本稿でも「座りっぱなし」の生活が身体の健康に悪影響を及ぼすという報告を紹介してきたが、ようやく(?)座りっぱなしと精神症状に関する論文がでてきた。オーストラリアはディーキン大学の報告から。

 研究チームは、座りっぱなしの生活と不安との関係に着目。テレビ視聴やパソコン、仕事中の座位時間と不安との関連を調べた9件の先行研究について、あらためて分析を行った。

 その結果、9件中5件の研究において、座りっぱなしの生活が不安を助長することが指摘されていた。残りの4件でも、座りっぱなしの時間と不安リスクの上昇が関連していたという。特に高校生を調査対象とした研究では、1日2時間以上テレビやパソコン前から動かないグループは、2時間未満のグループと比べ、不安リスクが36%も増加することが明らかになっている。

 研究者は「座りっぱなしの生活と不安リスクには、睡眠パターンの障害や社会からの引きこもり、基礎代謝の低下などが関連しているのでは」と考察している。また、テレビなどにかじりつく時間が増えると社会的な関係からの逃避が生じ、さらに不安をつのらせることになるかもしれない、と推測している。ただし、今回の報告は予備的なもので、座りっぱなしと不安との関連を証明するには詳しい研究が必要だ。

 日本の不安障害の12カ月有病率は5.5%、生涯有病率は9.2%に及ぶ。およそ20人に1人が過去1年の間に、10人に1人がこれまでの生涯で一度は不安障害を経験していることになる。

 また、10〜20代で何らかの不安障害を発症した場合、生涯に双極性障害(躁うつ病)やうつ病を発症するリスクが一般人よりも高くなる。危険を避け、慎重な行動を促す不安は健全な本能だが、恐怖に震え、特定の状況から逃げ出したくなる病的な不安は、生きる力を削いでしまうのかもしれない。

 不安障害は遺伝的素因より環境要因の影響が大きい。思春期のお子さんをお持ちの方はこの夏、「パソコンを捨てよ、外へ出よう」と誘ってみるといい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)