Eテレで話題“ハイパー人形劇”の裏側とは? 「ワッヘンフィルムスタジオ」潜入レポ&飯塚貴士インタビュー

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地上120m、巨大ロボかと見紛う大仏が見下ろす茨城県牛久に、飯塚貴士さんは「ワッヘンフィルムスタジオ」を構え、“ハイパー人形劇”と呼ばれる摩訶不思議な作品を生み出している。一度見ればクセになる、そんな面白作品を生み出す場所は、やはり子どもの秘密基地を思わせるワクワクに溢れていた!

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飯塚さんの作品を初めて観たのは昨年取材で訪れた「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」。斎藤工が声優を務め、千葉真一も登場するなど豪華布陣の作品「ニンジャセオリー」は、現代に生きるニンジャの苦悩や生きづらさを描きながら、同時に楽しいバカバカしさで彩られており、鑑賞後も何だかもっと観たい気にさせられた。

関係者も同じ思いであったか、今年は映画祭オープニング映像の担当に抜擢。映画祭の“顔”というべき大役だったが、こちらも「(対象外ながら)これがグランプリ」「上映作の中で一番ファンタスティックだった」と声が上がり、最近ではNHK Eテレで「補欠ヒーローMEGA3」が放送され(現在再放送中)、茨城県のインターネットテレビ「いばキラTV」で「イバラキ警備隊」が配信されるなど、注目の映像作家、いや映像魔術師なのである。

そんな飯塚さんの制作工房である「ワッヘンフィルスタジオ」へGO! 牛久駅から飯塚さんの案内で辿り着いたそこは、一見普通の倉庫であったが、扉を開くとワンダーランド。さっそく道中スマホで観てきた「イバラキ警備隊」のセットと面々が迎え入れてくれ、テンションが高まる。

牛久生まれの牛久育ちである飯塚さんは、絵を描くのが好きだった少年時代はマンガ家に憧れ、その後県内の大学でデザインを学びイラストレーターやデザイナーになりたいと思うも、「飽きっぽくて長続きしなくて」と苦笑い。

そこで自分の趣味や好きなもの(=80年代のB級映画やアメリカンプロレス、フィギュアなど)を全部合わせて表現したら面白いのではと考え始めたのが、現在も続けている“ハイパー人形劇”だったという。映画の撮り方、作り方は独学で身に着けた。

「完成度が高い作品より80年代のB級アクション映画みたいのとか、すごく一生懸命作っているけど低予算だったり、無駄なところに力を掛けて重要なストーリーはハチャメチャだったり。

そういう作品でも映画として存在できて、“B級映画”みたいな感じで愛している人も少なからずいる――そういうものに自分を重ねてじゃないですけど、すごく憧れや救いみたいなものを感じて、自分もそういうものを作りたいという思いがありました。

なので、一生懸命作っているけど技法がダメ、真剣に作っているけどバカとか、そういうことを突き詰めたいっていう感じでした」

そう語る飯塚さんの話を聞くと、ワッヘンフィルムスタジオが生む作品世界がより一層染み入ってくる。しかし粘土で成型して服も手縫い、人形1体作るのに1週間掛かるというその技法は実に手が掛かるもので、画面からはそこに掛ける愛情が、懐かしさやおかしみとなってにじみ出る。

「間違ってるなっていうのは完全に自覚していたんですけど(笑)、大事なところは力を入れてないのに不毛なところに力が入ってる――みたいのをどうしてもやりたくて(笑)。とにかく無駄なところにどれだけ熱を込められるか、みたいのが燃えてきちゃって止められなかったです(笑)」

誰に頼まれたでもなく完全な自主制作として始めたが、完成した作品を各地の映画祭へ出品するうち話題を呼び、賞も受賞するようになり、それが新たな出会いを呼んだり仕事にも繋がっていったと飯塚さんはいう。

「映画祭がきっかけでいろんな出会いが生まれたり、ワークショップのお誘いもあって。なので今の仕事に繋がっているのは、映画祭のおかげといって間違いないです」

今後も飯塚さんは自身の憧れ・救いとなったような作品を、自分なりの手法で作っていきたいと語る。

「やりたいもの・描きたいもの・アツいものはあるんだろうけど、そこが全然伝わってこない形に落とし込まれてしまっていたり(笑)。その熱が空回っている感じにすごく感動するんですよね(笑)。

人形劇とかコマ撮りとかアニメーションとも違うし、特撮っていうほどちゃんとした特撮でもないし、すごく心もとない技法だったりするんですけど、すごく僕の救いになって大好きなジャンルの手助けをほんの少しでもできたら、そういう作品を作り続けていきたいと思ってます」

操っている糸が見え、何だかツッコまずにいられないキャラクターと設定、でも軽い気持ちで観始めたのに何だか最後までやめられない――そんな作品と出会うことがあったら、きっと制作者の中には「飯塚貴士」の名前があるはずだ。