ファッションのために健康を害するのはナンセンスshutterstock.com

写真拡大

 皮膚のようにぴったりとフィットして、脚長&スマートに見せることから、ここ数年、流行の「スキニージーンズ」。つい最近も、英国王室のキャサリン妃がスキニーをスレンダーに履きこなした写真が話題になり、再び人気に火が付いた。

 ところが最近、そのスキニージーンズで大変なトラブルに見舞われてしまった事例が、ある医師によって報告されて話題となった。細身のジーンズを着用して長時間しゃがんでいると、「筋肉や神経に損傷が生ずる可能性がある」というのだ。

長時間しゃがみつづけて歩行困難に

 論文は、オーストラリアのロイヤル・アデレード病院の神経学部門准教授、Thomas Edmund Kimber氏らによるもの。英医学誌「神経学・神経外科学・精神医学ジャーナル」の電子版に掲載された。アデレードに住む35歳の女性の症例を取り上げている。

 この女性は、前日に細身のスキニージーンズを履いて親戚の引越しを手伝ったとき、食器棚を空にするために何時間もしゃがんで作業を続けた。そして、時間がたつにつれて不快感が増していったという。夜になって足の感覚が麻痺し、歩くことが困難に。転倒して動けなくなり、発見されるまで数時間も倒れたままだったという。

 女性がロイヤル・アデレード病院に来院したときには、ふくらはぎがあまりにも腫れていたので、診察をするためにジーンズを切らなくてはならなかった。患者は下肢と足の感覚がなく、足関節または足指を動かすこともできなかった。

 医師らは、女性が「コンパートメント症候群」と診断。細身のジーンズで長時間しゃがむことによって脚が腫れ上がり、長い時間圧迫されることで、下肢の筋肉と神経線維が損傷した状態だ。

 治療により、彼女が自力で歩いて帰宅できるまでには4日もかかった。医師らは「病院で治療していなかったら、彼女は歩行に一生、支障をきたす神経障害に陥っていた」と述べ、極めて深刻な症状だったと強調したという。

筋肉区画の内圧上昇が障害を起こす

 人間の膝から下には脚を動かすための多くの筋肉があり、その間は筋膜で隔てられ、それぞれがコンパートメントの中に収まったような構造をしている。このコンパートメント内部の圧力が何らかの原因で上がり、筋肉や神経が圧迫障害を起こした状態が「コンパートメント症候群」だ。

 コンパートメント症候群は本来、怪我や骨折によって発症することが多い。下肢を骨折したときなど、コンパートメントの中に血腫などが生じて急激に内圧が上がり、強い痛みやしびれ、感覚障害、運動障害を引き起こす。

 まれにギプスやサポーターによる圧迫でも生じることがある。今回の事例は、脚を締め付けるきついスキニージーンズで長い時間しゃがんだことで、それと同じ状態が起きてしまったのだと考えられる。

歌手・ロッド・スチュワートはスキニーなパンツを封印して子作り

 タイトなパンツは圧迫障害だけでなく、男性の場合、生殖能力への影響も心配されている。睾丸が体の外に出ているのは精巣を冷やすためだが、体にフィットしたパンツをはくことで睾丸、精巣に熱がこもってしまう。そのため、生殖能力や精子の質などに影響が出るのだ。また、下腹部の血流障害がED(勃起機能の低下)につながる可能性も否定できない。

 先日、英高級紙『デイリー・テレグラフ』で、ロッド・スチュワートの妻ペニー・ランカスターが「夫がタイトなパンツを履かなくなったのはドクターストップがかかったからだ」と明かした。

 なかなか第2子に恵まれなかったロッドに、医師が「スリムでタイトなボトムを履くのをやめ、下着もゆったりしたものを履きなさい。熱いお風呂も禁止」とアドバイス。ロッドが忠告に従いスリムパンツを封印したところ、ペニーは妊娠し、第2子が2011年に誕生したという。

 とはいえ、「それでもスキニーを諦められない!」という愛用者もいるだろう。では、健康を損ねることなく楽しむにはどうしたらいいだろうか。

●体型に合ったサイズを選ぶ
 細く見せようと無理にきついジーンズを履かない。自分の体型に合っていて、ウエストにも指1〜2本が入る程度の余裕があるサイズを選ぼう。素材はできるだけストレッチ性が高くソフトなものがベター。

●毎日続けて履かない
 スキニージーンズを毎日履き続けるのは避ける。できれば週に2回程度に抑え、それ以外の日は身体を締めつけない服装で過ごすようにしよう。

●その日の行動予定を考慮する
 長時間にわたり座る、しゃがむなどの姿勢をとることが予想される日は、スキニージーンズを避け、身体の動きを妨げないゆったりとした服装で出かけよう。

●帰宅したら早めに脱ぐ
 長時間履いていると圧迫感にも慣れるが、体には予想以上に負荷がかかっている。タイトフィットな服は帰宅したらすぐに着替え、なるべく早めに体を解放しよう。

 コルセットやピンヒールなど、昔から最先端のファッションには体を痛めつけるものも少なくはなかった。だが、医学的な裏付けがある現代では、ファッションのために健康を害するのはナンセンスというもの。何事も行きすぎず、きちんとケアしながらお洒落を楽しみたいものだ。
(文=編集部)