2試合続けてボランチでスタメン出場したオーストラリア戦。暑さのなかでも集中力を切らさず、中盤の底で黙々とピンチの芽を摘んだ。 (C)Getty Images

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 カナダ女子ワールドカップ準々決勝で、オーストラリア(FIFAランク10位)を1-0と下し、ベスト4進出を決めたなでしこジャパン(同4位)。その試合で、「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」に選ばれたのが、2ボランチの一角としてフル出場した宇津木瑠美である。

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 気温は約30度、人工芝のピッチには太陽が激しく照りつけ、文字どおり消耗戦の様相を呈した一戦で、宇津木は持ち味であるフィジカルの強さを活かし、中盤で相手の攻撃の芽を摘み取っていく。そして奪ったボールを確実に味方へつなぐだけでなく、時には前線へ積極的な飛び出しを見せるなど、まさに攻守に奮闘した。
 
 また振り返れば、左CK後の混戦から生まれた岩渕真奈の決勝弾も、最初のこぼれ球にいち早く反応した宇津木の左足が起点となっている(宇津木がつないだところを、さらに岩清水梓が残し、最後は岩渕のゴールにつながった)。

 試合後、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出されたことについて聞くと、「ほかの10人の選手たちがよくやってくれたことで、自分の仕事が明確になり、結果につながった。みんなのおかげです」と謙遜したが、大会が進むにつれてチームにおける宇津木の存在は、確実に大きくなりつつある。
 
 岩渕の決勝ゴールにつながったCKのシーンについては、「こぼれ球を狙っていて、絶対自分のところに落ちてくるだろうなと思って相手より先に動き出したら、少し入り過ぎちゃって。結果的に前に転がってくれたので良かった」と笑って振り返る。そして聞けば、0-0のまま突入した終盤になっても、選手の間では試合が延長戦やPK戦にもつれるような空気はなかったという。
 
「みんなとも話しましたが、延長まで行くような感じはなかったですね。みんながそう思っていたからこそ、点が入ったのかもしれませんし、オーストラリアはやっぱりバテていましたから。忍耐力なら日本のほうが上。最後は気持ちしかなかったですが、そういう意味ではなでしこらしさが出たんじゃないですかね」
 それにしても、今大会の宇津木の充実ぶりは光る。

 前回優勝した2011年ドイツ大会でもメンバー入りはしたものの澤穂希と阪口夢穂の影に隠れ、出場時間はごくわずかに終わり、続く銀メダルを手にした2012年のロンドン五輪では、直前のテストマッチで右ひざの靭帯を痛めて、出場すら叶わなかった。
 
 打って変わって今回のカナダ大会では、初戦のスイス戦と第2戦のカメルーン戦に左SBで先発すると、エクアドル戦こそターンオーバーで出場機会はなかったものの、続くオランダ戦とオーストラリア戦にはボランチでフル出場と、欠かせない戦力となっている。
 
 ワールドカップ開幕前には、澤の復帰や左MF宮間あやのボランチ起用、左SB鮫島彩の左MF起用というプランも出て、宇津木は左SBに固定されるとの見方もあったが、ここへ来て本来のボランチでのプレーがチームにハマりつつある。
 
 第2戦のカメルーン戦では、ハーフタイムを挟み、宇津木(左SB→ボランチ)、宮間(ボランチ→左MF)、鮫島(左MF→左DF)の配置が変わったりもしたが、宇津木自身は3人の並びについて「宮間にしても、鮫島にしても、それぞれの特徴があるだけに、そこは対戦相手などを見ての監督の判断だと思う。自分としてはどこで出ても、宮間の攻撃のアイデア、鮫島のスピードを活かせるようなプレーを心掛けていますし、一番は相手の脅威になることですから」と、与えられたポジションで全力を尽くすだけと話す。
 
 とはいえ、「悔いを残すようなプレーだけはしたくない」と、常に100パーセントの力を出し尽くす思いきりの良い宇津木のスタイルは、縦横無尽に走り回れるボランチでこそ活き、冷静な阪口との好対照なコンビが、それぞれの持ち味を活かし合ってなでしこジャパンの中盤を支えている。
 
 準決勝の相手は、地元カナダを下し、勢いに乗るイングランドに決まった。
 
「中3日しかないですけど、まずは疲労を取り、心をリフレッシュすることに集中したい。(優勝まで)あとふたつというより、まずはひとつ。ここまで来たチームは、どこも優勝する可能性を持っていると思うので、リスペクトしながら戦いたい」(宇津木)
 
 強豪国との対戦となる残り2試合。フランスのモンペリエで5年間プレーし、確かな自信を手に入れたレフティが、なでしこジャパンを連覇へ導く原動力となるはずだ。
 
取材・文:栗原正夫