谷口のパワーはフィジカル勝負が鍵を握る今大会で、ハリルホジッチ監督に重宝されるかもしれない。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 7月23日、8月2〜9日に中国の武漢で開催される東アジアカップのメンバー23人が発表された。国内組で編成されたチームの平均代表キャップ数は「5.3」(最多キャップは森重の22)と“フレッシュ”な顔ぶれで、大会連覇に挑む。ちなみに、A代表初選出は米倉(G大阪)、遠藤(湘南)、武藤(浦和)、倉田(G大阪)の4人だった。
 
【日本代表】東アジアカップ2015に向けたメンバー23人

<選出メンバー>★=A代表初選出
GK(3名)
東口順昭(G大阪)、西川周作(浦和)、権田修一(FC東京)
DF(8名)
水本裕貴(広島)、丹羽大輝(G大阪)、槙野智章(浦和)、森重真人(FC東京)、太田宏介(FC東京)、米倉恒貴(G大阪)★、藤春廣輝(G大阪)、遠藤 航(湘南)★
MF(6名)
柏木陽介(浦和)、武藤雄樹(浦和)★、山口 蛍(C大阪)、米本拓司(FC東京)、谷口彰悟(川崎)、柴崎 岳(鹿島)
FW(6名)
興梠慎三(浦和)、倉田 秋(G大阪)★、永井謙佑(名古屋)、川又堅碁(名古屋)、宇佐美貴史(G大阪)、浅野拓磨(広島)
 
 以下、選出選手の評価など会見要旨をポイントごとにまとめ、さらにスタメンを予想してみた。
 
<会見要旨?/メンバー発表>
●メンバー発表の前に
「予備登録メンバーを発表した後、その50人のうち11人も怪我をしました。20パーセント以上の割合になります。これは警告と受け取ったほうがいいと思います。なぜこれだけ怪我人が出たか、そこを考える必要があります。
 
 29日にリーグ戦が終わって、30日の朝に出発します。東アジアカップでは難しい状況をいろいろと想定しています。例えば、4つのチームがひとつのグラウンドでトレーニングすることになりそうです。そして気温は40度、湿度は60〜70パーセントあると言われています。このように難しいことがたくさんありますが、中国でも勝つトライをします」
 
●GK‐東口、西川、権田について
「この3人は私の信頼を勝ち取らなければいけない。しっかりと良い経験をして、リーダーとしてチームになにかをもたらしてほしいと思っています。かなり期待しています」
 
●DF‐太田、米倉、遠藤について
「米倉と遠藤は新しい選手ですね。遠藤は五輪代表候補としてもプレーしています。太田は怪我をしていましたが、常にコンタクトを取っています。大会前最後のリーグ戦に問題なく出場できれば連れていきます。もし問題があれば、代わりにバックアップメンバーを入れます。おそらく車屋(川崎)になると思います。だから、彼にも準備してもらいたいです」
 
●MF?‐柏木、武藤、山口について
「柏木は運動量が豊富。しかも数少ない左利きで、後ろからしっかり組み立てられれば面白い選手だと思います。そのクオリティを見せる良い機会にしてほしいです。柏木と同じ武藤も新しい選手です。中盤に入れていますが、FWとしても使えると考えています。
 
(同じポジションでは)広島の柴粼もリストに入れていましたが、残念ながら怪我をしてしまいました。追跡していて本当に良い選手だと思っていましたが……。現状では、武藤が中盤の攻撃的な部分でプレーしてもらいたいと。山口はかなりのポテンシャルがある選手。伸びてほしいですね」
 
●MF?‐米本、谷口、柴崎について
「米本も新しい選手です。彼の運動量、戦えるところを出してもらいたい。この大会では対戦国もかなり敵意を見せてくる、しかも(今年3月や6月の試合に比べて)より強いコンタクトが求められるので、米本にはディフェンスとオフェンスの両面で激しく戦ってほしいです。
 
 谷口は川崎で3バックの一角をやっていますが、そんな彼を私は中盤で使いたい。身長が大きいので、フィジカル的なところに期待しています。日本代表に少し足りないのはデュエル(競り合い)でのパワーですね。そこを埋めてくれるクオリティが彼にはあります。
 
 柴崎は少し問題を抱えています。ただ、『中国に行きたい、みんなとプレーしたい』と言ってくれましたので選びました。怪我が再発すれば、柴崎の代わりにバックアップメンバーを入れます」
●FW?‐興梠、倉田、永井について
「興梠は非常に面白い選手。ひとりでもプレーできるし、サポートにも回れる。それにサイドも真ん中もできますよね。彼とはしっかりディスカッションしたい。なぜ頻繁に怪我をするんだという話もしたいですね。A代表の最大の欠点は得点を取れないこと。だから、点取り屋を見つけないといけません。
 
 倉田はいろんなシステムでプレーできます。左サイドに起用されることが多いですが、もしかしたらFWの後ろ、中盤でもプレーできるかもしれません。オフェンス面でかなりの運動量があるので、面白い選手だと思っています。永井は名古屋で違うポジションでプレーした試合もありますが、前で使いたいと思っています。我々の下でかなり上達していますから、続けていってほしいです。
 
●FW?‐川又、宇佐美、浅野について
「川又はデュエル(競り合い)のなかでフィジカル的な部分を発揮してくれると思います。もし彼が(6月の)シンガポール戦にいたら良い現象が起きていたかもしれませんね。リーグ戦では前節、前々節もゴールに絡んでいますし、しっかりと伸びてもらいたい」
 
 宇佐美はかなり能力がある選手。たくさんのことをもたらしてくれると思います。浅野は広島で先発しているわけではありませんが、得点を取っています。この前の浦和戦も彼がピッチに入ったおかげでチームは逆転できましたね。スピードがあって、裏も突ける。それに真ん中だけでなく、サイドもできます。スペースを狙ってボールを求めてほしいです。良い守備も期待しています」
 
●メンバー発表を終えて
「もしかしたら29日の夜に変更があるかもしれません。そうなることを望んではいませんが。東アジアカップでは3つのオーガナイズを用意しています。3つのシステムに対応できるよう、こうしたメンバーにしました。
 
できれば、大会までに1週間の準備期間があれば有難かったです。ただ、そこでうんざりするのではなく、勝つトライをしたい。できれば優勝カップを持ち帰りたいですね。対戦相手の分析もしています。難しい大会になると思いますが、優勝は可能です。
 
怪我には気をつけたい。メディカルスタッフ、フィジカルスタッフの協力も得てしっかり疲労回復に努めて、困難を乗り越えたいです」
<会見要旨?/質疑応答>
Q.シンガポール戦をどう分析したか?
「素晴らしい試合をしたと思っています。あれだけたくさんパスが成功した代表戦は初めてじゃないですか。確か670本のパスを通しました。31本のシュートのうち、19回ほど100パーセントと言える決定機がありました。逆に相手は我々のペナルティエリアに入れませんでした。最後の決定的な仕事ができなったのが、日本の大きな問題点。リーグ戦で25〜30点取れる選手を見つけるのが課題です」
 
Q.東アジアップと、9月以降のワールドカップ予選に向けて試したいことは?
「選手を発見したい。(9月以降の)A代表にはおそらく50パーセントほど国内組が入ってくると予想しています。あとはチームを向上させたい。これまでよりも可能性を探りたいですね。3つのシステム、3つのオーガナイズに対応できる選手を選んでいます。
 
 それから野心を見せつけないといけないと思います。今回の中国では、少し特別な環境が用意されています。アウェーではメンタル面で強いものを発揮しないといけません。対戦3か国は我々に相当な敵対心を持っているので、それに対抗できる選手を見つけられたらと思っています。
 
 現地での環境を踏まえてシステム、選手の選定をしたい。選手たちのモチベーションが高いのは嬉しいことです。(コンディションに不安がある)太田も(柴崎)岳も、『中国でプレーしたい』と強い意思を見せてくれています。こういう気持ちが大切なのです」
 
 
Q.Jリーグに対してのリクエストは?
「特に点を取ることころ、我々は違いを見せつける選手を探さなければいけないと思っています。そのためにリーグの方々にコラボレートしていきましょう、私を助けて下さいという話をしました。
 
 この大会にはトレーニングなしでいかなければいけないという話もしました。私と同じように、彼らもリーグのカレンダーに意見を言いたいのではないかなと思っています。いろんなことをお互いに修正していきましょうという話をしました。日本代表がより良い結果を出せば、みなさんも協力してくれると思います。
 
それから国内組での合宿もしたいなという話もしました。それに関してもしっかりお互いオーガナイズしていきましょうと。おそらく同意されないクラブもあると思います。ただ、前回のミニ合宿で我々は完璧な仕事をしたと思っています。
 
合宿の最後に、全選手が私のところに来て意見してくれました。たくさんの選手がやはりA代表でプレーしたと言ってくれました。彼らには野心があります」
 
Q.新しい選手の発見と結果。東アジアカップで重視するのは?
「大事なのは結果です。そこを求めたうえで、新しい選手を見つけたい。アウェーという特別な環境で、強いメンタルを示してもらいたいですね。例えば宇佐美。おそらく守られていない、我々が保護されていない状況で戦わなければいけない。おそらく国内のデュエル(競り合い)とは違うものになると思います。
 
 つまり、そうした準備を予めしておかないといけないということです。例えば、宇佐美はひとつレベルを越えないといけない大会かもしれません。なぜかというと、もし彼がヨーロッパを望むのであれば、より厳しいデュエルが待っているからです」
 
Q.初選出の遠藤の評価は? 五輪代表候補をどう捉えていますか?
「湘南では3バックの右をやっていますが、だからといって4バックの右では使えません。ちなみに、日本代表の右SBは内田、(酒井)高徳、(酒井)宏樹あたりが選ばれています。国内組がここでプレーしたA代表の試合を皆さんは最近見たことがありますか? 私が記憶するなかでは、随分遡らなければいけない。
 
広島の塩谷は右でプレーできると思いますが、怪我をしてしまいました。新潟の松原も負傷中です。五輪の選手に目を向ければ、岩波とか植田とか、そうした選手もA代表に呼びたいなと思っています。だけども、リーグのなかでプレーする時間が少ないですね。もちろん彼らも、A代表に入る資格があれば呼びます」
<スタメン予想>

 ここからは、ハリルホジッチ監督の言葉をもとに、東アジアカップのスタメンを占っていく。
 
 会見で指揮官が語ったとおり、キーワードとなるのは「アウェーで戦うメンタルとデュエル(競り合い)での激しさ」だ。
 
 フィジカルが持ち味の3か国と対戦する今大会は、FIFAランク52位(7月23日時点、日本は50位)の韓国が最大のライバルだ。ただ、指揮官が「かなり激しいデュエル(競り合い)を仕掛けてくる」と言及したのは北朝鮮と中国に対してであり、その2試合では「フィジカルで対抗しなければならない」とも付け加えた。
 
 つまり、日本の持ち味であるパスワークで局面での接触を避けるのではなく、相手の土俵である競り合いでどこまでやれるかがポイントのひとつになる。
 
 その前提とこれまでの4試合(チュニジア戦、ウズベキスタン戦、イラク戦、シンガポール戦)も踏まえると、おぼろげながらスタメンの顔ぶれが見えてくる。
 
 シンガポールとのワールドカップ予選で先発起用された宇佐美や柴崎、槙野らは軸と見る。そのうえで、焦点となるのは彼らの脇を固める人材だ。
 
 おそらく、トップ下にはブレイク中の武藤が入るだろう。
 
 浦和でシャドーとして起用されているアタッカーは、「FWとしても使える」が、「今のところ中盤でのプレーをやってほしいと思っている」人材。泥臭くゴール前に詰める迫力や決定力は国内組随一で、指揮官が求める「点が取れる選手」にもマッチする。
 
 武藤以外の候補者としては、「左サイドで起用されることが多いが、もしかしたらFWの後ろ、中盤でもプレーでき」倉田を考えているようだ。
 
 また、トップ下が本職の柏木については、「後ろからしっかり組み立てることができれば面白い」と語っており、ボランチが主戦場になるかもしれない。
 CFは、「もしシンガポール戦にいたら、そのフィジカルで良い現象が起きていたかもしれない」川又がファーストチョイスか。3月シリーズの2試合に出場するなど、現体制下で実戦経験を積んでいるのもメリットで、「かなり良いクオリティを持っている」(同監督)興梠を一歩リードしている。
 
 最終ラインで注目すべきは、右SBの人選だろう。唯一の本職である米倉を一番手と予想するが、5月の国内合宿で“右SB候補”に挙がった丹羽が抜擢される可能性もある。
 
 今大会は7月29日のJ1・5節終了後に集合し、8月2日に北朝鮮との初戦と準備期間が極めて短い。なにより結果を求めるなら、米倉よりも“ハリル流”に慣れている丹羽のほうに分があるとの見方もできなくはない。
 
 左SBは太田のコンディションに問題がある場合、代役として車屋(川崎)を招集すると明言している。その際には、3月シリーズのチュニジア戦で先発した藤春が、左SBのスタメンに返り咲くだろう。
 
 ボランチは、柴崎が間に合えば山口とコンビを組む可能性が高いか。ただし、谷口も興味深い選択肢のひとつだ。ハリルホジッチ監督は、この長身ボランチの「高さ」や「強さ」を高く買っているようで、北朝鮮戦や中国戦での「デュエル」対策として抜擢されてもおかしくはない。
 
 いずれにせよ、欧州組不在の東アジアカップは、国内組にとって絶好のチャンスだ。4人の初選出組(米倉、遠藤、武藤、倉田)だけでなく、本田(ミラン)とポジションを争う永井や川島の後塵を拝しているGK陣の奮起も期待される。