■2014−2015シーズン10大ニュース@前編

 ゴールデンステート・ウォリアーズが40年ぶりにファイナルを制して幕を降ろした2014−2015シーズンのNBA。そのような大きな出来事だけでなく、ちょっと話題になったプチニュースも今シーズンは多かった。そこで今回は、NBAファンを楽しませてくれた「B級ニュース」を振り返ってみよう。

【第10位】 レブロン・ジェームズ・ジュニアは何年後のドラフト1位?

 ファイナル開催中に話題となったのが、クリーブランド・キャバリアーズのレブロン・ジェームズ(SF)と、ゴールデンステート・ウォリアーズのステファン・カリー(PG)が、なんと同じ病院で生まれていたという新事実だ。その病院とは、オハイオ州北東部にある「アクロン・ジェネラル・メディカルセンター」。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 そのことについて、会見でメディアから質問されたカリーは、「その後もあの病院から才能を持った子どもが生まれているんじゃない?」とレブロンに話したという。さらにカリーは、「ひょっとしたら、今ごろスカウトが勧誘用の手紙を出すために病院に集まっているかもね」とジョークを飛ばし、会見を笑いで包んだ。しかし、スカウティングの対象が低年齢化する昨今、あながちジョークでは済まない話なのかもしれない。

 レブロン・ジェームズの息子は、現在10歳。そのジュニアについてレブロンは、「コートビジョンが素晴らしく、小さいころの俺とそっくりだ」と太鼓判を押す。実際、ジュニアのハイライトシーンが動画サイトにアップされると、再生回数は2日間で400万回を超えるほどの人気を博した。さらに、すでに複数の大学から声がかかっていることを、レブロン自身が告白している。

 ジュニアが順調に成長していくと、現行制度なら最速で2024年のドラフトに登場する可能性がある。そのとき、ジュニアは何位で呼ばれることになるのか。また、そのときレブロンは39歳。親子が同じコートに立つ可能性はあるのだろうか?

【第9位】 ジョーイ・ドーシーにお願い「頼むからアンダーハンドに変えて!」

 今シーズンのヒューストン・ロケッツは、レギュラーシーズンでのフリースロー成功率が71.5%でリーグ30チーム中、下から4番目という惨たんたるもの。特に、インサイドの要(かなめ)であるドワイト・ハワード(C)のフリースロー成功率は52.8%と、自身のフィールドゴール成功率(59.3%)よりも悪かった。結果、故意にハワードへファウルを仕掛け、フリースローを打たせる「ハック・ア・ハワード(※)」という戦術が対戦チームの常套手段となっていた。

※ハック(Hack)=ボールを持っている選手の腕をはたく反則。

 そこでロケッツはたまらずハワードをベンチに下げると、控えのジョーイ・ドーシー(C)を投入。しかし、ドーシーはハワード以上にフリースローが下手だった......。ドーシーがレギュラーシーズンで放ったフリースロー数は83本。ただし、成功したのはわずか24本で、フリースロー成功率は28.9%。これは、今季レギュラーシーズンMVPのステファン・カリーがマークしたスリーポイントシュート成功率44.3%を、はるかに下回る数字である。

 そんな状況に嘆くロケッツファンは、プレーオフ開幕を目前に控えた4月13日、オンライン署名サイト『Change.org』でチーム宛に嘆願書の署名を募り始めた。その中身は、「ドーシーがアンダーハンドでシュートを打てば、フリースロー成功率は上昇するはず。少なくとも、今より悪くなることはあり得ない。この嘆願書に署名してドーシーにフォーム変更をうながし、ロケッツをサポートしましょう」というもの。すると、この募集に18時間で258件の署名が寄せられた。

 結局、ドーシーのフォームが変更されることはなかったが、プレーオフに入って2本のフリースローを放ち、1本を決めている。つまり、成功率は50%だった。

【第8位】 躍進ホークスの基礎を築いたダニー・フェリーがチームを去る

 開幕直後から勝利を積み重ね、NBAに旋風を巻き起こしたアトランタ・ホークス。前年度イースタン8位に過ぎなかったチームが、今シーズンは1月に月間歴代記録となる17勝0敗を達成し、NBAファンを大いに驚かせた。さらにオールスターには、ジェフ・ティーグ(PG)、カイル・コーバー(SG)、デマール・キャロル(SF)、ポール・ミルサップ(PF)、アル・ホーフォード(C)と、スターター5人が全員出場。球団史上初の年間60勝(22敗)も達成し、マイク・ビューデンホルツァーHCはコーチ・オブ・ザ・イヤーを受賞した。

 快挙の数々に、誰もが「ホークスの未来は来シーズン以降も明るい」と思っていた。そんな矢先、6月22日にダニー・フェリーGMの辞任が発表されたのである。現役時代、フェリーはサンアントニオ・スパーズで優勝(2003年)を経験し、引退後の2012年にホークスのGMに就任。しかし昨年オフ、ルオル・デン(マイアミ・ヒート/SF)に対して人種差別発言をした疑惑を持たれ、無期限の休職扱いとなっていた。その後に調査した結果、フェリーの発言が人種的偏見によるものでないと結論づけられたものの、「責任を取りたい」とフェリーは自ら職を辞すこととなった。

 ミルサップやキャロルなどを格安で獲得し、ビューデンホルツァーをHCに採用。ホークス躍進の土台を作ったのがフェリーであることは間違いない。フェリーがチームを去ることで、ホークスの明るいはずだった未来は一転、不透明なものとなった。今オフのFA戦線においても、ミルサップとの再契約には成功したものの、キャロルはトロント・ラプターズへと移籍した。ホークスはイースタンの強豪に定着できるか、それとも1年だけの輝きに終わってしまうのか? フェリーなき来シーズンが試金石となる。

【第7位】 ドウェイン・ウェイドが90歳と「1on1」に挑んだワケ

 昨年10月、「あなたと1on1がしたい!」と、ドウェイン・ウェイド(マイアミ・ヒート/SG)宛の挑戦状が動画サイトにアップされた。送り主は、ウェイドの熱狂的ファン――90歳の誕生日を迎えた「ネリーおばあちゃん」ことイルミナダ・マゴトトだ。

 すると、この動画の存在がウェイドの目にとまり、ふたりは本当に対面することに。1on1こそやらなかったが、一緒にシューティングをしたり、ネリーおばあちゃんのパスをウェイドがアリウープするなど、楽しい時間をふたりで過ごし、ネリーおばあちゃんは「夢が叶いました」と満面の笑みを浮かべた。

 この日、ウェイドはインスタグラムに「素敵な女性と出会う機会があった。彼女との出会いにより、僕の人生はバスケットボール以上のものだということが改めてわかった」と記している。そして翌日、ウェイドはヒューストン・ロケッツとのプレシーズンゲームのコートサイドに、ネリーおばあちゃんを招待。試合開始直前、選手紹介が終わるとウェイドはネリーおばあちゃんに駆け寄り、優しく抱擁した。

 ロケッツとの試合は、ウェイドが26得点を挙げる活躍を見せ、90対85でヒートが快勝。ネリーおばあちゃんの年齢と同じ数の得点を奪い、勝利をプレゼントした。

【第6位】 J・R・スミス、「新デニス・ロッドマン」を襲名?

 シーズン開幕直前の昨年10月15日、デニス・ロッドマン(元シカゴ・ブルズなど)がニューヨーク・ニックスに向けて、ツイッターでつぶやいた。

「新シーズンを迎える『禅マスター』のフィル・ジャクソンとニックスに愛を送る。新デニス・ロッドマンであるJ・R・スミスの健闘を祈る」

 言わずと知れた悪童ロッドマンは現役時代、審判に頭突きを食らわし、カメラマンの股間を蹴り上げ、コート外でもスピード違反で検挙され、女性に暴力を振るって逮捕されるなど、バラエティに富んだ過去を持つ。同様にJ・R・スミス(SG)も、試合中に相手選手の靴ひもをほどく悪行は序の口で、対戦相手の股間を殴ったかと思えば、大乱闘までも巻き起こしたことがある。コート外でもナイトクラブで暴行事件に絡んだり、危険運転で事故を起こして同乗者を死亡させたり、さらにはマリファナ所持で逮捕されたこともある。

「スミスの更生は可能か?」とインタビューで聞かれたニックス球団社長のフィル・ジャクソンは、「わからない。スミスはロッドマンのように、かなりズレた性格をしている」と答えている。その言葉を聞いたスミスは、反省の色を見せるどころか、「ロッドマンとともに語られるのは光栄だ!」と驚喜していた。

 しかし、スミスはシーズン中にニックスからキャブスにトレードされると、レブロンには頭が上がらなかったのか、「チームのためにプレーするだけ!」と完全に更生。今のところは問題を起こしておらず、『新デニス・ロッドマン』の看板を自ら下ろしている状態だ。

 ちなみに、文頭のロッドマンのツイートに、「ロッドマンとスミスは、プレーはまったく別。同じなのは、マリファナ中毒なところだけ」という返信が送られたときの、ロッドマンの返答がイカしていた。

「俺はマリファナを吸わない。違法ドラッグもやらない。ただ俺は、自分の人生に酔っている」

(後編に続く)

水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro