8月2〜9日、中国・武漢で行なわれる東アジアカップに出場する日本代表メンバーが発表された。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が、「まずは(新しい)選手を発見したい」と語っているように、海外組は招集されず、国内組だけで臨む今大会を通じて、新戦力の発掘とチームの底上げが図られることになる。

 発表されたメンバーの顔ぶれを見てみると、日本代表に初選出された新顔が4名含まれてはいるが、年齢的にはそれほど「若手主体」というわけではない。

 全23名を4年に一度の五輪を基準に世代分けすると、北京世代(1985〜1988年生まれ)が13名、ロンドン世代(1989〜1992年生まれ)が8名、リオ世代(1993年以降生まれ)が2名。6月の招集時には全26名中14名がロンドン世代だったことを考えれば、新戦力発掘対象の"ボリュームゾーン"は、むしろ北京世代に移っている。

 これまで代表に定着することはなくとも、Jリーグで経験を重ね、力をつけてきた選手がこのチャンスをどう生かすのか。今大会を見るうえでの、ひとつの注目点である。

 そんな中で期待したいのは、MF柏木陽介(浦和レッズ)だ。

 1987年生まれの柏木は、同年代では屈指のプレイメイカーとして年代別代表で活躍。意外性のある多彩なパスを繰り出す一方で、天才肌の選手にありがちなサボり癖がなく、運動量が豊富なことから、「走るファンタジスタ」と評された。

 2007年にカナダで開かれたU−20W杯には背番号10を背負って出場し、チームのベスト16進出に大きく貢献。また、同年の北京五輪最終予選でも活躍するなどステップアップし、アルベルト・ザッケローニ監督時代には日本代表(A代表)に定着するかに思われた。実際、日本が優勝した2011年アジアカップに出場し、ブラジルW杯予選の初戦(アジア3次予選、1−0北朝鮮)では先発出場している。

 ところが、その後は一時、自身が調子を落としたこともあり、代表が次第に縁遠いものになっていく。思うようなプレイができず、表情も曇りがちなことが多くなり、ここ数年は国際舞台から遠ざかることになった。

 そんな柏木も、このところのJ1ではハツラツとしたプレイぶりを見せ、現在年間順位でJ1首位を走る浦和を引っ張っている。昨年後半あたりは、「これで(代表に)呼ばれないなら仕方がない」と話すほど、自らのパフォーマンスに手応えを感じていた。

 昨年までは2列目で起用されることが多かったポジションが、今年は一列下がり、ボランチに移ったことも、さらにプラスに働いた。当初は戸惑いもあったようだが、少し下がった位置からの攻撃の組み立ては、柏木が得意とするところであり、最近では「後ろでパスをつなぎながらも、ゴール前に出ていくタイミングがつかめるようになってきた」と話し、フィニッシュに絡むプレイも増やしている。

 ハリルホジッチ監督も、「後ろから攻撃を組み立てられれば面白い。クオリティを見せてほしい」と、柏木について語っているように、日本代表でも2列目ではなく、ボランチとしてのゲームメイクが期待されているのは間違いない。

 日本代表は、まさかのスコアレスドローに終わった先のシンガポール戦(ロシアW杯アジア2次予選)でも、攻撃が中央に偏り、縦に急ぐあまり突破口を開けなかった。以前なら遠藤保仁(ガンバ大阪)が巧みにパスを散らし、緩急をつけていたが、このベテラン・プレイメイカーを失った日本代表は、どうしても攻撃が単調になりがちだ。やはり試合の流れを読み、攻撃のリズムに変化をつけられる存在がピッチ上に必要となる。

「ポスト遠藤」としては、若い柴崎岳(鹿島アントラーズ)らが注目を集めるが、短いパスを出し入れしながら、攻撃の二手先、三手先を考えることのできる柏木は、その役割にうってつけ。これまでは、代表定着のチャンスを生かせずにきたが、組み立てのセンスという点で「ポスト遠藤」の資格は十分にある。

 そのうえ、ハリルホジッチ監督が「運動量が豊富で左利き。我々の中には左利きが少ない」と語り、その希少価値を認めているように、柏木は遠藤にはない魅力も兼ね備えている。

 左利きから放たれるキックの精度は非常に高く、浦和でも彼が蹴るCKから数多くの得点が生まれている。現在の日本代表にはプレースキッカーが不足しており、CKやFKの場面でも重宝するはずだ。

 指揮官が求める球際の激しさという部分では物足りなさが残るが、運動量は豊富で労を惜しまず走れる選手だけに、現地・中国の「気温40度、湿度60〜70%。グラウンドはかなりひどい」(ハリルホジッチ監督)と予想される厳しい条件は腕の見せどころ。むしろ、大きなアピールチャンスとなるだろう。

 今年12月で28歳になる柏木は、3年後のW杯のときにはすでに30代に入っている。本来であれば、もっと早くに「ポスト遠藤」と目される存在であるべき選手であり、その点で言えば、柏木の起用は世代交代の流れには逆行する。

 とはいえ、最近の柏木を見ていると、サッカーのツボを心得た円熟味を感じる。ポジションがボランチに定まったことも、またひとつ開眼した要因となっているのだろう。

 遠藤にしても、長く日本代表でプレイしていたと言っても、主力として定着したのはイビチャ・オシム監督時代から。つまり、彼が27、28歳になってからのことである。それを考えれば、柏木が今から遠藤の後を追ったとしても何ら不思議はない。

 東アジアカップで柏木に求められることは、はっきりしている。ハリルホジッチ監督の言葉を借りれば、「自分の価値を見せ、私の信頼を勝ち取らなければならない」のだ。

 予備登録メンバー50名の中に自分の名前があることを聞いたときから、「(代表候補として)見てもらえていることがうれしい」と話していた柏木。日本代表に対する思いは人一倍強く、このチャンスを逃すまいという気持ちは並々ならぬものがあるはずだ。

 雌伏のときを過ごしたレフティは、およそ3年半ぶりに訪れたチャンスに腕を撫している。

浅田真樹●文 text by Asada Masaki