老後資金の形成に最も有利な制度のひとつである確定拠出年金(以下DC)を大幅に改正する法律案がこの春、国会に提出された。成立すれば、公的年金に加入するすべての人が利用できる制度になる。

 確定拠出年金には個人が自分で加入する「個人型」と、会社単位で加入する「企業型」があり、今回対象者が拡大されるのは個人型だ。これまでは自営業者など(第1号被保険者)と、勤務先に企業年金のない会社員が対象だったが、これが公務員と専業主婦(主夫、第3号被保険者)、勤め先に企業年金がある会社員にも門戸が広がることになる。

 個人型DCに加入する場合、自分自身で金融機関を選んでDC専用の口座を開く必要がある。金融機関はDCの宣伝には力を入れていないため、自分でインターネット検索したり資料を請求するなど、能動的に情報を取りに行かなければならない。

 金融機関の一覧は、国民年金基金連合会が運営する個人型確定拠出年金のサイト(www.npfa.or.jp/401K/)で確認でき、都市銀行や地方銀行、証券会社やDCの専業会社などで口座を作ることが可能だ。金融機関を後から変更するのは不可能ではないが、いったんすべての資産を現金化する必要があるなど手続きは非常に面倒なので、生涯利用する覚悟で慎重に選んでおきたい。

 金融機関選びのポイントは、第一に商品ラインナップだ。投資できる商品は主に投資信託になるが、その種類や数は金融機関によって異なる。まずはどんな商品に投資したいかを明確にして、希望にあった商品が用意されている金融機関を選ぶのがいいだろう。

 商品選びではDC口座でどの資産クラスに投資したいかがカギとなるが、この場合はすでに証券口座やNISA口座で保有している資産を含めてポートフォリオを考えたい。DCの口座内で分散投資ができている必要はなく、他の口座で保有する資産全体で分散するのが重要だ。

 運用益が非課税で、なおかつ投資期間が長いDCのメリットを生かすなら、新興国株など最もリスクが高い商品に絞って投資するのもいいだろう。投資信託商品なら信託報酬が差し引かれるが、DCは運用期間が長いのでランニングコストの違いは成果に少なからぬ影響を及ぼすので必ずチェックしたい。

 金融機関選びの第二のポイントは、手数料だ。DCには加入時に2777円、さらに毎月の掛け金から103円の事務費が差し引かれるほか、さらに金融機関が独自に徴収する運営管理手数料などがある。これは年間で3000円から7000円程度が主流だが、SBI証券やスルガ銀行では資産が50万円以上になると無料になる。ラインナップが合えば、有利だろう。

 今回の改正では対象者の拡大のほか、会社員の場合、確定給付企業年金や中小企業退職金共済といった異なる企業年金制度の間での持ち運びが可能になり、転職しても老後の備えを続けやすくなる。また、掛金も従来のような月単位ではなく年単位になるため、ボーナスを利用した年払いも可能になるなど使い勝手が向上する。法案が成立すれば、新制度は2017年1月から適用となる見込みだ。

 子どもの教育費や住宅ローンも背負う現役世代にとって、老後資金の準備は容易なことではない。だからこそ、こうした税制面で優遇のある制度を上手に利用して積み立てを続け、豊かなセカンドライフを実現してほしい。

■文/森田悦子(ファイナンシャルプランナー、ライター)

※マネーポスト2015年夏号