第144回全英オープン(現地7月16日〜19日)が開幕する。

 会場は、スコットランドのセントアンドリュース(全長7297ヤード、パー72)。2010年以来、5年ぶりの開催となる。"ゴルフ発祥の地"として知られ、すべてのゴルファーが憧れる舞台に、今年は松山英樹(23歳)、岩田寛(34歳)、小田孔明(37歳)、池田勇太(29歳)、藤田寛之(46歳)、手嶋多一(46歳)、高山忠洋(37歳)、富村真治(24歳)と、8人の日本人選手が挑む。

 なかでも、注目されるのは、やはり松山。今季も、マスターズ5位、全米オープンで18位と奮闘してきた彼に、日本人男子初のメジャー制覇の期待がかかる。

 現地7月13日(月)に決まった予選ラウンドの組み合わせでは、今年のマスターズと全米オープンの覇者で、今回メジャー大会3連勝を狙うジョーダン・スピース(21歳/アメリカ)と、全米オープンでJ・スピースと最後まで熾烈な争いを演じたダスティン・ジョンソン(31歳/アメリカ)と同組になることが発表された。当の松山は、その組み合わせについて「全米オープン1位(J・スピース)と2位(D・ジョンソン)が一緒なんだから、(もうひとりは自分ではなくて)全米オープン3位の選手を組み合わせればいいじゃないですかね」と謙遜していたが、そんなところからも、松山への注目度の高さがうかがえる。そしてそれは、日本に限らず、世界中が松山の活躍を期待している証と言えるのではないだろうか。

 その松山は、現地7月11日(土)にコース入り。すぐに練習ラウンドを行なったが、「どうがんばっても、バンカーに入っちゃう気がする」とフェアウェーやグリーン周りに点在する112個のバンカーに頭を悩まし、各ホールを消化するごとに「このコース、嫌い」「もうヤダ、無理」と、世界屈指の難コースに苦悩し、ネガティブな発言を繰り返していた。

 しかし、結果を出すための準備は怠(おこた)ってはいなかった。キャディーバッグには、リンクスコース特有の強風対策として2番アイアンも入れており、現地での練習ラウンドで使用し、その感触をきちんと確かめている。

 また、翌12日(日)には、過去数々のドラマを生み出してきた17番グリーン手前のロードバンカーを入念にチェックしていた。1978年大会、中嶋常幸が脱出に4打を要して優勝争いから脱落したことから、通称「トミーズバンカー」と呼ばれる名物バンカーである。実際、松山も練習ラウンドで捕まったが、そこでは難なく脱出に成功していた。ただ、松山はそれで満足はしていなかった。

 突然、そのバンカー内で左打ちに挑戦し始めたのだ。最初はサンドウェッジで脱出を図って失敗し、続いてクラブをピッチングウェッジに代えて打つも、バンカーからボールが出ることはなかった。

「やっぱりこのバンカーは、左じゃあ(出すのは)無理だ」

 松山はそう言って左打ちの練習をやめたが、そのチャレンジに、松山の"強さ"が感じられた。普通なら、想像すらしない左打ち。しかし松山は、練習の段階であえて挑戦し、本番での選択肢を広げるための、どんな状況に陥ってもそれに対応できるようにするための、準備や努力を欠かすことがない。そこに、松山が持ち続ける"あくなき向上心"の一端を垣間見ることができた。

 13日(月)の練習ラウンドでは、課題のパッティングでミスが目立ち始めると、ラウンド終了後に、パッティンググリーンへ直行。納得できるまでパットの練習をこなした。しかもその後、ドライビングレンジに移って、夜の7時くらいまで打ち込みを続けていた。そして、開幕前日の練習ラウンドでも、バンカーやグリーン周りの最終確認を行なうなど、調整に余念がなかった。

 悲願達成へ着々と準備を重ねる中、松山はセントアンドリュースでの戦いについて、こう語った。

「全米オープンは、優勝スコアがイーブンからひと桁アンダーの争いって読めていたけど、ここではふた桁アンダーが必要かもしれない」

 つまり、トッププレイヤーたちのバーディー合戦となるということ。見る側にとっては、非常にエキサイティングな戦いになることが予想される。ならば、爆発力のある松山にも十分にチャンスはあるはずだ。

 テレビ朝日の中継で解説を務める丸山茂樹氏も、その可能性に同意して、松山のメジャー制覇に必要なことは何なのか、次のように語った。

「(松山の)ショットの調子は良さそうなので、普通にやれば、20位以内を外すことはないと思います。さらにパッティングが良ければ、トップ10にも入れると思うし、優勝争いも可能だと思います。少なくとも(4日間で)16アンダーは出さないといけないコースだと思うので、予選ラウンドの2日間は、悪くても60台で回っておくこと。それが、決勝ラウンドに進んで、追い上げるチャンスがある場所になると思います。ぜひとも、優勝争いに絡んでもらいたいですね」

 メジャー3連勝の快挙に挑むJ・スピースに、大勢のギャラリー、世界中の視聴者が注目するのは間違いない。そんな彼と同じ組でラウンドする松山は、はたしてどんなプレイを見せてくれるのか。J・スピースへの関心を奪うほどの快進撃を披露してくれることを期待したい。

テレビ朝日 全英オープン取材班●構成 text by tv asahi The open crew