報復運転を捉えた様子

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 韓国のテレビで最近、毎日のように取り上げられているニュースがある。ズバリ、「ホボッ・ウンジョン」だ。日本語で書くと「報復運転」事件となるが、これは車を運転中に進路を妨害されたり、先行車が急ブレーキをかけたりすると、それに対抗して報復する行為のこと。それも、最近はその度合いがひどく、ブチ切れて倍返しするヤカラが後を絶たない。

「普段は穏やかなのに、ハンドルを握ると別人になる」という話はよく聞くが、韓国では別人どころか犯罪者になってしまうといっても大袈裟ではないのだ。

 ここ3カ月間で警察に摘発された報復運転は、ソウル市内だけで100件以上。その主な原因は、車線変更のトラブルだという。ウインカーを出さずに急に自分の前に割り込んできたとか、割り込もうとしたが道を譲ってくれなかったという、相手の運転マナーの悪さにカッとなって、仕返しを決心するというのだ。

 それも、パッシングをされたり、クラクションを鳴らされたりした時には怒り爆発。罵詈雑言を浴びせるだけではなく、相手の車を追いかけ追い越し、嫌がらせを連発。相手の車の前でスピードの加速と減速を繰り返して威嚇し、最後はわざと急ブレーキを踏んで追突事故を起こさせるというのだからタチが悪い。ヘタをすると自分の命にも関わりかねない、狂気じみた危険行為に走っているのだ。

 しかも、さらなる問題は、第三者も事故に巻き込まれ、ケガを負わされてしまう可能性が高いということだ。例えば、自分の前を走っている市営バスが視界の邪魔になるとの理由で、アクセルを踏んでバスの前に割り込み。その後、急ブレーキを踏んで後続のバスを急停車させ、乗客にケガを負わせる事故もあった。また逆に、自分の前に割り込んだ車にカッとなったバスの運転手が、その車を執拗に追い込むあまりに乱暴運転となり、バスの乗客がケガをするという出来事もあったのだ。

 アンケートによると、10人中4人は報復運転された経験があるというが、なぜ韓国の運転事情はここまで荒くなってしまったのか? もともと韓国人は、日本人に比べると運転が荒いといわれてきたが、昨今はその荒さがかなり深刻である。

 そもそも、免許取得のための運転マナーの教育時間が1時間しかないということも問題だが、「韓国の成人男女の半分以上は怒りの調節が難しい」という韓国精神健康医学会による調査結果にみられる短気さも一因かもしれない。この調査結果によると、韓国の成人男女の10%は、専門家の治療が必要とされるほど深刻な状態だという。報復運転に限らず、目が合った・肩がぶつかったという日常の些細な出来事においても、ブチ切れて相手を死亡させた暴力犯罪も後を絶たない。これはやはり、競争意識が強すぎる韓国ならではの弊害といったところだろうか。

 また、報復運転が盛んになった理由として専門家が口をそろえるのは、「車=自分の価値」という社会的な風潮にも原因があるという。車のCMで例えると、日本は「低燃費」「室内空間の拡大」など生活に役立つ機能をアピールするのも中心だが、韓国の自動車CMは「車は男の存在感」「他人の嫉妬は、あなたにとってチャンス」といったコピーが大半で、車は道路の上ではなく、砂漠や海の砂浜を颯爽と猛スピードで走っている。そういった広告を目にすることで、無意識のうちに「自動車は自分の価値」という意識を潜在的に持つようになり、進む先を邪魔されると自分の価値が否定されたり、侮辱されたと感じてしまうのだという。結果、それが報復運転に走らせるというわけだ。

 現在、韓国の警察は全国250カ所に特別チームを立ち上げ、「報復運転特別取り締まり」を行っているというが、韓国を訪れる方々にはぜひ気をつけてほしい。できれば、韓国では自動車の運転を控えることを強くオススメする。これはアドバイスではない。忠告だ。
(取材・文=李ハナ)