果敢に追撃ゴールを狙っていったが、アメリカの壁を打ち崩すことはできなかった。この悔しさは、来年の五輪、次回のW杯で晴らしたい。(C) Getty Images

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 日本が打ちのめされた決勝戦だった。フリーランの長さも速さも、力強いキックもパススピードも、日本の数段上をいくアメリカに力の差を見せつけられた。
 
 ここまで粘り強く僅差の試合を制してきた日本は、16分までに4失点を喫し、佐々木則夫監督はそれからのプランを大きく変えざるを得なかった。
 
「立ち上がりでしくじった。あれだけの点差がついたので、なんとか1点をという思いの境地にあった。攻撃的な要素でトライするために交代した」と振り返る佐々木監督は、前半だけで2選手を交代して打開を試み、5失点目の直後には岩渕真奈を呼んだ。
 
 今大会で最も早い60分からピッチに送り出された岩渕は、得意のドリブルで勢いに乗るアメリカの最終ラインを崩しにかかったが、二重三重の網で日本のボールを奪おうとする守備に防がれ、容易に相手ゴールに近付くこともできなかった。
 
 68分には日本のチャンスメイクに関わったが、岩渕自身、無謀にも見えるドリブルがあり、いくつかのプレーを選択できる場面でも、その時のベストなプレー選択をできなかった。
 
「点差が開いた状態での投入だったのでとにかく得点を、と思って入りましたけど、実際は特に何も生まれてないので。悔しいです」
 
 後半の終了間際にはFWにポジションを移して、ゴールにより近い位置に立ちはしたが、最後まで日本のチャンスの幅を広げる存在にはなり得なかった。
 
「シュートを1本も打っていないので、なんとも言えないですけど、とにかく悔しいです今は。4年前とか3年前とかに比べたら、正直自分のプレーを出すという姿勢は出せたかなと思いますけど、でもまぁ、なにかが生まれたわけじゃない。結果としてチームが負けた。もっと頑張らないといけない」
 
 試合終了の笛を聞き、ピッチに座り込み、銀メダルを受け取って完勝したアメリカの歓喜を見届けた。ロッカールームに下がってミックスゾーンに現われた時には、もう涙は乾いていた。
 
 岩渕のコメントを拾うために、小走りで彼女の元へと集まる記者の数は、日本の期待の数だ。
 
「まずは、本当に日本は良いチームだなと思いました。それと個人的には、いろんな人に感謝しなきゃいけない」
 
 右膝に怪我を抱えながら参加した2回目の女子ワールドカップは、別メニュー練習のまま開幕を迎えた。チームドクターやスタッフと話し合いを重ね、調整しながら試合出場を目指した。ベストコンディションではなかったが、オーストラリア戦では決勝点をもぎ取った。
 
「サッカーがもっとうまくなりたいと思った大会だった」と努めて明るく話す岩渕は、多くの記者の前で、もう一度悔しさを噛み締めた。そして、もう来年の2、3月には、リオ五輪のアジア予選が予定されている。
 
「本当にどういうチームになるか分からないし、正直今はそこまで考えられていないですけど、(出場枠が)アジアから2チームっていうのは絶対に厳しい。一層難しくなるのは間違いない」
 
 もちろん、岩渕が次のなでしこジャパンメンバーに名を連ねるかは分からない。しかし、この歴史的惨敗とも言える一戦を味わったからこそ、岩渕はさらなる高みを目指せるはずだ。
 
取材・文:馬見新拓郎(フリーライター)