日本、アメリカともに4-4-2の布陣となることが予想される。アメリカの前線からのハイプレッシャーをいかにかいくぐれるかがポイントになる。

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 カナダ女子ワールドカップは、日本時間の7月6日午前8時にいよいよ決勝のキックオフを迎える。大会2連覇を目指す日本は、2011年の前回ワールドカップ、12年のロンドン五輪に続き、3大会連続で宿敵のアメリカと顔を合わせることになった。
 
 今大会わずか1失点と堅守を誇り、パワフルな攻撃を見せてきたアメリカに対し、日本はどんな戦いを挑むのか。「なでしこジャパン」の攻守のリーダーである宮間あやと岩清水梓の言葉から、勝利へのカギを探る。
 
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ポイント1)じっくりと構えるのか、立ち上がりから出るのか
 
 今大会のなでしこジャパンは、相手の足を潰してから、確実に敵を仕留めにかかる「大人のサッカー」が目立つ。6試合も1点差ゲームが続いているが、すべての試合で先制していることもあり、安定感は抜群。敗戦の可能性が僅かながらでも感じられたのは、一度同点に持ち込まれた準決勝のイングランド戦ぐらいだ。
 
 では、決勝戦も最終ラインで確実にボールを回しながらアメリカのプレスをいなし、その矛先を鈍らせてから止めを刺すというプランでいいのか。キャプテンの宮間はアメリカに対して、これまで戦ってきた相手とは異なる感覚を抱いている。
 
「アメリカを相手に(そうしたダメージを蓄積させる)これまでの戦い方が通用するかと言えば、それは違うと思います。アメリカはもう少し高い位置からプレスをかけてきます」(宮間)
 
 ディフェンスリーダーの岩清水も「1トップの相手、オランダ戦、オーストラリア戦でうまくできましたが、イングランド戦はGKまで追いかけられて、少し嫌な場面がありましたし、アメリカは2トップでくるかもしれない。少し個別に作戦を練る必要があります」とイングランド戦の戦いを、そのまま踏襲するつもりはない。
 
 果敢にアプローチを掛けてくるアメリカのフォアチェックを外せれば、それだけ相手のガソリンを削り取れる。それはすなわち、勝利にも近づくということだ。しかし、最強の敵を相手にそれだけでは足りないと宮間は言うのだ。
 
 
ポイント2)先制点で相手のメンタル面に一撃を加えたい。
 
 宮間は勝利のカギを握るポイントとして、先制点を挙げた。
 
「(相手のプレスを外してスタミナを削る)それもありますが、アメリカの選手は豊富な体力以上に、強い精神力を持っている。彼女たちの心をへこませるには、得点を奪うしかないと思います」
 
 実は今大会、日本は初戦から準決勝までの6試合すべてで、アメリカもスコアレスドローに終わったグループリーグのスウェーデン戦を除く5試合で、先手を取り続けてきた。逆転勝ちが少ない今大会の傾向(グループリーグ36試合中3試合、ノックアウトラウンド準決勝までの13試合中1試合。フランスにPK勝ちしたドイツの試合は除く)からいっても、先制点の意味合いが際立っている。
 
「あくまで、試合展開に焦れないことが前提になりますが、早い時間帯に先制点をとること。アメリカを相手に先制したことはあまりないので、それができるかどうかだと思います」(宮間)
 
 データ上で圧倒的な優位が示されている先制点をもぎ取ることで、アメリカの選手たちのメンタル面に打撃を加えられるかは、重要なポイントになるだろう。
ポイント3)理想は、攻守に盤石の内容だったオーストラリア戦の再現。
 
 では、先制点を奪うために必要なものはなにか。
 
「イングランド戦では、網を張っている相手のところに飛び込んでいかなかったのは良かったと思います。ただ、自分としてはそれ以上に課題が見つかった試合でした。もう少しボールを持った味方の選手への選択肢を増やしていかなければいけません」(宮間)
 
 となると理想は、ここまでの6試合で最も攻守に盤石の内容を誇った準々決勝のオーストラリア戦の再現だろう。全員がサボらず、ボールを受けるべき場所に顔を出し、奪われても素早い切り替えでこれに食らいついた。
 
 自分たちのペースで試合を作り、対戦相手の強力アタッカーは守備の疲労で消え、最後はオーストラリアをサンドバックのように葬った。岩渕真奈のゴールが生まれたのは残り5分を切ってからだったが、それまでにも数多くの決定機を作り出せていた。得点は時間の問題だった。
 
 アメリカは今大会唯一の失点が、オーストラリア戦のもの。自陣右サイドから中につながれ、最後は自陣左サイドの選手をフリーにしてしまった。失点シーン以外でも、このケースでピンチを招くことがあった。日本としてはまず、宮間と鮫島彩で左サイドを攻略し、大儀見優季、大野忍の両CFが粘り、逆サイドの川澄奈穂美、有吉佐織を空けるイメージがあるはずだ。
 
「後ろでのビルドアップは日本のストロングポイント」と語る岩清水、そして熊谷紗希の両CBが、勇気を持って開いたポジションをとり、SBを攻撃参加させたい。
 
ポイント4)コンディションを整えて頂上決戦に臨め!
 
 オーストラリア戦のサッカーをやり切るためには、出場選手全員が心身のコンディションをベストの状態に持ってくる必要がある。決勝戦が6試合目。疲れはあるだろうが、それはアメリカも同じだ。ドイツ、イングランドを加えた4強を比較しても、ノックアウトラウンド以降、最もコンディションが良く見えるのは日本だ。
 
「身体は重くない。むしろ正直に言えば軽いくらい」と宮間。
 
 グループリーグでは練習からやり過ぎなほどハードなメニューを用意し、その後は試合に向けてコンディションを整える“佐々木流”も効果を発揮している。ましてや世界の頂に再び立てるかどうかの瀬戸際。90分+αを走り切ってくれるだろう。
 
 女子ワールドカップ連覇とロンドン五輪のリベンジに向けて、なでしこジャパンの前に広がる視界は澄み切っている。
 
文:西森 彰(フリーライター)