プロレスブームは一過性か?『Number』が14年ぶりプロレス特集【編集長インタビュー】
 プロレスの躍進が止まらない。昨年秋頃から、テレビ、新聞、雑誌、ネット、あらゆるメディアがこぞってプロレスブームを取り上げてきた。そしてついに、雑誌『Sports Graphic Number』が14年ぶりにプロレスを特集する。日本におけるスポーツ誌の権威がプロレスに乗り出すというセンセーショナルな出来事。その背景について、『Number』編集長・松井一晃氏に話を聞いた。

――まず、新日本プロレスを特集することになった経緯を教えていただけますか?

企画会議で、「プロレスが熱い」という声が何人かから上がったんです。同じ頃、「スポーツ経営論」というコーナーに新日本プロレスの親会社・ブシロードの木谷高明社長に出てもらおうという話もあり、後楽園ホールに試合を観に行きました。そうしたらお客さんは満員で、女性がキャーキャー歓声を上げている。これは何かあるな、ということで特集を組むことになりました。

――ファン投票で表紙を決める「新日本プロレス総選挙」の反響はいかがでしたか?

5月28日からスタートして、6月25日の締め切りまでに約2万6000票。約1万1000人の方に投票していただきました。新日本プロレスを応援している方たちに今回の特集を知ってもらうための総選挙だったので、この反響はもの凄く嬉しかったです。『Number』でプロレス特集をやるということを喜んでくださる方が思いのほか多くて、やって良かったと思いました。

――上位1位から7位までの選手のインタビューが掲載されるということですが、どのような内容でしょうか?

中間発表は、1位が中邑真輔選手、2位が棚橋弘至選手、3位がオカダ・カズチカ選手でした。この順位を見て進めたのですが、棚橋選手は何位になろうと「2015年の棚橋弘至」というタイトルで柳澤健さんに書いてもらおうと決めていました。力道山から始まるプロレスの歴史の中で、棚橋がやったことはどういうことか。新日本プロレス不遇の時代から今に至るまで、会社を支えて尽くしてきた棚橋が、“レスラー棚橋”としてこれからなにを目指していくのか、というテーマです。

中邑選手は、デビュー当時のストロングスタイルから現在のセクシーな“くねくね”への変遷を、周りの人の証言から読み解きます。アーティスト然とした雰囲気だけでお客さんを惹きつけるレスラーは異色ですよね。アーティスト・プロレスラーはなぜ出来上がったのか?というテーマです。オカダ選手は、ドロップキックなどの高度な技の数々や、身長が高く、陸上経験もある、といったアスリート的な面を探る内容です。

――今回の特集のきっかけとして、後楽園ホールの盛り上がりを見て「何かある」と思われたとのことですが、誌面作りを通して、その“何か”は見えましたか?

この四半世紀で、世の中の人のプロレスに対する見方がガラリと変わったなか、レスラーは肉体表現でお客さんを喜ばせるプロフェッショナルだと改めて感じました。もちろんパワフルに体を使って、痛い思いをして汗をかいて試合を見せているんですが、お客さんを興奮させてナンボだということを理解している人たちだなと。もしかしたらフィギュアスケーターと近いのかもしれません。

――「プロレスブームは一過性」と不安視する声もありますが、編集長から見ていかがですか?

昔、ゴールデンタイムでプロレスが放送されていた頃のブームと違って、今はブームと言っても地上波ですぐ見られるわけではないんですよね。しかも、一度も生でプロレスを見たことがないという人がまだかなりの数いるはずなので、すぐには終わらないブームなのではないかと思います。

今、CDは昔ほど売れない一方、コンサートのチケットは1万円でも売れる時代です。生で自分が体験するということにはお金を出すわけです。プロレスがこれだけ話題になっていると、やはり一度、生で見てみたいと思うんですよ。一回行って面白かったら、もう一回行ってみよう、となるコンテンツだと思います。ライブで体験することが尊いとされる時代に、プロレスはフィットしているような気がします。

 最後に、これからもプロレスを取り上げますか? という質問に、「ここまでNumberに期待してくださるなら」と前向きな様子だった。野球やサッカーと並んで、プロレスが日本のスポーツ界の柱の一つとなる日はそう遠くないのかもしれない。

※『Sports Graphic Number』 新日本プロレス特集号・7月16日(木)発売。

<取材・文・撮影/尾崎ムギ子>