岡留安則『「噂の真相」25年戦記』

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宮武外骨。明治時代の反骨ジャーナリストである。「滑稽新聞」を発行して、言論統制を強めた明治政府やそれに同調する言論人を強く批判し、投獄されたこと数え切れず。だが、決して権力に屈することは無かった。滑稽新聞は結局、明治政府の言論弾圧に会い、発行後7年目で発禁処分となった。

 外骨は最終号を「自殺号」と名付けて、「滑稽新聞の本領は、強者を扶け、悪者に反抗して善者の味方とするものであったが、其本領のために終に悪政府の爪牙にかかって今回死刑の宣告、即ち発行禁止の言い渡しを受けた・・・」と毒牙をむき出しにした。

 「滑稽新聞」の外骨の姿と、「噂の真相」の岡留氏の姿が重なって仕方ない。笑いながら諸悪を激しく糾弾する姿など瓜二つだ。また、読者を意識した紙面展開や経営感覚も同様であろう。だからこそ、時代が異なるとはいえ、両誌が庶民からの支持を受け、大きく部数を伸ばせたのだ。

 岡留氏の「噂の真相」に関する自画自賛的な表現は鼻に付くが、ドブ板踏み的なジャーナリズムを、体を張って実践してきた男の言葉は重い。「噂の真相」は広告に頼らぬ、いや、頼れなかったがゆえに、独立したジャーナリズムを実現できたといえよう。

 大手マスコミが避けて通るタブーに果敢に挑む岡留氏の姿勢は、パブリック・ジャーナリストも見習うことが多い。ただ、岡留氏の公人と私人の区別については、疑問に思う点も多い。弱小組織ながら、国内ジャーナリズムを先導した岡留氏の告白は、何にも勝るジャーナリズム論といえよう。(集英社新書、735円)【了】

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