脳梗塞は脳の血管が詰まって脳の組織が壊死し、重篤な障害をもたらす。原因別に分けると「心原性脳塞栓症」、「アテローム血栓性梗塞」、「ラクナ梗塞」の3種類がある。
 「心原性脳塞栓症」は、心臓の不整脈(心房細動)によってできた血栓が、脳の血管に飛来して栓塞するというもの。「アテローム血栓性梗塞」は、脳の太い血管が動脈硬化を起こし、血管が狭くなったり、閉塞して起こるタイプだ。この2種類は広範囲の壊死を引き起こす可能性が高いため、呂律が回らない、手足が痺れて動かなくなるなどの明確な症状が表れることが多いとされる。
 しかし、三つ目の「ラクナ梗塞」の場合、脳の細い血管が動脈硬化によって閉塞し、同じように軽い言語障害や手足の痺れが出たりはするが、脳梗塞自体が小さいため、詰まった場所によってはハッキリした症状が表れない。そのため、“隠れ脳梗塞”とも呼ばれ、たまたま受けた脳ドックやMRIで発見するケースが多いのだ。

 専門家によると、“隠れ脳梗塞”は、極めて微小な脳梗塞で、まったく症状が認められない「無症候性脳梗塞」から、一時的に目が霞んだり、持っていた箸を落とするなどの軽い症状が出る「一過性脳虚血発作」のことを指すという。
 しかし、このレベルの脳梗塞を患う人は意外に多く、ある調査では、MRI検査を受けた患者のうち40代では3人に1人、50代では2人に1人、60代では8割以上の人に発見されたという。
 「この段階では、症状が比較的軽いということもあり放置されることが多いのですが、生活習慣病の改善などで予防に努めなければ、5年以内におよそ3割の人が発作に襲われ、次のステージに進行しています」(専門家)

 脳梗塞は、ある日突然に意識を失い倒れることがある。しかし、予告なしに突然襲われると思われがちだが決してそうではない。
 高血圧や動脈硬化などの進行で、徐々に脳の血管が狭くなり、数ミリ程度の微小な“隠れ脳梗塞”がいくつか出現する。その後、梗塞の数がさらにあちこちに増え、ついには本格的な脳梗塞へと進展してしまうのだ。
 東邦大学病院医療センター大橋病院循環器科担当医が説明する。
 「“隠れ脳梗塞”は、いわば水田の水路に小石がたまり、草木が生えて水の流れが悪くなっているような状態です。もちろん水はわずかながら供給されているので、稲は弱々しく育ちます。しかし、そのまま放置すれば水の流れは完全に遮断され、水田が干上がってしまい稲は枯れる。『ラクナ脳梗塞』は、高齢者に多く、高血圧が長く続くと血管の内壁が常に刺激を受けて傷つくため、強度を保とうと血管内壁が硬くなります。こうして柔軟性を失うと血栓が形成されやすく、梗塞を起こしやすい状態になるのです」