7月1日、カナダで開催中のサッカー女子W杯2015の準決勝で、日本代表はイングランドに2−1で勝利を収めた。

決勝点は、後半92分のアディショナルタイムで、イングランドのオウンゴールという劇的な幕切れ。しかし、これは決して“運”によるものではない。諦めずに最後まで攻め続ける姿勢が、イングランドのミスを誘ったのだ。

その立役者となったのが、FWの大儀見(おおぎみ)優季である。

イングランド戦、アディショナルタイムが残り1分を切ったところで日本はカウンターで勝負をかけた。右サイドMFの川澄奈穂美がドリブルで攻め上がり、ゴール前にクロスを上げる。そこに走りこんだのが大儀見。これを押し込めば逆転だ。

イングランドDFがそれを防ぐために慌てて足を伸ばしたところ、これがオウンゴールとなった。まさに、なでしこジャパンの執念で勝ち取った決勝点だった。

このプレーを生んだ大儀見は前回のドイツ大会にも出場している。しかし、自身が「チームメイトとあえて距離を置いて自分にプレッシャーをかけていたんですが、笑顔をつくれず仏頂面でふて腐れていた」と振り返るほど、当時の結果に満足していなかった。

チームは優勝したものの、前線の核として期待された大儀見は1得点を決めた初戦のニュージーランド戦以降、不発。ゴールに強いこだわりを見せるあまり、守備をおろそかにしたこともあって、準決勝以降は先発から外され、途中出場した決勝ではPK戦のキックまで失敗した。もし優勝を逃していたら「戦犯」と叩かれていたはず。

打って変わって今大会の大儀見は笑顔が多く、どこか楽しげだ。本人は「無理やりやらされた」とだけ振り返るが、初戦のスイス戦前の控室では、globeの『FACES PLACES』を熱唱し、チームを盛り上げた。

大儀見は前回大会後に結婚し、現在のなでしこジャパンでは唯一の既婚者。結婚したことで「オンとオフのバランスがうまく取れるようになり、心身にゆとりができた」とも話す。

2012−13シーズンには女子最高峰のドイツリーグで得点王に輝き、文字通り、なでしこジャパンの頼れるエースに成長したことで、本人が言うように「自然と」周囲に気を配る余裕ができたのだろう。

エクアドル戦では、実妹のMF永里亜紗乃と同時出場し、W杯では日本人初の姉妹共演を果たしたことも話題になった。

「W杯といっても特別な意識はない。どんな結果になっても受け入れる覚悟はできている」と話す口ぶりからは、この4年間の成長と確かな自信がうかがえた。

イングランド戦のオウンゴールにつながるプレーは、その成長の証ともいえる。試合終了後、感極まって目に涙が滲む姿があった。決勝のアメリカ戦ではまた会心の笑顔を見せてほしいものだ。

(取材・文/栗原正夫)

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