都市部のヒートアイランド現象などの影響で、熱中症になる人は毎年増え続けている。例えば2年前は、6月だけで4265人が救急車で運ばれている。このうち、約半数が65歳以上だった。なぜ高齢者は熱中症になりやすいのか。
 東京都健康長寿医療センターの担当医は、加齢に伴う体の変化を理由に挙げる。
 「まず、汗をかく能力が衰えていることが挙げられます。若い頃と比べて汗腺の数自体が減り、機能も落ちている。また、筋肉が減り発汗率が悪い脂肪の割合も増え、さらには細胞内の水分量も減っています。そのため、若い人より脱水症状になりやすいのです」

 さらに、体の異常に気づきにくい点も挙げている。気温の変化やのどの渇きを感じる感覚が鈍り、体温調節や水分補給が遅れがちになるというのだ。
 「対策としては、まず自分の感覚だけを頼りにしないこと。天気予報をチェックしたり、温度計を見やすい所に置いておく。また窓を開け、こまめに水分の補給を心掛け、窓を開けても涼しくならない時は、我慢せずにクーラーを使うことも必要です。熱中症は、梅雨時の6月の26〜27℃でも引き起こす場合があります。その程度の気温では起きないと思い込んでいる人も多く、対応が遅れてしまうケースが結構あるのです」(医療関係者)

 高齢者でなくても、熱中症の症状に気づけばすぐに涼しい場所で体を冷やし、適切な水分と塩分の補給を行わなければならない。対処が遅れれば、中枢神経症状、肝・腎機能障害、血液凝固異常が起こり、最悪の場合は死に至る。
 さらに熱中症は「めまい」「失神」「頭痛」「吐き気」のほか、体温の異常な上昇、異常な発汗(または汗が出なくなる)などもある。発症した場合、程度によらず適切な措置を取る必要があるとされる。

 特に体温が40℃以上となる熱射病になると、致死率は36%に上るというデータもある。そこで、「前脱水」の段階で手を打ちたいところ。前脱水は、読んで字のごとく脱水症の前段階のことを指している。
 東京社会医療研究所の平川恒久医師は、次のように説明する。
 「脱水症状の前段である『前脱水』は、脱水症状のような症状がないが、体液量が減っている状態を指します。脱水症では、体液の3%以上が失われるので、症状が出やすいのですが、前脱水は体液量が減ったといっても1〜2%程度で症状が出にくい。いわば、脱水症と正常値の境界域なのです。しかし、これは脱水症を発症する直前の体の警告だと考えた方が、万全の対策が取れます」