そして、スコアは2-0のまま、試合終了を迎える。3月の1次予選を含め、これで公式戦5試合連続の完封を達成した。
 
 約3か月ぶりの実戦で、1次予選からは多くのメンバーを入れ替え、試合では後半、8人の交代があった。たしかにテスト色の強いゲームではあったが、チームとしての完成度は決して低くなかった。
 
「間は空いてはいますけど、代表となったら、一人ひとりがどういうサッカーをしてきたとか、なにをするべきなのかは、整理できていると思う。(U-22代表としての活動の)回数が少ない分、なかなか難しいところはありますけど、みんな戦術の理解だったり、個人個人の特長は把握できているはず。半分、メンバーは変わりましたけど、後半も内容を落とさず、しっかりプレーできた。チームの底上げになったと思います」(遠藤)
 押し込む時間帯が長かった試合内容とチャンスの数を考えれば、大量得点による勝利ができてもおかしくなかった。
 
 ただ、シンガポール相手に、終始押し込みながらもスコアレスドローという失態を演じたA代表とは異なり、若き日本代表は確実にチャンスを決め、不用意な失点も与えず、来年1月に控える最終予選で最も必要とされる“結果”を手にしたのだ。
 
 全員守備・全員攻撃、攻撃の優先順位、守備での約束事、柔軟性と割り切りの戦術の使い分け……。手倉森ジャパンを表わすキーワードにおいて、今回のコスタリカ戦を見る限り、早急に改善・修正すべき問題点は見当たらないと言っていい。
 
 そうしたなかで、遠藤や岩波、野津田、浅野、櫛引など、常連組は期待どおりのプレーを披露した。そして金森だけでなく、喜田拓也や井手口陽介、前田直輝など、1次予選には招集されていなかった選手たちも、躍動感溢れるプレーでそれぞれの特長を出し、チームの可能性を広げる活躍を見せた。
 
 試合前日の公式会見で、「1次予選以降、選手はそれぞれのクラブで自分磨きをしてきた。それに対して今、どのレベルにあるのかを知れるゲームになるだろう」と語っていた手倉森監督も、たしかな満足を得られたに違いない。隣に座る遠藤は「明日はしっかり結果を残して、層の厚さを示せればと思っています」と意気込みを口にしていたが、その言葉どおりの戦いぶりだったと言えよう。
 
 最終予選まで残された時間はあと半年だが、依然として競争原理は働いている。それはすなわち、チームとしての伸びしろがあるということだ。
 
 戦術的な枠組みはほぼ固まっており、その強度は着実に増してきている。チームコンセプトの浸透に不安はない。あとは、どれだけ上積みしていけるか。
 
「競争が激しくなることを願っています」(手倉森監督)
 
 最終予選まで、U-22代表としての主だった活動は数回のキャンプのみ。だからこそ、普段のJリーグにおける候補者たちのさらなる奮闘と成長、アピールからは目が離せない。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)