宮沢英樹さん

「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」が7月11日より開催されます(7月11日〜17日シネマート新宿・7月17日〜20日スパイラルホール)。今年で24回目を迎えたセクシュアル・マイノリティを題材とした映画を上映する映画祭です。

最近でこそ、「LGBT」という言葉がよく聞かれるようになりましたが、まだまだ自分のセクシュアリティについて語ることがはばかられる日本で、この映画祭はセクシュアル・マイノリティの方たちにとってどのような場になっているのか……。24回という回を重ねての映画祭の変化は……など、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭の運営委員会の代表を務める宮沢英樹さんに伺ってきました。

セクシュアル・マイノリティのことを気にせずいられる映画祭

――映画祭の運営に関わっていてどうですか? 今年24回ということはもう24年やっているわけですが、変化は感じますか?

宮沢:僕が代表になったのは10回からですが、前代表などから話を聞くと、第1回目は会議室で始まった映画祭だったのです。でも当時は自分が同性愛者であることを知られたらまずいという思いと、でもこのままではいけない、ちゃんとセクシュアル・マイノリティの存在を発信していかないと……という葛藤があったようです。カミングアウトしたいけど、生活も守りたいという思いが今より強かったと思いますね。

でも僕が初めてこの映画祭を見に行ったとき、こんなにたくさんの人が集まるんだという驚きと、ここにいるときはセクシュアル・マイノリティのことを気にせずに参加できるんだというのが、とても新鮮でした。お客さんの中には、この映画祭を見に来たことがバレたら困る人もいるんですよ。誰かに見られたらどうしよう……と気にする人もいて。でも徐々に、カップルで見に来たり、他の映画祭と同じノリで見に来たりする人も増えてきました。ボランティアスタッフの中には、あっさりカミングアウトする人もいて「凄いな」と僕が驚くこともあります。

――別にセクシュアル・マイノリティじゃないと来ちゃいけない映画祭ってわけじゃないですものね。

宮沢:そうなんですよ。でもときどき「同性愛者じゃないのですが、見に行っても大丈夫でしょうか」という問い合わせがあります(笑)。どんどん見に来てください! この映画祭の良さは、セクシュアル・マイノリティの映画を自身のセクシュアリティ関係なく一緒に見られることです。セクシュアリティが違っても共通の目的を持って、その場を楽しむことができるのが魅力なので。

スポンサー問題、日本社会はLGBTに厳しい

――ボランティアスタッフは、お互いにセクシュアリティについて言わなくてもいいのですか?

宮沢:そういうことはあえて聞いたりしませんね。セクシュアル・マイノリティもいろいろありますから、レズビアンやゲイだけではないし。それにゲイだと思っていた人が結婚してビックリなんてこともありましたから(笑)。ボランティアにはヘテロセクシュアル(異性愛)の人もいますし、お客さんにも多いですよ。

――スポンサーは宮沢さんが代表になったばかりの頃より増えましたか?

宮沢:よくはなっていると思いますけど、まだまだ厳しいのも確かです。この映画祭の収入は純粋にチケットの売り上げによる収入だけなので、協賛してくださるスポンサーがいることはありがたいことなのです。外資系企業のほうがセクシュアル・マイノリティへの理解があるかもしれません。

スパークリングワインのフレシネさんは初期からスポンサーについてくださっていますし、最近はソフトバンクさんが協賛企業に入ってくださいましたね。最近はこちらから働きかけなくても先方から協力したいとご連絡いただくことがあり、だいぶ増えてきましたが、営業かけて断られることも多く、まだまだ日本社会は厳しいなというのが現実です。

『夜間飛行』競争社会に生きる10代の孤独を描く韓国映画。上映日時:7月18日(土)13:55、7月19日(日)20:25

時代の変化とともに作品のバラエティも豊富に

――映画祭の作品についてですが、このプログラムはどのように決まっていくのですか?また24年の間に映画祭で上映されるLGBT の映画はだいぶ変わってきましたか?

宮沢:だいたい世界の映画祭の出品作を見て、決めていく感じですね。ベルリン映画祭から始まって、いろいろと候補をあげて選別していきます。監督さんから売り込みがあって決まる場合もあるんですよ。作品は多彩になってきましたね。かつてLGBT 関連の映画は悲恋でバットエンディングが多かったんですよ。でも最近は、家族の問題や介護、結婚、離婚などをテーマにした作品も増えました。あと、ここ数年は同性婚の法案がテーマの作品が目立ったけど、法案が通ったこともあり、子育て、教育など、作品の幅が広がっていくのではないかと思います。

世界的な傾向として一番多いのはゲイ映画なのですが、レズビアンやトランスジェンダーがテーマの映画もあり、その内容も簡単にカテゴライズできないようないろんな作品が増えていて、本当に変わってきました。

――今後の展開として、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭がこうなったらいいというのはありますか?

宮沢:来場者アンケートを見ると、皆さん本当に楽しんでくださっているのがわかるんです。常連さんも多いですし、ヘテロセクシュアルの女性も多く来場されていて、いい方向へと進んでいると思います。いろんなセクシュアリティの人が楽しめる映画祭になってほしいですね。映画を見て笑ったり泣いたり、同じ時間、空間を共有してほしい。なかなかセクシュアル・マイノリティが集まれる場所ってないのですが、せめてこの映画祭だけでもセクシュアリティ関係なく、みんなで映画を楽しんでほしいし、そういう環境を維持するためにもこの映画祭は続けていきたいですね。

できれば海外の映画祭のように1か月くらい長期でできたらいいなあと。監督週間とかレトロスペクティブとして過去上映した作品を再上映したり、会場となっている青山のスパイラルホールの通りに映画祭のレインボーカラーのフラッグをズラっとはためかせたり、地域の皆さんで盛り上がれたらいいですね。

『クセニア』アルバニア人兄弟のロードムービー。上映日時:7月19日(日)13:30、7月20日(月・祝)19:20

第24回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭公式サイト

(斎藤香)