8月2日に開幕する東アジアカップは、何かの出場権を争う大会ではない。優勝できなくても、次回大会に予選から参加することもない。目に見える形で失うもののない大会だ。

 韓国、北朝鮮、中国とは、ロシアW杯の最終予選で対戦するかもしれない。ここで彼らを叩けば、精神的に優位に立てる……という論理は否定しないが、日本も韓国も海外組は招集外だ。日本が韓国を下したとしても、あるいはその逆の結果になっても、「これで次回の対戦は気持ちで優位に立てる」とは考えないだろう。

 国際Aマッチデイとは無関係の大会だから、必然的にスケジュールはタイトになる。J1リーグは7月29日(水)まで行われ、チームは翌30日夕方に開催都市の中国・武漢で集合する。
 
 すべてのフライトが定刻通りなら、到着した夜の練習も可能だ。もっとも、J2のセレッソに所属する山口蛍を除く22人は、前夜にリーグ戦がある。おそらく、全員が出場している。現地入り直後にいきなり戦術的な練習をするのは、現実的でない。

 そもそも初戦は8月2日(日)だ。実質的に2日の練習で、北朝鮮と対峙する。

 十分な準備期間を確保できないなかで、何よりも結果を追求するのは無理がある。実績や経験を持った選手でスタメンを固め、セットプレーから先制点を奪い、その後はひたすら守りを固めて勝利をつかんでも、未来にはつながらないだろう。

 それならば、招集した選手を漏れなく起用し、個々の適性を見極めるほうが明らかに実り多い。つまり、今大会は結果よりも内容、もっと言えば誰が今後の日本代表で戦力になるのかを見定める機会としていい。もちろん、招集した選手をすべて起用したうえでの連覇であれば、批判を寄せつけるスキはないが。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「点と取れる選手を探したい」といった話をしている。6月のシンガポール戦がスコアレスドローに終わったことで、得点力のある新戦力を探したいのだろうが、東アジアカップで爆発する選手が出現しても、すなわち代表の得点源とは見なせない。

 2年前の東アジアカップを思い出したい。大会得点王を獲得した柿谷の輝きは眩しく、大迫、斎藤、豊田らも見どころのあるプレーを披露した。

 海外組と合流した彼らのプレーは?

 日本代表における柿谷のベストマッチは、いまでも2013年の東アジアカップだろう。海外組とともにプレーする彼は──いまでは柿谷も海外組のひとりだが──ストライカーとしてのエゴだけでなく、クラブレベルのパフォーマンスさえ出し切っていない気がする。

 東アジアカップで日本が成果を残せば、そこには攻撃陣の活躍がある。得点のほとんどをDFがあげるとは考えにくいから、結果を残したチームには得点やアシストを決めたアタッカーがいるはずだ。

 日本代表に必要なのは、FWだけなのか?

 僕にはそうは思えない。

 先のシンガポール戦の引き分けは、ザック指揮下からスタメンが変わらない弊害が噴出したからだったと思う。日本代表で長くスタメンに名を連ね、それゆえに結果責任を背負っていた遠藤保仁がいなくなったことで、キャプテンの長谷部誠や本田圭佑は追い込まれた際の拠りどころを失っていた。

 代表チームで責任のある立場になかった当時の彼らは、楢崎正剛、中村俊輔、中澤佑二、田中マルクス闘莉王らに支えられて自立していった。同じように、長谷部がキャプテンを譲る時期に来ているのではないかと思う。他ならぬ彼自身、新キャプテンの誕生を望んでいるはずだ。

 今回の東アジアカップには、シンガポール戦に先発した4人の国内組──槙野、太田、柴崎、宇佐美が選出されている。ポジションごとの序列と年齢を考えれば、この4人のなかでは槙野が後任にふさわしい。とはいえ、新キャプテンを国内組に限定する必要はない。
 
 いずれにせよ、9月以降の活動に向けた日本代表には、分かりやすい変化が必要だと思う。アジア予選突破を最終目標とするなら、現状維持のままでいい。シンガポール相手にホームで引き分けた痛みも、既存の戦力のレベルアップでふさぐことができる。
 
 目標はアジア予選突破ではない。18年のロシアでの上位進出である。だとすれば、次のW杯を見据えた変化のきっかけを、今回の東アジアカップで探すべきだと思うのだ。