なでしこが陥った“罠” 序盤の連続失点を生んだ慢心と読み違い

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 なでしこジャパンの2連覇は叶わなかった。それどころか、前半3分の失点を皮切りに前半だけで4失点。2点は返したものの、後半にも1失点し、最終的には2-5で敗れた。アメリカとの実力差をあらためて突き付けられる結果だった。

 それでも、進まぬ世代交代、厳しい強化日程など、苦しい状況を乗り越えての準優勝は称えられるべきだ。佐々木則夫監督は選手たちに「胸を張って帰ろう」と言い聞かせた。試合後のミックスゾーン。選手たちは「ノリさんにそうは言われたけど、でも……」と、口を開けば涙が出てくるような状態だった。ただただ悔しい気持ちがストレートに伝わってきた。

 称えられる結果であり、良く戦ったという印象を与えてくれた。ひたむきな走りには胸を熱くしたし、技術力には舌を巻いた。それでも、この敗戦には大きな理由があると思う。これだけ懸命で手を抜かない彼女たちに申し訳ないが、やはり慢心と読み違いがあったと思う。

 決勝前日会見でのこと。主将のMF宮間あやは「ポイントは先制点かなと思っています。今大会、先制点を取り続けているので、そこで自分たちのリズムにできればいいかなと思います」と話した。

 先制点を取り、試合の主導権を握り、自分たちがボールを回す。つまり、力でまさるチームの戦い方を口にした。だが、格下の相手を圧倒できず、イングランド相手には技術の差がありながら、まったく主導権を握れなかった。そんなこれまでの勝ち上がり方を見ても、その戦いは難しい。

 むしろ耐えて耐えてワンチャンスを狙う。1失点、もしくは2失点くらいであれば、強い精神力で耐え切り、最後の最後までセットプレーやハプニング込みでのチャンスを狙う。それくらいの戦いになることは、例えばアメリカ対ドイツの準決勝を見ても想像がついたはずだ。

 ただ、そういう雰囲気にならなかったのは、チームが良く言えば“いけいけ”状態だったのだろう。4年前の若さと勢いはないが、成熟し、試合巧者になった彼女たちが、連係と意思疎通の良さがあるからこそ陥った罠だったのではないか。

 また、立ち上がりのCKは完全に研究されていた。動きだけでなく、グラウンダーのボールを入れてくるのは、高さがコンプレックスの日本の裏を完全に突いた形だ。佐々木監督は言う。

「(相手の)セットプレーは、研究されていたかは分からないが、非常に良いアイデアの中で成功したと思う。あのとき、一瞬、10番が後ろに下がっているのがおかしいなと思って、ピッチの選手に言ったんですが、声も聞こえないですし、それは選手が感じること。そういう意味では、スタートからアメリカに1本、してやられたなと。それを選手が感じる術がなかった。それも力の差だと僕は感じている」

 読み切れなかったのは準備も含めた力不足。選手だけでなく、監督も含めた明らかな差が出た。その後は、引くセンターバックに、焦るサイドバック。前半5分、スペースを使われたところで、ファウルを犯し、FKを決められた。この2失点で勝負はついた。DF岩清水梓は「相手が思ったより勢いがあって……」と涙ながらに絞り出したが、試合序盤の衝撃は日本をひるませるに十分だった。

 今後の課題は、世代交代ということになるだろう。15年夏の段階では今のメンバーが日本のベストであり、これを脅かす若手はいなかった。やみくもに若手を入れれば良いというわけではない。それでも、この日、抜群のセンスでチームを安定させたMF澤穂希は国際大会で90分間のプレーを連戦でこなせるだけの状態にはなかった。アジアから2か国しか出場できないリオ五輪への道は相当厳しい。さらなる若手の奮起が望まれる。

(取材・文 了戒美子)


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