シーズン18戦のちょうど折り返し地点となる第9戦ドイツGPを終えて、2015年のチャンピオンシップはバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ MotoGP)がランキング首位に立っている。

 36歳のロッシは、2009年を最後にこの5年間はチャンピオンの座を逃していたが、今年は開幕戦カタールGPの優勝以来、ここまでの9戦で毎戦表彰台に登壇する好調な走りを続けている。さらに長い目で見れば、ロッシは昨年10月の日本GP以来、13戦連続の表彰台獲得だ。

 第9戦ドイツGPの舞台であるザクセンリンクサーキットは、コースレイアウトやバイクの特性面などでホンダに有利なコースと言われており、実際、ヤマハ勢は2009年以来優勝を飾っていない。

 今年のレースでも、当地を得意とするマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が金曜のフリープラクティスから圧倒的な優勢を示し続け、決勝でも後続を大きく引き離す圧勝劇になった。

 このような展開をロッシは想定済みだったようで、マルケスとチームメイトのダニ・ペドロサが1-2フィニッシュを遂げた後方の3位でゴール。この結果をもって「今回はひとまず納得」とロッシはレース後に語った。

「金曜の段階から、マルケスやペドロサのホンダ勢と同じレベルに達していないことがわかっていたからね。苦戦を強いられた状況下でも、頑張れたと思うよ」

 また、今回のレースに関する限り、優勝それ自体よりもチャンピオン争いの直近のライバルであるチームメイトのホルヘ・ロレンソより前でゴールすることのほうが重要だった、とも話した。レース前はロッシとロレンソのポイント差は10点だったが、ロッシ3位(16ポイント)、ロレンソ4位(13ポイント)という結果により、さらに3点の差を開くことに成功した。

「現状では(ロレンソとの)力が拮抗しているから、彼の前で終わるのはシーズン前半を有利に締めくくるためにも重要だった。シーズン後半はとても厳しい戦いになっていくだろうから、つまらないミスを犯さないように万全の走りをしなければならない」

 一方のロレンソは、シーズン序盤こそやや出遅れた感があったものの、第4戦スペインGPから第7戦カタルーニャGPまで破竹の4連勝で、あっという間にランキング首位のロッシに肉薄した。ところが、前戦のオランダGPは3位で、今回は表彰台を逃して4位。快進撃にややかげりが見えつつあるものの、それはあくまでコースとの相性で、「自分本来の能力を最大限に発揮できなかっただけ」と冷静な表情でレース後に語った。

「テニスの世界にも、クレーコートは得意だけど芝がダメな選手がいるのと同じで、今回、自分がいまひとつうまく走れなかったのは、要するにそういうことなんだと思う」

 ロッシと13点差になったことについても、8月以降の後半9戦は得意コースが控えているために、さほど意に介する風でもない。

「今回のレースはバレンティーノとのライディングの違いで、彼のほうがうまくコースに対応できていた。8月以降は第10戦のインディアナポリス、第11戦のブルノ、第12戦シルバーストーンと、いずれも自分の得意コースが続くので調子よく走れるだろうし、ポイント差もリカバーできると思う」

 2015年のチャンピオン争いは、初夏の頃には、このロッシとロレンソの両名に絞り込まれたようにも見えた。しかし、ここ数戦で転倒ノーポイントが続いていたマルケスが、第8戦で最後までロッシと優勝を争って復調をアピール。今回の第9戦では本来の圧倒的な速さで勝利を遂げた。チャンピオン争いを巡る状況は、マルケスの復活によりシーズン後半に向けてさらに複雑化しそうな状況だ。

 独走優勝のマルケスは、ライバルたちとオーバーテイクの応酬にならなかったレース展開について、「バトルできたほうがよかったけどね。そのほうが、ファンも僕もレースを楽しめただろうから」と微笑む余裕も見せた。

「でも、今日は自分のレベルを確認することが一番大切だったので、バトルは今後の機会にあずけておきたい。まずは勝つこと、25ポイント獲得することが今日の最重要事項だった。エキサイティングなレースじゃなかったかもしれないけど、今回のレースで最も大事なのは、コンスタントに走り続けることだった。前回のレースでも安定して走れるようになっていたけど、今日はさらにしっかりと確認できた」

 その一方で、数戦前まで抱えていた課題を完全に払拭したわけではない、とも正直に語る。

「高速で進入して速度を維持するハイスピードコーナーでは、リアがスライドする傾向がある。今回は自分のライディングスタイルとホンダに合ったコースなので、あまり悪影響は出なかったけれども、この挙動の癖を解決できればシーズン後半はさらに強力に戦うことができる」

 第9戦のレースに先立ち、マルケスはまずバイクの快適さを取り戻すこと、それを達成したうえで、次の課題はレースに勝つこと、とふたつの目標を掲げていた。これらをあっさりとクリアした現在、次の目標について彼に訊ねると「もっと勝つこと」と無邪気な笑みを見せた。

 チャンピオンシップをリードするロッシとマルケスは現在65点差が開いている。大きな差に見えても、シーズンはいまだ半分を消化したにすぎない。この点数は、状況次第では1カ月少々で埋まってしまうほどの差でしかない。それをもっともよく理解しているのはロッシでありロレンソであり、そして誰よりも、シーズン後半に怒濤の追い上げを狙っているマルケス自身であろう。

西村章●取材・文 text by Nishimura Akira