"ゴルフ発祥の地"セントアンドリュース(パー72/スコットランド)で開催されている第144回全英オープン。8人の日本人選手が出場した中、決勝ラウンドに進んだのは、松山英樹(23歳)ただひとりだった。

 リンクス特有の強風が吹き荒れ、突然の雨にも見舞われた。選手たちにとっては、非常に厳しい条件だった。それでも松山は、予選ラウンドを終えて、首位と4打差の通算6アンダー、10位タイ。堂々と優勝争いに加わっている。

 松山の初日は、ティーショットで1度バンカーに捕まった以外は、大きなミスはなく、ショットは冴えていた。その分、何度となくバーディーチャンスを迎えていた。しかし反面、パッティングが不調だった。5m以内のバーディーパットを8回、2mのパーパットを2回外すなど、多くのチャンスを逃した。結果、前半は3アンダーとしたものの、後半は3つスコアを落として失速。トータル「72」のイーブンパーで、64位タイと出遅れてしまった。

 とはいえ、そうした状況にあっても、松山が怒りを表に出すシーンはなかった。惜しいパットを外してしまったあとも、時折笑顔を見せるなどして、冷静に次のホールへと向かっていった。そんな、これまでとは違う姿から、松山のメンタル面での成長が感じられるとともに、2日目への反撃が見込まれた。ホールアウト後、ショットの練習を行なわず、パッティングの練習に1時間を費やして、すぐに修正を行なっていたあたりからも、2日目への巻き返しが期待された。

 迎えた2日目、早朝からの猛烈な雨の影響で一時プレイが中断した。松山のスタートは、当初の予定より3時間14分も遅れて17時48分となったが、そうしたアクシデントにも松山は動じることがなかった。1番(パー4)でいきなりバーディーチャンスにつけ、見事それを沈めて初日の不安を一掃した。

 テレビ中継の解説を務める丸山茂樹プロは、このパットが2日目のポイントだったと言う。

「2日目は1番ホールのバーディーパットを入れたことが大きかった。あれで、その後も(松山は)自信を持ってプレイすることができたと思います」

 実際、松山は1番ホールに続いて、2番(パー4)、3番(パー4)、4番(パー4)と怒涛のバーディーラッシュを披露。さらに、7番(パー4)、9番(パー4)、10番(パー4)でもバーディーを奪って、多くのギャラリーを沸かせた。

 そこで印象的だったのは、世界ランク2位のジョーダン・スピース(21歳/アメリカ)、同4位のダスティン・ジョンソン(31歳/アメリカ)という、世界を代表し、世界中が注目する選手たちと同組でプレイしながら、まったく臆することがなかったことだ。ふたりを後方につれて、先頭をきって歩く姿からは、彼らと同様の世界トッププレイヤーとしての風格が漂っていた。

 後半に入ると、日没も近くなってきて、普通に立っていることさえままならないほどの強風が吹き始めた。おかげで、松山は、11番(パー3)、12番(パー4)と連続ボギーを喫してしまうが、14番(パー5)でバーディーを奪取。そこで、日没サスペンデッドとなった。

 松山は、4ホールを残しての終了となったが、8バーディー、2ボギーと、6つスコアを伸ばして躍進。初日のうっぷんを晴らして、暫定ながら順位は9位タイまで急浮上、一気に優勝争いに絡んできた。

 この勢いのまま、さらなる躍進が期待された3日目。しかし再び、強風が猛威を振るった。午前7時、未消化となった第2ラウンドの15番(パー4)から再開するも、松山がそこをパーとした時点で中断。以降、再開の目処が立たないまま、延々と中断が続いた。結局、再スタートが切られたのは、中断からおよそ10時間後の18時だった。

 テレビ中継の解説を務める青木功プロが言う。
「全英オープンでは、体力とメンタルの両方を備えていなければいけない」

 天候が目まぐるしく変わる過酷なリンクスコースでの戦いでは、中断が繰り返されることもざら。青木プロが語るのは、そこで結果を出すための重要な要素となる。

 はたして、松山はそれらを十分に持ち合わせていた。10時間にもおよぶ中断にも対応し、難関の16番(パー4)、17番(パー4)をそれぞれパーで切り抜けた。最終18番(パー4)では、惜しくもバーディーチャンスを逃したが、第2ラウンドをトータル「66」の好スコアでフィニッシュ。通算6アンダー、10位タイで決勝ラウンドへと駒を進めた。

 ただ、長時間の中断によって、第2ラウンド終了後に予定されていた第3ラウンドは、現地時間7月19日(日)に持ち越し。第4ラウンドは、7月20日(月)に行なわれることとなった。こうした事態は、27年ぶりのことだ。

 悪天候に悩まされる今大会。その気まぐれな暴風と雨には、選手たちも相当苦しんでいる。そんな中、当然決勝ラウンドでも何が起こるかわからない。この自然との戦いをいかに攻略していくか――それが、優勝へのカギとなるが、松山にもチャンスはあるのか。

 丸山プロは、こう語る。

「優勝スコアは、15アンダー以上になると思う。そうすると、松山選手も決勝ラウンド2日間のどちらかで再び、『67』『68』といったビッグスコアを出す必要がある。そのためには、現状のパットの感覚を維持すること。それが実現できれば、ショットに関してはまったく問題がないので、優勝争いに加わっていけると思います」

 青木プロも、松山にチャンスはあるという。「メジャー制覇の可能性は高まった」と、大きな期待を寄せている。

「天候の善し悪しにかかわらず、今のままのゴルフができるかどうか。とにかく、予選ラウンドのいいイメージを持って、決勝ラウンドに臨んでほしいと思います」

 今大会の松山は、いつも以上に冷静である。そのうえで、何か"変わろう"としているように感じられる。それは、自らが掲げる"メジャー制覇"という目標のため――。

 今、覚醒の瞬間を迎えようと、笑顔を見せながら前向きに戦っている松山。"ゴルフ発祥の地"で、日本人男子初の"快挙"が成し遂げられるかもしれない。

テレビ朝日 全英オープン取材班●構成 text by tv asahi The open crew