【2014−2015シーズン10大ニュース@後編】

 2014−2015シーズンもNBAは話題がてんこ盛り。乱闘あり、笑いあり、涙あり......。NBAの魅力はコート内外に数多く散らばっている。記憶に新しい今シーズンの10大ニュースを振り返ってみよう。

【第5位】 コートでの乱闘あれこれ。「新・乱闘王」に名乗りを挙げたのは?

 試合にかける情熱が強すぎるせいなのか、2014−2015シーズンも乱闘シーンが多かった。

 10月28日に行なわれた開幕戦では、ロサンゼルス・レイカーズのコービー・ブライアント(SG)とヒューストン・ロケッツのドワイト・ハワード(C)がさっそく口論となった。ハワードのひじがコービーの顔にヒットし、コービーが「フニャチン野郎(ソフトマザーファッカー)!」と怒鳴った結果、両者にファウルがコールされている。ハワードは今年1月にもケビン・ガーネット(当時ブルックリン・ネッツ/PF)ともめた際にヘッドバットを食らわされており、乱闘シーンに欠かせないキャラとして確立された感がある。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 ひと昔前の「乱闘王」といえば、メッタ・ワールド・ピース(旧名:ロン・アーテスト)を思い浮かべるファンも多いだろう。そんな彼の後継者というべき「新・乱闘王」を襲名しそうなのが、マイアミ・ヒートのハッサン・ホワイトサイド(C)だ。3月2日のフェニックス・サンズ戦ではアレックス・レン(C)にタックルをかまし、わずか数日後のボストン・セルティックス戦ではケリー・オリニク(C)にエルボーを見舞っている。ホワイトサイドの気性の荒さは、いまやリーグトップクラスだ。

 そんなに乱闘が好きなら格闘家に......と思っていたら今シーズン、本当に格闘家になってしまった選手がいた。それは、2003年にレブロン・ジェームズ(クリーブランド・キャブス/SF)に次ぐドラフト全体2位で指名された経歴を持つ、セルビア出身のダーコ・ミリチッチ(元デトロイト・ピストンズなど/C)だ。アメリカであまり活躍できなかったミリチッチは、2013年にひっそりとNBAから去り、昨年12月にキックボクサーとしてデビュー。格闘家として第2の人生を歩み始めている。

 とにもかくにも、全米中から注目を集めるNBA選手にはパンチやキックではなく、プレーでファンを熱くしてくれることを願うばかりだ。

【第4位】 通算1000勝達成。スパーズ率いるポポヴィッチHCの魅力

 2月9日のインディアナ・ペイサーズ戦に勝利したサンアントニオ・スパーズのグレッグ・ポポヴィッチHCが、NBA史上9人目の通算1000勝を達成した。試合後、「この1勝は特別な勝利か?」と聞かれたポポヴィッチHCは、「ノー。選手たちの功績」とだけ語った。

 ポポヴィッチHCのコメントが本音かどうかは、定かではない。だが、彼がヘッドコーチという立場でありながら、対戦相手のスカウティングをしないのは間違いない。ポポヴィッチHCは以前、「対戦相手の映像を見る理由がない」と語っている。「何も知らないままで試合に臨むのか?」とメディアから念を押されると、「二等辺三角形の二辺の長さが等しいことは知っている」と周囲を煙(けむ)に巻いた。

 ポポヴィッチHCには、こんな信念がある。

「相手チームを気にするより、自チームのことでやるべきことがいくらでもある。最高の形でプレーを組み立てる。誰よりも強い競争心を持つ。48分間、そのふたつをやり通すこと。それが勝てるチームだ」

 ポポヴィッチHCは昨年オフにスパーズと5年契約を交わしており、2018−2019シーズンまでチームを率いることになった。それも影響しているのか、「今シーズン限りで引退では?」と囁(ささや)かれていたティム・ダンカン(PF)は、来シーズンの現役続行を決断した。さらに、こちらも進退について注目されていたマヌ・ジノビリ(SG)も、「俺がいないとダンカンが寂しがる」と現役続行を宣言。また、クワイ・レナード(SF)やダニー・グリーン(SG)といった主力選手の再契約にもスパーズは成功している。

 しかもスパーズは、今オフのFA市場の目玉だったラマーカス・オルドリッジ(前ポートランド・トレイルブレイザーズ/PF)を獲得。さらにデビッド・ウェスト(PF)も、ペイサーズが提示した1260万ドル(約15億5000万円)の契約を蹴ってまでスパーズに移籍してきた。現在1022勝のポポヴィッチHCは、来シーズンも白星の山を積み重ねていくだろう。

【第3位】 元気なマイケル・ジョーダン、現役プレーヤーをディスる?

 今年2月で52歳となった、「バスケットボールの神様」マイケル・ジョーダン。現役を退き、すでに12年の歳月が過ぎるも、話題には事欠かない。今年3月にアメリカ経済誌『フォーブス』が発表した「2015年世界長者番付」には初めてランクインし、世界で1826人しかいない「ビリオネア(資産1200億円以上)」の仲間入りを果たした。

 ただ、ジョーダン絡みのニュースは、めでたい話題ばかりでもない。昨年11月には、バラク・オバマ大統領を相手にトラッシュトークを繰り広げてもいる。テレビ番組で「一緒にゴルフをするなら?」と聞かれたジョーダンは、「オバマとやってみてもいいかな。いや、やっぱりダメだ。オバマはヘタクソだ。一緒にプレーしたら日が暮れる」と毒舌を放った。

 しかし、それを聞いたオバマも反撃に出た。

「マイケルはホーネッツの運営にもっと精を出したほうがいいだろう」

 ジョーダンがシャーロット・ホーネッツ(当時:ボブキャッツ)を買収し、筆頭オーナーになったのは2010年。しかし、あれから5年が経つものの、ホーネッツの成績は芳(かんば)しくない。そんなジョーダンが6月にフランスを訪れた際、現地スポーツ紙のインタビューでポロッと本音(?)をこぼしてしまった。「今、ホーネッツの選手と1on1をやったら勝てるか?」と聞かれたジョーダンは、こう答えている。

「間違いなく勝てる。だが、彼らの自信を奪いたくないからやりたくない」

 その発言がオーナーとして優秀かどうかは別として、「もしかして本当に勝ってしまうかも......」と思わせてしまうのも、ジョーダンならではだ。

【第2位】 コービー・ブライアント、フィールドゴール失敗数で記録更新

 11月11日、コービー・ブライアントがメンフィス・グリズリーズ戦で1万3418本目となるシュートミスを記録し、フィールドゴール失敗数で歴代1位に躍り出た。新記録樹立について聞かれたコービーは、「知らなかった。ただ、積極的にプレーしなくちゃダメだ。批判も失敗も、気にするべきじゃない」と答えている。

 そして、その1ヶ月後の12月14日、今度はミネソタ・ティンバーウルブズとの一戦で通算3万2293点目を記録し、キャリア通算得点数でマイケル・ジョーダン(元ブルズなど)を追い抜き歴代3位に浮上した。ちなみに1位はカリーム・アブドゥル=ジャバー(元レイカーズなど)の3万8387得点で、2位はカール・マローン(元ユタ・ジャズ)の3万6928得点である。

 通算得点でジョーダンを抜いた翌日、コービーは『Zero』という題名のエッセーを発表した。その中でコービーは、「ゼロ......。12歳のときに参加したフィラデルフィアのソニーヒル・フューチャーリーグで、ひと夏を通じて俺が記録した得点だ」と語っている。そして、ジョーダンに対する尊敬と憧れが自分の中で確立されたのは、そのころだと。

 コービーは1日の練習で700本〜1000本ものシュートを放ち、30歳を過ぎてからはジャンクフードやスイーツを口にしなくなったという。あるスカウトが、「アレン・アイバーソン(元フィラデルフィア・76ersなど)はスポットライトの下でプレーすることを愛し、コービーはスポットライトが輝く前の練習を愛す」と語るほど、コービーは練習の虫だ。

 そんなコービーはシーズン中、「契約満了後、まだプレーを続けるかと聞くなら、今の答えは『NO』だ」と答えている。来シーズンは契約最終年。2015−2016シーズンがコービーのラストダンスとなると言われている。はたしてそのとき、コービーは何を語るのか――。来シーズンもコービーから目が離せない。

【第1位】 今季MVPのステファン・カリーを凌ぐ「真の勝者」は?

 今シーズンもっとも活躍した選手を挙げるとすれば、ステファン・カリーの名は外せないだろう。ゴールデンステート・ウォリアーズの球団史上最多レギュラーシーズン勝利(67勝)に貢献し、ファイナルではレブロン擁するキャブスに打ち勝ち、チームを40年ぶりの優勝に導いた。一方、自らは286本ものスリーポイントシュートを成功させてNBA記録を更新し、自身初のレギュラーシーズンMVPも獲得している。今シーズン、これほど「ナンバー1」の勲章を手にした男もいないだろう。

 そして、カリーが初めてナンバー1を獲得したモノが、もうひとつある。それは、ユニフォームの売り上げだ。2014−2015シーズンの累計では、レブロンが6年連続して売り上げ1位を記録した。ただ、プレーオフが始まった4月から6月の3ヶ月の売り上げでは、カリーがレブロンを逆転して初の売り上げナンバー1に輝いている。

 2009年、カリーがウォリアーズに入団した当初は、「身長も身体能力も足りない」「ケガが多い」「ディフェンスが下手」「足が遅い」と多くの酷評を受けた。そんな選手がたゆまぬ努力を続けた結果、ナンバー1の称号を手にしたのである。カリーを勝者と讃えることに、異論がある者はいないはずだ。

 しかし本当の「勝者」は、カリーと契約しているスポーツ用品メーカー『アンダーアーマー』なのかもしれない。金額こそ公表されていないものの、アンダーアーマーは2013年の秋にカリーと契約。その後、わずか2シーズンでカリーは瞬く間にスーパースターへの階段を駆け上がっていった。それまで契約していたナイキは、きっと舌打ちをしているはずだ。今シーズンもっとも笑った「勝者」は、絶好のタイミングで契約を勝ち取ったアンダーアーマーなような気がしてならない......。

水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro
photo by AFLO