オーストラリア戦に続き、イングランド戦でフル出場した川澄。決勝へ向けコンディションは上がっている。(C) Getty Images

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 決勝進出を目指した日本とイングランドの一戦はそれぞれ1本ずつPKを決め合い、1-1のまま90分が経過していた。
 
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 メインスタンドから見て左手にある日本ベンチは、延長戦に備え慌ただしさを増していた。控え選手たちが氷を持ち出してポリ袋に入れ、後半終了とともにベンチに下がってくる選手たちの身体を冷やそうと準備を進めていた。しかし、それは試合後の選手の疲れを癒すためのアイシングとなった。
 
 第4審判が後半アディショナルタイム「3分」を掲示してからまもなく、日本の勝ち越し点が決まる。終了間際、相手のオウンゴールを呼び込んだのはMF川澄奈穂美だった。
 
「熊谷選手がボールを持った瞬間に、右SBの有吉選手にボールをつけるという選択肢もあったと思うけど、熊谷選手が私のほうを見てくれて、ボールを送ってくれた。そして相手のSBがプレスに来ないで下がっていったので、前に向かおうと思った」
 
 右サイドで2回ボールを触った川澄は、右足ですかさずアーリークロスを入れる。するとゴール前に走り込んだFW大儀見優季を警戒したイングランドのDFバセットが右足でクリアをし損ない、ボールはクロスバー右を叩いてゴールへ。
 
 ゴールラインテクノロジーによっても日本の決勝点が認められ、なでしこはまたも試合終了間際に勝利を手繰り寄せた。
 
「彼女(バセット)がボールに触らなければ、(その先で)大儀見が待っていましたから、オウンゴールはしょうがないと思う。いずれにしてもゴールが生まれるシチュエーションだったことは間違いない」と、試合後の佐々木則夫監督は得点につながるプレーを作り出したことを評価した。
 この準決勝を迎えるまでの川澄は、決して好調だったわけではなかった。
 
 4年前のドイツ大会でレギュラーを獲得して以来、日本のサイドハーフは川澄の定位置になっていたが、今大会、そして直前の2度の壮行試合を含めて、フル出場したのは準々決勝のオーストラリア戦と今回のイングランド戦のみ。
 
 豊富な運動量を武器とする川澄は相手の疲れが見えてきた終盤にこそ力を発揮するタイプなだけに、フルタイムでの出場が許されないことにもどかしさを感じていた。
 
「最後まで試合に出たい気持ちは強いが、監督の考えが違うのであれば、そこは切り替えないといけない。その状況でも自分の長所をどう出すのか、挑戦ですね。最後の最後まで走り切れるのが自分の良さだと思うけど、いつかはそれを出せるチャンスが来ると思って練習を続けたい」
 
 そう話した後、オーストラリア戦とイングランド戦でフル出場を果たし、イングランド戦では試合終了間際に決勝点を生み出すキッカケを作った。
 
 試合後、川澄は再び世界の頂点を見据え、アメリカとの再戦へ意気込みを語った。
 
「今大会の中国戦やドイツ戦を見たけど、やっぱりアメリカはアメリカ。ロンドン五輪以来、再び女王として君臨しているチーム。私がシアトル・レインFC(アメリカ)でプレーしていた時の選手もいる。日本とアメリカの良さを出し合うような試合になるといい」
 
 ファイナルを心待ちにしながら、「もう一度、世界一を獲りにいくチャンスができた」と、笑顔を見せる川澄の姿がそこにはあった。
 
取材・文:馬見新拓郎(フリーライター)