日本女子ゴルフ協会・小林浩美会長インタビュー(後編)

 国内ツアーの充実をはかるとともに、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の小林浩美会長が目標に掲げるのは「世界で勝つ」ことだ。そのためにも、世界標準にするためLPGAツアーでは4日間競技を推奨し、下部ツアーにあたる「ステップ・アップ・ツアー」にも力を入れて就任前の5試合から、今年は14試合にまで増えている。五輪競技に復帰する2016年、協会設立50周年となる2017年に向けたLPGAのビジョンとは?

―― 「世界で勝つ」選手を育てるために、今、小林会長が取り組まれていることは何でしょうか。

小林:現状、世界で最も強いフィールドはアメリカです。そこに肉薄し、世界のメジャーで勝つためには、大会を開催する条件をなるべく同じにすることが必要だと思っています。そうすることで選手の持っている能力をさらに引き上げることができると考えています。欧米トーナメントのおよそ8割が4日間競技です。一方、国内ツアーは8割が3日間競技です。4日間の大会を経験することで、体力はもちろん技術や精神力がさらに鍛えられます。また、コースセッティングのバリエーションを増やし、対応力を高めることも大事です。さらに、芝質はスイングの精度に影響を与えていると感じていますので、アメリカの芝質と同じコースで大会を増やせればと思っています。日本の四季と合わせ、芝の育成度合いやコースのデザインとの組み合わせで、もっとたくさんのコースセッティングが可能だと思っています。そして、日本人選手が海外メジャーに出場した時、気おくれせずに普段の力を発揮し、結果が出るようになればいいなと考えています。やはり日本がメジャーで勝ちたいし、2016年のリオデジャネイロ五輪や2020年の東京五輪ではメダルを獲りたいです。

―― それはご自身がアメリカに挑戦した際、芝質の違いに戸惑った経験があるからですか。

小林:そうです。日本の高麗芝は米国では4%しかありません。つまり日本とは違う芝質が半分以上あるので、それに見合った打ち方や技術が必要となります。それを習得し、使いこなせない限り上位に行くことは難しくなります。普段からたくさん経験を積むことで、プレイの幅が広がり、環境が違うところでも自分の力を発揮することが出来やすくなると思います。協会として、強い選手を育成することは、国内ツアーの発展はもとより、全国のゴルフファンの皆様にもさらに応援していただけると思います。

―― 今後も、国内から海外に飛び出していく選手は出てくると思われます。世界で戦える選手を育成する一方で、LPGA会長という立場では、国内トッププロの海外挑戦を推奨できないのではないですか。

小林:ニュートラルな立場でいたいと思っています。行きたい人は、誰が何を言おうと行きますし、私自身がそうでしたから。プロとして人生をどうしたいかは本人が決めることだと思います。

―― ステップ・アップ・ツアーも、これまでの2日間競技から3日間競技を推奨していますね。

小林:下部ツアーで優勝した選手が、レギュラーツアーの3日間競技になると、なかなか勝てないという傾向があります。それならば、普段から3日間競技をすることで、レギュラーツアーに行っても同じように戦え、結果が残せると考えています。ステップ・アップ・ツアーでは、シードを持たない選手を育成強化することが目的なので、次から次へとレギュラーツアーに送り出していくことが大事です。

―― 下部ツアーに関していえば、地元密着型の大会運営が特徴的になってきているとお聞きしました。

小林:たとえば、岡山で開催される「山陽新聞レディースカップ」は土日の2日間で1万5000人ものギャラリーが集まるんです! 地域活性委員会の皆様が先頭になり、ゴルフもする人もしない人も、またファミリーで楽しめるトーナメントになっています。鳥取の「山陰合同銀行 Duoカードレディース」もそうです。地元の多くの皆様が大変力を入れてくださっています。2012年大会で優勝したのが比嘉真美子プロで、彼女は翌年、レギュラーツアーで大ブレイクしましたよね。そういう選手が出てくると、地元の方々も「自分たちが育てた。もっと応援しよう!」という気持ちを持っていただけるようです。

―― それだけステップ・アップ・ツアーが充実していれば、満足してしまうプロも出てくるのではないでしょうか。

小林:協会としては、ステップ・アップ・ツアーを足掛かりとして、大きく羽ばたいてほしいという狙いなので、プロには常に上を見て挑戦してほしいです。

―― 会長に就任されて3期目を迎えて、「LPGAブランドの確立」と盛んにおっしゃられています。

小林:2013年に日本女子プロゴルフ協会は社団法人から一般社団法人となりました。同業他社が出てきてもおかしくない環境になり、競争社会に放り込まれました。そこで、これまで培ってきたものをより強固にし、誰も追いつけないように突き抜けて強い団体になることを目標としました。それにはLPGAでしか提供できないことにより力を注ぎ、LPGAのブランドの価値を高めたいと思っています。協会が設立50周年を迎える2017年に向かって、今、私たちは「第2の創業」と位置付け、時代に沿った変化を続けたいと思います。

―― 小林会長がデビューした80年代とは、女子ゴルフ界を取り巻く環境も大きく変わりました。高校卒業後に、ソフトボールから転向してきた小林会長や、先輩の岡本綾子プロとは違い、今は若い頃からゴルフを志す選手がほとんどです。

小林:そうですね(笑)。今はシード選手の平均年齢が26歳と若年化しています。ジュニア時代からゴルフを始め、そのままプロになる傾向が、2003年以降ずっと続いています。だから、ジュニア時代からそのまま一緒にプロになっている選手が多いです。また、クラブもボールも進化し、コースの総距離も私たちの時代より200ヤード以上伸びて、平均6500ヤードぐらいで試合をしています。ゴルフウエアも種類が多く、より華やかで、おしゃれに相当気をつけているようです。アマチュアの方も、ゴルフ場ではカラフルなウエアを着ていただき非日常を楽しんでいただきたいです。

柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji