メジャートーナメント3大会連続となる日本との決勝戦を、アメリカはどう位置づけているのか。米ベテラン記者が決戦の地バンクーバーからお届けする。 (C) Getty Images

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 アメリカは日本との対戦を心待ちにしていた。4年前のあの苦い記憶は、いまも残る消えない疵だ。

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 2011年の女子ワールドカップ。ドイツで開催された前回大会の決勝で、アメリカは日本に敗れ優勝を逃した。それまで一度も負けたことがなかった(22勝2分け)相手に、よりによって大舞台で苦杯をなめさせられたのだ。しかも二度のリードを追い付かれ、PK戦の末に……。
 
 1年後のロンドン五輪決勝では日本を2-1で下し、雪辱を果たす金メダルを獲得したが、4年前のあの悔しさはチームを動かすひとつのモチベーションだった。
 
「同じ過ちは繰り返さない」
 
 そう語るのは、エースのアレックス・モーガン。チーム最年少として前回大会を戦い、決勝では先制ゴールを決めた彼女は、4年前に屈辱を味わったひとりだ。
 
「(ドイツを破って決勝進出を決めた後の)ロッカールームでみんなで話したわ。4年前の決勝がいかに苦々しかったか、を。最悪だった。あの悔しさは、まだ残っている。だから、このチャンスを逃すわけにはいかない」
 
 4年前は大エースとして決勝のピッチに立ったアビー・ワンバックは、静かに闘志を燃やしている。
 
「世界最高の座を得るためには、世界のベストチームを倒さなければならない。準決勝では世界ランク1位のドイツを倒した。次は日本。リスペクトに値する、ベストチームのひとつ。
 
 日本は素晴らしいチームだわ。ディフェンディング・チャンピオンだし、ファイナルの相手として不足はない。すべての選手が最高のプレーを見せ、チャンスを確実にモノにしたチームが勝つでしょう。それはきっと私たちよ」
 
 4年前のリベンジマッチ――。言葉にすればそうなるだろう。しかしアメリカは、日本をそこまで特別に意識しているわけでも、リベンジを期して目の色を変えているわけでもない。

 そこにあるのは、世界一を狙う競技者としての「純粋な闘志」と言えるだろう。
「4年前の再戦よね。日本との対戦は楽しみだわ。でもそれは、ベストチームのひとつと決勝で戦えるという意味で。最高のチームを倒してチャンピオンになるめに、私たちはここに来たんだから」
 
 同じく前回大会を知るアリ・クリーガーは決勝への意気込みをこう語る。
 
「とにかく、私たちが気にしているのは私たち自身。相手がどうこうじゃない。いまチームはとてもいい状態で、勢いがある。ムードも最高。最高のファイナルを戦う準備はできている」
 
 4年前はひとりの観戦者だったジル・エリス監督のコメントが、アメリカのマインドを代弁しているだろう。
 
「お互いに才能あふれるチーム。ライバルの激突と言えるでしょう。双方、4年前を知る選手も大勢いるわ。
 
 でも、今大会は今大会。いまの我々は、(4年前とは)別の旅をしてきた、別のチーム。ここにいる23人の選手たちとコーチングスタッフは、この決勝という新たなチャレンジに心を躍らせている」
 
 アメリカが期しているのは、4大会ぶりのタイトル奪還だ。
 
文:マイケル・ルイス text by Michael LEWIS
 
マイケル・ルイス/サッカー取材歴40年を超える重鎮ジャーナリスト。ワールドカップは8大会、オリンピックは7大会の現地取材を数え、米紙『ニューズデイ』、英紙『ガーディアン』をはじめ、WEBサイト『FOXニュース・ラティーノ』などに寄稿する、北米サッカーメディア界の第一人者だ。1952年5月16日生まれ、ニューヨーク出身。今年6月から『ワールドサッカーダイジェスト』誌でも連載開始。