持ち前の技術の高さと守備面での激しさを見せた井手口。チーム最年少ながら堂々たるプレーを披露した。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 ピッチ上では他の誰よりも貫禄ある佇まいをしていた。U-22日本代表では最年少の18歳、井手口陽介がコスタリカ戦で堂々たるプレーぶりを見せた。
 
 ダブルボランチの一角に入ると、遠藤航のポジショニングを見ながら、攻守両面で効果的にプレーに関わり続けた。守備では入れ替わられてしまうシーンも数回あったが、相手ボールへの積極的なアプローチでプレッシングに勢いをもたらし、ボールを持てば「ショートカウンターを狙っていた。奪った瞬間、前を見ることは意識していた」と、広い視野で前線に良質なパスを送り込んだ。
 
 22分にはバイタルエリアのスペースに走り込んだ浅野拓磨の動きを見逃さず、浮き球のミドルパスを供給し、チャンスを演出。27分にはドリブルを仕掛けた中島翔哉のパスを受けると、裏に飛び出した野津田岳人へ糸を引く縦パスを送り込んだ。緊張という言葉をまったく思わせない堂々たるプレーぶりは、スタメン起用した手倉森誠監督の期待に沿うものだっただろう。
 
 ただし、自身の能力をフルに出せていたかと言えば、決してそうではない。もっと攻撃性を出しても良かったし、まだ周りに自分の動きが理解されておらず、ポジショニングに苦しむ場面もあった。さらに前半で交代し、代わって出場した喜田拓也が存在感を放ったことで、ポジション争いはさらに激しくなっていくだろう。
 
 だが、彼にとってこれは悲観することではなかった。試合後のミックスゾーン。
「ここでのプレーはやりづらさはないです。ただ、もっと自分の意見を言えるようになれば、もっとやれると思う。自分から声を出すことが足りない。自分が前の選手を動かせるようになれば、もっともっと質の高いプレーができると思う」
 
 まだまだ存在感を示せるはず、という自信をのぞかせると、「遠慮している?」という記者の質問には、「遠慮はしていません」とはっきりと答えた。
 
 この言葉はおそらく井手口の本心だろう。その独特の感性で試合をこなしていくごとに、自分のやり方をチームにフィットさせていける選手だ。しかもそれを意識的にではなく、無意識にやっている。状況を見て、自分がどうか関わっていけば良いのか、試合の中で調整できる能力を、18歳のボランチは天賦の才として持ち合わせているのだ。
 井手口は、G大阪ジュニアユースで頭角を表わすと、中3ながら飛び級でG大阪ユースの試合に出場。ユース昇格後は高2の3月(2014年)にJリーグのベンチ入りを果たし、高3に上がる直前の3月31日にはトップ昇格するとともに、同年の10月にはU-19日本代表としてU-19アジア選手権に出場した。そして12月にはU-21日本代表に初選出されるなど、周りの同年代より常に先のステージへと駆け上がっていった。
 
 U-22代表では、今年3月の1次予選には選ばれなかったが、こうして再び招集され、スタメン出場すると、前述したように堂々たるプレーを見せた。
 
 再びミックスゾーンでの一コマ。「1次予選の戦いは見ていた?」という記者の質問に、彼ははっきりと「いや、見ていなかったです」と答え、周囲の笑いを誘った。準備不足という感もあるが、イメージトレーニングをしないまま、ポンと飛び込んでも、しっかりと順応するのはさすがだ。
 
 最後に「楽しめましたか?」と聞くと、「はい、楽しかったです。雰囲気もそうだし、代表で観客がたくさんいるなかでできたのは、すごく楽しかったです」と、笑顔で答えた。
 
 まだあどけなさが残る18歳だが、今まさに天賦の才を開花させようとする彼に、大きな期待を抱いてしまうのは、筆者だけだろうか。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)