池上さんが捏造!?(『知らないと恥をかく世界の大問題 (6)』角川新書)

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 あの池上彰の番組に捏造疑惑が持ち上がっている。

 問題になったのは、6月5日にフジテレビで放送されたあの『池上彰緊急スペシャル! 知っているようでよく知らない韓国のナゾ!』。

 この番組は、韓国がいかに「反日」か、ということがテーマで、池上氏もネトウヨ、嫌韓本そのままのヘイトデマ解説を行っており、本サイトでもなぜ、リベラル派の池上さんがこんな番組を?と疑問を呈していた。

 だが、この番組でやったのは「嫌韓本のパクリ」だけではなかった。もっととんでもない不正をしていた。韓国で収録した韓国の一般市民の「反日の声」が捏造で、実際はまったく関係のないことをしゃべっているのに、字幕・吹き替えで反日の翻訳をつけていたことが発覚したのだ。

 問題になっているのは「なぜ韓国はそこまで日本が嫌い?」と題して、韓国・ソウルで街頭インタビューを実施したVTR。4人にインタビューしているのだが、実際の音声の上から吹き替えをかぶせ、字幕でもこんな翻訳をつけていた。

「日本は悪じゃ」(80代男性)、「韓国人はみんな日本人が嫌いだと思うわ」(60代主婦)、「嫌いですよ。だって韓国を苦しめたじゃないですか」(女子高生)。「日本人にはいい人もいますが、国としては嫌いです」(30代男性)

 ところが、この3人目の女子高生の「嫌いですよ。だって韓国を苦しめたじゃないですか」の声に対して、Twitter上で〈字幕が全然合っていないんだけど。韓国語では「日本は文化が多様で、外国人がたくさん旅行に行っていますよね」ぐらいのことを言っていると思うけど〉という指摘がなされたのだ。

 本サイト編集部でも確認したが、女子高生が言ってるのは「文化がとても多いです。外国人の方もたくさん訪問してくださってます」という台詞だった。
 
 ネットでは、「逆に日本のことをほめている声だったのに、フジが真逆に翻訳した」と指摘されているが、敬語の使い方を考えると、彼女はなんの関係もないソウルの街の印象を語っていただけだった可能性もある。

 いずれにしても、実際に話していたのは、字幕や吹き替えの「嫌いですよ。だって韓国を苦しめたじゃないですか」という言葉にはかすりもしない内容だったのだ。

 また、疑惑をもたれているのは、この女子高生の声だけじゃない。4人目の30代男性についても、かぶせている吹き替え音声がうるさくて、ハッキリは聞き取れないが、字幕とはちがうことを言ってる印象を受ける。

 さらに1人目、2人目についても、吹き替えで声がほとんど聞き取れないため、ほんとうに字幕通りの「反日の声」だったかどうかはわからない。ヘタをしたら、全員捏造だった可能性さえ否定しきれないのだ

 これは相当に悪質な"捏造"報道だといわざるをえないだろう。前述したように、番組では、こうした街の「日本が嫌い」という声をもとに、韓国の反日は恣意的につくられたものだと解説。池上氏も「実は韓国の憲法前文に、その反日の原点ともいう部分が、書かれてるんですよ」と言い出し、嫌韓本さながらのヘイトデマを垂れ流した。

 ようするに、韓国の反日を強調するために、無理矢理存在しない街の声を捏造したとしか考えられないのだ。

 このフジテレビの醜い情報操作には、ネット上でも「フジテレビがひどすぎる」「これ捏造だろ」「池上さんは知っていたのか?」と批判が殺到。"BPOに通報した"という声もすでにあがっているため、審議入りする可能性もある。

 それにしても、池上彰ともあろう人が自分の冠番組でなぜ、こんな捏造を放置してしまったのか。池上氏がリベラルかどうかは意見が分かれるところだが、少なくともメディアの倫理には非常に真っ当な視線をもっており、自分の姿勢も厳しく律していた。池上氏をよく知るテレビ関係者が語る。

「この番組については、完全にフジのシナリオのようですね。池上さんはその時期、超多忙であまりチェックする時間がないまま、乗っかってしまったようです」(テレビ関係者)

 多忙だったからといって池上氏の責任はまぬがれないが、しかし、VTRが捏造だったことを考えると。第一義的に糾弾されるべきはやはりフジテレビだろう。

 実際、ここ最近のフジテレビの報道番組や情報番組を見ていると、同局の報道、制作現場は完全に崩壊状態に陥っているように思える。それは、一般的に言われているような、安倍首相と日枝久会長がべったりで政権批判ができないとかそういうレベルの話ではない。

 先日も、浅間山の噴火の際にもフジテレビ報道局のTwitterアカウントが、よりにもよってライバルであるTBSの災害担当記者のアカウントに取材依頼をかけたことが話題になったが、「フジにまともな取材を行う人間はいるのか」と問題視されてきた。

 バラエティや情報番組、ドラマでの惨状も目をおおうばかりで、昨年末から今年はじめにかけての視聴率では民放最下位を記録した。

 今回の嫌韓番組についても、確固とした信念があってつくったわけではなく、「韓流ブームを仕掛けたことで、フジテレビはネトウヨから目の敵にされてきたので、今回は嫌韓派に媚びてバランスをとろうとした。それと、嫌韓が受けてるから、池上さんと組み合わせてやれば、視聴率が取れると判断した。それくらいのことじゃないか」(テレビ関係者)といわれている。

 いずれにしても、今回、発覚した捏造疑惑は、このようなフジテレビの報道・制作倫理の崩壊が生んだ問題だ。果たしてフジテレビはどのように"言い訳"するのか。そして、池上彰氏はどう総括するのか。その推移を今後も注意深く見守りたい。
(水井多賀子)