PET(陽電子放出断層撮影)という検査法がある。放射性薬剤を体内に入れ、放出される放射線を特殊なカメラで画像化する方法だ。がん検診のイメージが強いが、薬剤の性質次第で様々な疾患をあぶり出せる。近年はアルツハイマー型認知症(AD)の早期発見にも応用されている。

 AD用のPETの名称は「アミロイドPET」。AD発症に先立ち脳内に蓄積されるアミロイドという異常なタンパク質がターゲットだ。臨床研究段階だが、全世界で約100施設、日本国内では20施設で稼働中だ。

 先日、オランダの研究グループから2004〜15年のアミロイドPETに関する研究結果が報告された。これによると、ADと診断された患者で、ADに関連する特定の遺伝子変異を持つ人は50歳時点のアミロイドPET陽性率が97%、90歳時点で90%だった。一方、遺伝子変異を持たないAD患者の陽性率は50歳時点で86%と高率だったが、90歳時点では68%と、加齢とともに大きく低下することが判明している。

 逆に非ADの人は、アミロイドPET陽性率が加齢とともに上昇することも認められた。AD以外の認知症のタイプ──たとえば血管性認知症でも加齢とともに陽性率が上昇。血管性認知症の場合、AD関連の遺伝子変異を有する人では、60歳時点の陽性率が19%、80歳時点で64%、変異がない人では7%から29%に上昇した。研究者は「アミロイドPETは若年性ADの診断と認知症のタイプ分け診断に有用」としている。

 日本でアミロイドPETの認知度が低い背景には、認知症の早期診断、つまり患者家族への「告知」を巡る議論がある。ADの根本的な治療法がない現在、自覚症状がない時期に「AD予備軍だ」と告知することへの倫理的な是非に結論が出ていないのだ。

 一方、国立長寿医療研究センターの調査からは、認知症になった場合、告知を望む人は8割以上で若年者ほど希望者が多いこともわかっている。覚悟を決めて「その日」に備える胆力があるかどうか。最新の検査を受ける前に自問自答する必要がありそうだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)