3位決定戦でPK一番手志願…ユニバ男子の呉屋大翔、エースの矜持

写真拡大

文=川端暁彦

 3位決定戦のPK戦。一番手のキッカーとしてその男がペナルティスポットを目指したとき、「えっ!?」と思ったのは筆者だけではなかった。呉屋大翔。ユニバーシアード日本代表のエースと期待されながら、本大会5試合無得点に終わった男が、そこにいた。

「ずっと点が取れなくて、今日の試合でも取れなくて、イライラもしたし、本当に苦しかった。でも神川さん(神川明彦監督)は『俺はお前を信頼している。最後の銅メダルはお前が決めて獲ってくれ』と言ってくれて、今日も先発で使ってくれた」

 立ち上がりから意欲を感じさせるプレーぶりではあった。ただ、今大会を通じて言えることながら、意欲と力みは紙一重。すべてをかけて臨んだユニバ代表最後の試合でも、スコアボードに呉屋の名前が表示されることはなかった。

 ブラジルを最後まで攻め切れず、0−0で迎えたPK戦。神川監督はキッカーを過去のデータに基づいて指名した準決勝と異なり、「蹴りたいヤツに蹴らせる」方針に切り替えた。立候補を募ると、真っ先に手を挙げたのが呉屋だった。

「せめてPKくらいは決めたい」

 シンプルな思いではあったが、「PKは得意じゃない」と本人が笑うように、決してPK職人タイプのストライカーではない。同じ関西勢として何度も対戦している須佐徹太郎団長(阪南大監督)も「呉屋はよく外しているから」と一番手のキッカーとして呉屋が出てきたときに驚愕した一人である。それでも、いの一番に名乗り出た。

「今までのどのPK よりも緊張した」

 相手の一番手が成功していただけに、より難しいキックだったのは想像に難くない。助走からのインパクトは「ちょっとミスキックだった」という少々ヘッポコなもの。GKのほぼ正面へ飛んだが、しかしゴールネットはしっかりゆれた。ユニバ代表としての最後の仕事を果たしたエースは「入れたいという気持ちが通じたのかな」と苦笑いとともに振り返った。

 この一発が後に続くキッカーの心理的負担をなくしたのは想像に難くない。日本は7番手まで全員が成功。PK戦7−6というスコアでブラジルを下し、銅メダルを手にした。

「神川さんには本当にアホみたいに怒られたし、自由にプレーできないような感覚になったときもあった。でも戦うところ、ハードワークの大切さ、ゴールを目指してプレーすること。いろいろなことを、すごくインパクトのあることを教わることができた」

 PK成功はユニバ代表でできる最後の恩返しとなった。ただ、最大の恩返しはこのあとでもできる。「ユニバ代表からJや代表で通じる選手を」と願った神川監督に報いる最もシンプルな方法は、来年から始まるプロ生活の中で結果を出していくことにほかならない。