース)で足りるのです。何だか、これなら余裕でできそうじゃないですか。

そのとき、人々は思うのです。「関脇だと考えれば強いな…」と。僕はアレをこれからこう呼ぼうと思います。「大関脇(ダイセキワケ)」あるいは「大関(ダイセキ)」と。オオゼキではなくダイセキ。その意味で、当面の目標は大関在位34場所で優勝ナシという記録を持つ、偉大な先輩大関・豊山です。すでにアレは大関在位22場所優勝ナシと、豊山越えを視界にとらえています。あと丸2年くらいなら全然イケるのではないでしょうか。

ご覧なさい、鶴竜を。下手に横綱になどなったものだから、「横綱での優勝がない」という難癖をつけられているではないですか。ちょっと出産立ち会いのために休場したら、進退の二文字がチラ見えしてくるじゃないですか。アレなんか優勝そのものがないのに、進退を問われる気配などまったくありません。このペース、この空気。これを維持していけばあと10年は戦える。

関脇としては圧倒的な力量を持ったうえで、1回負け越しても落ちないセーフティーネットを築いている現在の地位。ここからアレを突き落すのはいかなモンゴル勢と言えど、容易ではないでしょう。落とせるものなら落としてみろ。ダイセキの地位、そうやすやすと手放しはせんぞ。これからもアレの活躍にどうぞご期待ください。アレはこれからも10勝程度を目指して戦いつづけます!

―第一部「俺は大横綱になる!」完―

―次週からは第二部「勝ち越す」が始まります―

―第三部「2場所に1回勝ち越す」2017年頃開始予定―

―第四部「10勝を死守せよ!」2019年頃開始予定―

―第五部「むしろ平幕優勝こそ勝機アリ」2020年頃開始予定―

―第六部「奇策!幕尻からの優勝決定戦狙い」2022年頃開始予定―

―第七部「せめて十両優勝を」2025年頃開始予定―

↓早いモノでアレも29歳になり、「ベテラン」の領域に差し掛かりました!

亡くなった鳴戸親方(元横綱・隆の里)が初優勝したのが29歳11ヶ月!

それでも史上4位の高齢優勝記録か…。

ないな、もうない!ないない!

下手に優勝を狙って怪我をするより、長くつづけるためのソコソコを目指そう!

優勝のチャンスは幕尻まで下がったくらいで来るかもしれないから!

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そして、最終章第八部「十両の優勝決定戦で旭天鵬の弟子に負けた」へ!