©「ラブ&ピース」製作委員会

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園子温監督の最新作『ラブ&ピース』は完全無欠のファンタジー映画である。しかも泣ける。冷徹無比な私ですら涙がこぼれ落ちたほどだった。この作品では誰も死なないし、一滴の血も流れない、子供と一緒に見ることのできる心温まる映画だ。

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うだつの上がらない男に目覚めるきっかけを与えたのはミドリガメだった!

ミュージシャンになる夢に挫折し、小さな会社に就職した主人公・鈴木良一(長谷川博己)。しかし、社内では仕事のできない男で通っていて、同僚にも上司にもバカにされ続けられる毎日だった。そんな彼が、デパートの屋上で売られていた一匹のミドリガメと運命的な出会いを果たす…。

過激な描写の作品で知られる園監督だが、実は一番好きな映画は『ベイブ』。しかも動物も大好きで、今作では人間に捨てられた犬や猫たち、さらにはたくさんのおもちゃも出てくる。

彼らは地下で謎の老人(西田敏行)と共に楽しく暮らしていた。そして良一のミドリガメもこの老人と出会う。動物やおもちゃは老人をこの上なく愛し、老人も彼らに優しく愛情を持って接する。それだけですでにファンタジーの世界。この様子は、園監督の知られざる一面を物語っているようにさえ見える。

主題歌の『スローバラード』に注目!絶妙なタイミングでの「空耳」

ところで、この映画の脚本はすでに25年前に書かれていた。そして主演を忌野清志郎に打診したが、当時は俳優活動をしていないということで、脚本には興味を持ってもらったものの、実現には至らなかった。

それから四半世紀が過ぎ、今回やっと公開となった映画の主題歌として使われたのが、RCサクセションの『スローバラード』。この曲は、誰が歌っても、どこで使っても、必ず人の胸を打つわけではない。本当にこの曲の意味を理解し、愛している人にこそ歌うことや使うことができる意味のある作品だ。『ラブ&ピース』の主題歌には『スローバラード』がぴったりだった。当然涙腺は緩む。ズルい演出に泣かされてしまった。

しかも、この曲が流れるシーンにはミドリガメが出てくるのだが、偶然なのか、絶妙なタイミングで清志郎が「カメ」と歌っているように聞こえるところがある。これは園監督も言っていることだが、言われてみると確かにそう聞こえる。この「空耳」はオトナにとってのファンタジーなのかもしれない。

『ラブ&ピース』は園監督の「魂の集大成」であり、「丸ごと園子温」でもある

冒頭に「『ラブ&ピース』は誰も死なないし、一滴の血も出ない」と書いたが、特撮技術監督との話し合いの際に、園監督は「(この映画では)人は死なないんだ」と、そのことに非常にこだわっていたそうだ。

これまでの園作品を見てきた人には驚きの発言だと思うが、別のインタビューで監督は、「実際の僕はこの作品みたいなファンタジー映画の人間だ」と語り、さらに「撮ってみても無理がなかったし、やっぱりこっちが本領」とコメント。そして、『ラブ&ピース』は「魂の集大成」「丸ごと園子温」であるとまで述べている。

ミュージシャンになる夢、会社の同僚だった裕子(麻生久美子)と付き合いたいという夢、その良一に足りないピース(かけら)をミドリガメが埋める役割を果たす。これをファンタジーと言わずして、何と言おう。監督が本当に作りたかったものが長い時を経て、ここでついに開花したのだ。

園子温監督の「魂の集大成」であるファンタジー映画『ラブ&ピース』は、あなたに足りないピースに気づかせてくれるかもしれない。そして何より、これからの園作品のターニングポイントになりそうな作品だ。

『ラブ&ピース』
6月27日(土)TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー
監督・脚本:園子温
出演:長谷川博己  麻生久美子/松田美由紀 西田敏行
<声の出演> 星野源 中川翔子 犬山イヌコ 大谷育江
ストーリー:楽器の部品会社で働く、うだつの上がらない男・鈴木良一はミュージシャンになる夢は頓挫し、同僚の寺島裕子に想いを寄せているものの、小心者過ぎて声もかけられない。そんなある日、良一はデパートの屋上で一匹のミドリガメと目が合い、運命を感じるのだった…。

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