TOYOTA「i-ROAD」に乗ったら「移動の未来」が見えてきた #WXD

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「WXD(ワイアード・バイ・デザイン)」一連のワークショップのひとつである、「i-ROAD」試乗会&トークセッションが、普段は一般公開されていないTOYOTAのデザイン開発拠点で行われた。TOYOTAが「i-ROAD」で描くモビリティの未来に対して、参加者たちはどんな未来を感じたのか。トークセッションの内容とともに、イヴェントを振り返る。

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八王子の街の喧騒を離れ、木立の中に続く坂道を抜けると、小高い丘の上に「トヨタ東京デザイン研究所」の門が現れる。

エントランスにモーターショー出品モデルが並ぶここは、東京地区におけるTOYOTAのデザイン開発の要となる場所だ。当然、普段は一般人の立ち入りは禁止されている。

「WXD(ワイアード・バイ・デザイン)」のワークショップのひとつである「i-ROAD」試乗会&トークセッションは、そんなデザイン開発の拠点で行われた。

TOYOTAは、都市型パーソナルモビリティ「i-ROAD」と、オープンイノヴェイション・プロジェクト「OPEN ROAD PROJECT」を通して、都市の移動をゼロからデザインしている。

今回のイヴェントは、「未来プロジェクト室」室長の大塚友美によるプロジェクト全体のプレゼンテーションからスタート。次いで、チーフエンジニアとしてプロジェクトに関わる「スポーツ車両統括部」谷中壯弘が、普段は見ることのできない詳細な資料とともに、知られざる開発時のエピソードを紹介した。

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プロジェクトの解説を終え、試乗会が始まる。すると、ほぼ全員が初めて操るというのに、皆、この「移動デヴァイス」を難なく乗りこなしている。初めて乗ったi-ROADの乗り心地に対しては、「モーターボートのよう」など、スポーティさを感じたという声が多かった。参加者のなかで唯一ペーパードライヴァーだという女性も、ゆっくりとしたスピードではあるものの、新感覚のドライヴを十分に堪能したようだ。

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試乗後に行われたトークセッションでは、若林がファシリテーターとなり、参加者一人ひとりから寄せられたi-ROADに対するコメントに、大塚と谷中が答えるかたちで進行。これは、未来プロジェクト室が立ち上げた「都市における理想のモビリティを実現するために、みんなでアイデアを出し合い、さまざまな観点からポテンシャルを探っていく」という、『OPEN ROAD PROJECT』のポリシーにも通じる。

このトークセッションでは、都市における移動に対するイノヴェイションのヒントも見えてきた。そのなかからいくつかをピックアップして紹介する。




大塚友美|YUMI OTSUKA
トヨタ自動車株式会社 商品・事業企画部 未来プロジェクト室。1992年トヨタ自動車株式会社入社。国内向け商品企画、ダイヴァーシティプロジェクトなどの人事施策の企画、海外向け車両の価格・収益マネジメントなど、幅広い分野を経験。現在はクルマづくりの上流部署である商品・事業企画部 未来プロジェクト室にて10年、20年先をターゲットとした未来のクルマのコンセプト企画を担当。

広がり続けるシェアリング

「『i-ROAD』を月額制でタクシー代わりに活用するかたちもあるのでは? シェアの仕組みがつくりあげられるような、都市のモビリティの変化を感じた。個人で所有するというよりも、インフラとして機能するのではないか」

参加者からの声でもっとも多かったのが、「シェアリング」に対する意見だった。未来プロジェクト室でも、都市部のデッドスペースを活用したシェアパーキングや家庭用電源の活用などを念頭に置いて開発を進めているだけに、この反応は当然なのかもしれない。

現在も自家用車を所有しておらず、今後もカーシェアリングを活用するという参加者のコメントを踏まえ、若林が自動車メーカーの今後について水を向けると、大塚は「自由に移動することが大事。人が歩くことも大事だと思っているので、どんなやり方であろうと〈自由に移動できること〉をいかに担保するかを考える会社になればいいですね。メーカーとしてだけではなく、移動に関わるサーヴィスをやっていきたいという気持ちがある」と語った。

また、「30年後、40年後のクルマの未来を考えたとき、TOYOTA社内で〈こういう方向を目指そう〉といった共通見解があるのか」との問いかけに、谷中は次のように答えた。

「モビリティの本質ってなんだろうと考えてみると、やっぱり〈乗っていて楽しい〉っていう気分は必要ですよね。ネットが発達したことで、情報を得られるようになったけれど、リアルに物事を感じたり誰かに出会ったりということは、動かないと始まらない部分もあります。その機会を増やすために、移動による負荷を下げながら何ができるかというのが、モビリティに携わる人たちが共通して考えるべきことです」

駐車という概念すらもなくなる

トークセッションのなかでも特に議論を盛り上げたのが、あえて駐車せずに走り続けるというアイデアだ。

「都内は駐車場代が高い。ならば、ゆっくりでもいいから、ずっと走り続ければいい。『i-ROAD』が、どこでも拾えて乗り捨ても可能な、『Uber』とクラウドの複合体のような存在になる、というアイデアはどうだろう」

これに対して、若林も「3時間くらい走ったままで、その間に企画書を1本書き上げる、などというシェアオフィスのような使いかたもできるかも」とコメント。さらには、都市部をメリーゴーラウンドのようにグルグルと走り続ける「i-ROAD」のなかから、空車状況や行き先などによって車両をアプリで探すといったアイデアも生まれていく。



谷中壯弘|AKIHIRO YANAKA
トヨタ自動車株式会社 スポーツ車両統括部 GM・主査、製品企画本部 製品企画室 主査(兼務)、IT・ITS企画部 主査(兼務)。1993年トヨタ自動車株式会社入社。シャシー部品設計、走行制御システム開発など開発実務の後、新コンセプト車両企画や都市交通システムの調査・企画に従事。さらにこれを具現化する数多くのコンセプトカーやプロジェクトを開発・推進。なかでもi-シリーズと呼ばれる歴代のパーソナルモビリティに初期から携わり、現在はi-ROADの開発責任者。

ユーザーによるカスタマイズの可能性

シェアリングと同じくらい多くの意見が出たのは、レジャー利用に関するものだった。自然豊かな場所を走りたいといった意見から、スポーティな走りをレースで活用したいという声も多く上がる。

これに対して谷中は、「『i-ROAD』の動きをもっと機敏にする、などといったカスタマイズは、実は、ソフトウェアを変えることで容易にできる」のだと言う。「限られたエリアで、かつ安全性を最低限確保して、という前提の上での話ですが、ユーザー自身がチューニングしてレースができたら面白いかもしれません」

「i-ROAD」では実際に、エクステリア部分におけるカスタマイズについては、3Dプリンターを活用したアイデアの実現を視野に入れているのだという。

参加者のなかのひとり、自転車関係の事業を手がけるスタートアップに関わっているという男性は、視認性についての質問を投げかけた。

「ボディは大きいのにライトが1個しかないのは、歩行者から認識しづらいのではないか。もっと存在感を視認できるようにする仕様もありえたのではないか?」

これに対して、谷中は次のように答えた。

「〈被視認性〉の重要性は、わたしたちも十分に意識していています。ただ、実際に公道を走らせるとなるとさまざまな法規制があることも事実。テールランプをボディ上部の角につけることにより、できるだけ高い位置で光らせ、さまざまな大きさのクルマのなかでも見つけてもらいやすくするなど、現法規が許す自由度のなかで開発しています。これは完成形ではなく、まだまだ途中経過。今後も、『OPEN ROAD PROJECT』を通して、より快適な移動デヴァイスを目指します」

i-ROADという〈デヴァイス〉は、あたらしい活用方法はもちろんのこと、ユーザーの運転マナーや移動に関する問題意識を“オープンな場にさらす”のだ。現状では実装できないアイデアも、本質的に良いことであれば、規制自体を変えるかもしれない。この日、この場所での経験は、そうしたオープンな存在がモビリティ全体に対する新しい視座を生み出すきっかけとなることを知る一日だった。