■原口元気インタビュー(後編)

 先の、2018年ロシアW杯のアジア2次予選(6月16日vsシンガポール)に挑んだ日本代表に、原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)が選出されたのは、ちょっとしたサプライズだった。というのも、ハリルホジッチ監督になって最初の活動となる3月の親善試合、チュニジア戦(2−0)とウズベキスタン戦(5−1)に臨んだメンバーに選出されず、ハリルホジッチ監督が4月に欧州行脚を敢行した際の、「欧州組」を集めた食事会にも呼ばれていなかったからだ。

 4月に入ってから、所属のヘルタ・ベルリンでレギュラーを奪取。スタメンで奮闘してきたことが評価されたのだろう。原口は2013年7月の東アジアカップ以来となる、日本代表入りを果たした。

 朗報を受けた原口は、サイドでいかにプレイするか――代表チームに合流する前から、イメージを膨らませていた。

「監督の会見で、自分をサイドで使いたい、という話を聞いていましたから。3月の2試合を見たりして、自分の中で代表でのサイドのプレイをイメージしていました。ドリブルや走力、スプリントの回数で(他の選手との)違いを見せられれば、と思っていましたね」

 だが、日本代表で原口に与えられたポジションは、サイドではなく、トップ下だった。所属するヘルタ・ベルリンでは理想とするポジションだが、日本代表では求められるモノがまったく異なる。しかも、代表の試合映像で見て、ハリルホジッチ監督が思い描くサイドプレイヤーのイメージと、自分のプレイは合致していると感じて、代表でのプレイを楽しみにしていた。それだけに、「トップ下」というポジションを割り当てられたことは、驚きであり、ショックでもあった。

「(代表に合流して)最初は、サイドだったんですよ。でも、(W杯予選の前哨戦となる)イラク戦の前に、キヨくん(清武弘嗣。ハノーファー/ドイツ)がケガをしたんです。それで、トップ下をやる選手が減って、練習でトップ下に入るように言われた。そうしたら、その印象がよかったのかな、監督から『おまえは、攻撃も、守備もトップ下でやれるクオリティーがある。これからはトップ下でいいんじゃないか』って言われたんです。そのときは、『えぇ!?』って驚きましたよ。ヘルタのトップ下なら、カウンター主体なんでシンプルにできるけど、日本代表のトップ下はゲームを作ったり、攻撃を組み立てたり、よりテクニカルな技術が必要になってくるじゃないですか。それなら、シンジくん(香川真司。ドルトムント/ドイツ)やキヨくんのほうが、間違いなく適任ですよ。それに、3月の試合を見て、自分は絶対に(代表の)サイドで生きると思っていましたから」

 当初、原口はトップ下について、ザッケローニ監督時代の香川や本田圭佑(ミラン/イタリア)らがこなしていたスタイルをイメージしていた。そのため、ハリルホジッチ監督から受けた「トップ下指令」にはためらいがあった。だが、練習を消化していくと、トップ下の役割がザッケローニ監督時代とはまったく異なることがわかった。

「監督に言われたのは、なるべくシンプルにプレイすること。監督は、トップ下がゲームを作ったり、タメを作ったりするのが、あんまり好きじゃない。シンプルにはたいて前に出て行くことを求められ、相手を背にしてボールを受けたら、すぐに味方に落とせって言われる。ボールを簡単にさばいて、ふたり目、3人目が前に出て行くイメージを持っているから、(自分が)やっていても、それほど苦にはならないな、と思いましたね。とはいえ、トップ下はボールを受ける角度がサイドとはまったく違う。それに、サイドは(自分が得意とする)ドリブルができますからね。トップ下も、サイドも両方できたほうがいいと思いますけど、やっぱり今でもサイドで勝負したい気持ちがすごくあります」

 サイドへの執着がある原口だが、イラク戦(4−0)ではトップ下を務めたからこそ、生まれたゴールがあった。後半39分、こぼれ球に反応し、ドリブルから放った一撃は強烈だった。

「確かにあれは、トップ下にいたからこそ、生まれたゴールです。真ん中にいると、いいこぼれ球が来たときには、すぐにゴールを狙える。サイドにいたら、ああいうゴールはないですから。あと、あのゴールに関しては、自分の『点が取りたい』という気持ちが出せた。途中から出た選手は、みんな点が取りたいと思ってメラメラと燃えていた。そのせいか、コンビネーションとかなくて難しかったけど、そういう中で結果を出せたのはよかった」

 このイラク戦での一発で、原口という存在が、ハリルホジッチ監督の中で確かな地位を築いたことは間違いない。続くW杯予選のシンガポール戦でも、原口は後半26分、0−0の場面でピッチに送り出された。その重苦しい状況を打開してくれる選手として、期待されたのだ。しかし、ボランチで投入された原口は思うようなプレイができず、その表情は鬼の形相となっていた。

「シンガポール戦は、怒っていたというか......う〜ん、試合に出ることに意味はあるけど、正直サイドでプレイしたかったんです。あの時間で自分のよさを出しつつ、どうやったら自分がチームに貢献できるかを考えると、(自分が)やることははっきりしていましたから。相手はドン引きしていたし、真ん中に人が固まっていたんで、それならサイドから崩していくのが有効だと感じていて、自分なら、サイドから切り込んでいけるし、そういうプレイができると思っていた。でも、まさかのボランチで、どうしたらいいのか、考えてしまった。結局、何もできなかったんで、ドローに終わったあと、すごく悔しかったですね」

 それでもこの6月、ハリルホジッチ監督になって初めて招集されて、2試合に出場したことは、決して悪くはない。トップ下という"オプション"を与えられたことも、監督の期待の表れと言える。

「監督の(自分に対する)評価はわからないけど、自分としては、試合に出て1点取ったからといって、(自分の立ち位置など)何かが劇的に変わるってことはないと思う。むしろ、1点取ったこと、その結果を出すということを、これから何度も繰り返していくことが必要になると思っている。そうしないと(代表では)生き残っていけない。だって、今の代表には、南アフリカW杯(2010年)から代表で結果を残してきた選手がたくさんいるわけじゃないですか。そういう選手たちから、自分が(代表でのポジションを)取って代わっていくには、結果を出し続けていかなければいけないと思うんで。それに、自分が目指すところは、もっと上だからね」

 既存メンバーを追い抜いていく、という志は代表選手に不可欠なものだ。そのうえで、原口が目指すところ、というのはいったどこにあるのだろうか。

「日本で一番の選手になること。本田さんやシンジくんを目標にしているけど、早く彼らに追いつき、追い越していきたい」

 原口には、彼らを追い越していかない限り、ロシアW杯の舞台に立てない、という危機感があるのだろう。

「ロシアW杯は、自分の年齢的(27歳)にも一番いい時期で迎えられる。そのメンバーの中に、ぎりぎりで入るんじゃなくて、"主役"になれるぐらいの存在で入るには、本田さんやシンジくんとか、先輩を抜いていかないといけない。もちろん、そういう先輩たちのことはリスペクトしています。経験もあるし、自分が持っていないモノを持っている素晴らしい選手たちですからね。でも、彼らを追い抜いていかないと、試合に出られないし、そういう競争をしていかないと、チームも強くならないですから。同じように、同世代の選手にも負けたくない。今のチームは、自分のひとつ上とか、ひとつ下の選手も多くて、彼らの活躍も刺激になるけど、これからは『自分が一番』という気持ちを持ってやっていきたいですね」

 原口は、代表でのレギュラーポジション奪取に向けて、また3年後のロシアW杯で最高のパフォーマンスを発揮できるように、肉体的なトレーニングを早くも計画的に行なっている。プレイそのものは、そのときの所属クラブやコンディションによって変わってしまうが、肉体を強くしていくことは、どんな環境や状況にあっても、レベルアップしていくことが可能だからだ。

「ロシアW杯は、自然に到達できるもんじゃない。計画を立てて狙っていかないと、出場できない。これからも、障害にぶつかることはあると思うけど、今やっていることを続けていく」

 レッズ時代の原口からは想像できないが、彼は今、自身の課題をきちんと把握して、3年後に向けての自身の強化をしっかりとプランニングできているのだ。

 9月には、W杯予選の第2戦、カンボジア戦(9月3日/埼玉スタジアム)がある。初戦は格下のシンガポール相手にスコアレスドロー。試合後は、スタンドからブーイングを浴びて、各メディアから批判を受けた。しかし、原口は何ら気にしてはいない。

「シンガポール戦の引き分けを、あーだ、こーだ言う必要はないですよ。あれだけチャンスを作っても、ゴールが入らないときはある。負けたわけではないんで、やり方を変える必要もない。自分は、監督がイメージしているサッカーはすごくいいと思っている。メディアは、もっとこうしろとか言うけど、自分たちは今のままやっていければいい。監督についていけば、必ず結果が出ると思っています」

 これから原口は、日本代表で、所属するヘルタ・ベルリンで、熾烈なポジション争いに挑んでいく。だが、そうした困難な状況にいることを、むしろ「うれしい」と喜んでいる。簡単にできてしまうことからは、達成感も得られないし、成長もできないということを、ドイツで学んだからである。

text by Sato Shun