母親の血液から胎児の病気を診断する NIPTshutterstock.com

写真拡大

 非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)で異常な結果が出た場合、必ずしも胎児に問題があるとは限らず、一部のケースでは母体のがんが見つかる場合もあることが、新たな研究で報告された。米タフツ大学医療センター(ボストン)のダイアナ・ビアンキ氏は、確率は低いが、その可能性を考慮することは重要だと指摘している。

「Journal of the American Medical Association(JAMA)」オンライン版に7月13日掲載された今回の研究は、NIPTを製造するイルミナ社により資金提供されたものだ。

 NIPTは米国では4年ほど前から広く使用されるようになったスクリーニング検査で、日本では新型出生前診断とも呼ばれる。母親の血液を分析し、胎盤および母体のDNA断片から特定の染色体に関連する胎児異常の有無を調べることにより、ダウン症候群などの先天異常の可能性を示すもの。

 2013年4月より、日本国内でも日本医学会の認定・登録委員会により認定された施設で臨床研究のみとして実施されている。実施施設はNIPTコンソーシアムに詳しい。http://www.nipt.jp/rinsyo_03.html

陽性とされた数が多いほど、妊婦のがんの確率も高い

 米国産科婦人科学会(ACOG)によると、NIPTは妊娠10週から実施でき、高齢の女性や先天異常の家族歴のある女性など、主にハイリスク妊娠の母親に提案される。女性にがんがある場合、腫瘍から分離したDNAが血液中に入り、NIPTの血液検体からがんのDNAが見つかる可能性もあるとビアンキ氏は説明している。

 今回の研究では、2012〜2014年にNIPTを受けた女性の12万5,000件を超える検体を調べた。このうち3,700件強で、先天異常に関連する5つの染色体に1つ以上の異常が認められ、うち10人の母親が後にがんと診断されたことがわかった。この10人の女性はNIPTで異常があったが、追加の侵襲的検査では胎児に異常は認められていなかった。

 検査で陽性とされた異常の数が多いほど、妊婦ががんである確率も高かった。通常は検査で見つかる異常は1つだけであることが多いが、がんのあった10人のうち7人に複数の異常がみられたという。

 研究の付随論説を執筆した米国立小児保健発達研究所(NICHD)のロバート・ロメロ氏は、NIPTの結果の異常ががんによるものである確率は低いと述べ、血液検査の結果に異常がみられた女性は、羊水穿刺などの診断検査を受けるべきだと結論づけている。 さらに「NIPTは妊娠中のがんを調べるスクリーニング検査ではない」と同氏は強調する。一方、ビアンキ氏は、NIPTを受ける女性にはこのような結果の可能性を知らせておく必要があると指摘している。
 現在日本で実施されているNIPTには2種類ある。2013年の春に導入されたものは、対象者が分娩時35歳以上という制限があり、費用は21万円と少々高い。検査制度は80〜90%とされている。一方、13年秋から導入された手法は、実施説が少ないものの、費用が2万5千円と安く、対象年齢の制限は無い。その代わり検査制度は若干低くなる。

 NIPTの導入に関しては、安易な選択的な人工中絶が横行するとの指摘もあるが、
今回の研究を行った出生前診断の国際的な権威でもあるビアンキ氏は、東京で、2月13日に開催された国際シンポジウム『出生前診断とその国際動向2〜脅威(Threat)からチャンス(Chance)へ』(主催:社団法人未来の胎児と医療を考える会)に出席。講演で胎児への早期の介入で、ダウン症候群の治療の可能性を示し、出生前診断と治療の両輪が機能することが理想的だとの立場を明確にしている。
(文=編集部)