人工知能「シェフ・ワトソン」にできて、人間にはできないこと

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IBMの〈コグニティヴ・コンピューター〉を利用した料理アプリ「シェフ・ワトソン」は、材料を入力すると、膨大なデータと自然言語処理能力を生かしてレシピを提案してくれる。この名シェフが生み出す本当の価値は、「意外性」にあった。

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バナナを食べようと思って買ってきても、それをカウンターの上に置いておきながら、ついつい、いかにも食欲を失いそうな茶色に変色するまでそのままに放っておいてしまう。人によってはそれがキュウリやトマト、ほうれん草であったりするだけで、同じような習慣をもつ人はいるだろう。

バナナが嫌いというわけではない。いや、むしろ好きだ。だが、わたしには「バナナをどう食べるか」というインスピレーションが欠けている。単に皮を剥いてそのまま食べたり、バナナブレッドにする以外にはどうすればよいのか、わたしにはわからないのである。

そんなときは、「シェフ・ワトソン」に訊け

そこで、わたし“彼”に訊いてみた。コンピューターの彼が提示してくれたのは(そう、「シェフのワトソン」とはスーパーコンピューターなのだ)、考えたこともなかったような選択肢の数々だった。バナナ・フリカッセにバナナ・フェットチーネ…。さらに彼は、どのトロピカルフルーツがバナナとよく合うかまで説明してくれた。

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わたしのスー・シェフは、IBMと「ボナペティ」社がともにつくり出した「ボナペティのシェフ・ワトソン」だ。いろいろな食材の独創的で意外な組み合わせを提案してくれる、家庭のシェフを助けるためのアプリである。

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IBMのコグニティヴ・コンピューター、ワトソンは昨年までに、料理の技能に関する情報をたっぷりと蓄積した。そして、自然言語処理技術を活用して、特定の食品がいかに作用し合うかといったパターンを生み出した。

さらに9,000以上のボナペティ社のレシピを分析し、調理パターンに関する情報や用語を収集。このデータを食品化学や人間の味覚の嗜好といった情報と組み合わせることで、ワトソンは新しい材料の組み合わせを使った、まったく新しいレシピを生み出すことができるのだ。

「シェフ・ワトソン」は、けっして「最も美しいアプリ」とはいえないが、その機能性はUI(ユーザーインターフェイス)上の欠点を補って余りあるという。

意外性のレシピづくり

使い方は簡単だ。まず料理に使いたい4つの材料を入力したあと、リクエストを絞り込む。このアプリでは、 好きなスタイルの料理(例えばアフリカ料理やイタリア料理、あるいは「ほっとするような」料理など)を選べる。食事制限や好みに応じて、特定の成分を避けることもできる。ワトソンはリアルタイムでこれらのパラメーターを処理し、豊富なデータに基づいて多数なレシピを提案する。また、各材料の分量や基本的なつくり方まで教えてくれる。

「ワトソンは完璧ではありません。料理する際に生じるすべての化学反応をインプットしているわけではないので、人間が行なわなければならない部分は必ずあります」と、ワトソングループのディレクター、スティーヴ・エイブラムスは言う。

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創造性とは、物事の考え方を変える訓練だ。一見ありそうにないものを結びつける能力こそ、ワトソンの強みである。ボナペティのデジタルディレクター、ステイシー・リベラは、同誌のフードエディターにワトソンが「ナッツを入れたドリンク」をつくることを提案したときを振り返った。

「『ドリンクにナッツなんか入れられない、のどに詰まるじゃない』と彼は言ったの」とリベラは言う。しかし数週間後、2人はレストランでドリンクを注文したときに、くるみシロップ入りのドリンクに出くわしたのだ。ナッツ丸ごとをドリンクに入れるのは素晴らしいアイデアではないのだろう。だが、ナッツシロップを入れることなら、実際に行われていたのだ。

「ワトソンは、食べ物に対してわれわれが抱きがちな観念にとらわれないような提案をするのです」とリベラは言う。

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