■日本女子ゴルフ協会・小林浩美会長インタビュー(前編)

 今、日本女子ゴルフツアーがかつてないほどの盛り上がりを見せている。昨年は15歳(当時)の勝みなみがアマチュアながら優勝し、今季も20歳の藤田光里が初優勝を飾るなど、若手ゴルファーの台頭が著しい。また、現在、賞金ランキングトップを走る韓国のイ・ボミを筆頭に、強くて美しい海外選手にも多くのファンがついている。年間37大会を開催する日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の会長として、3期目を迎えた小林浩美会長に絶大な人気の理由を聞いた。

―― 国内における女子のプロスポーツで、LPGAツアーほど活況を呈(てい)している競技はありません。

小林:非常に手応えを感じています。ここ4年連続で賞金総額は史上最高額を更新していますし、テレビ視聴率も昨年より約1%伸びています。以前のように10%を超えることは、ここ数年ありませんが、安定した高めの位置で推移しているので、根強いファンに支えられていると感じています。

―― 世界的に見ても韓国勢の強さは際立っていますが、誰が勝つかわからない群雄割拠の状況も女子ゴルフ人気の大きな要因となっているのでしょうか。

小林:もちろん大きいと思います。毎年、若く実力をつけた選手が登場し、ベテランや若手も含めて、「見たい」「応援したい」と思える選手が増えた。それは社会が多様化しているという現状とリンクしているのだと思います。その一方で選手層は厚くなっている代わりに、飛び抜けた選手がいないのが現状です。だからこそ、いろいろな選手にそれぞれファンがつき、応援をしていただいている。プロスポーツですから、魅せることも意識しなければいけません。ゴルフが強いだけではなく、身だしなみや見せ方にも注意を払い、ファンサービスにも選手ならではの要素を取り入れています。試合内容も、20年前なら守りのゴルフで勝てましたが、今は積極的に攻めてスコアを伸ばして勝つのが当たり前になっています。そうした試合の内容についても、ギャラリーの方から「面白いね」と好評をいただいている理由だと思っています。

―― 2012年から、賞金ランキングとは別に、ポイント制のメルセデスランキングを導入し、最優秀選手(Player of the Year)を年末のLPGAアワードで表彰しています。その目的を教えてください。

小林:大会ごとに賞金の多寡があるために、優勝賞金の高い大会で優勝すれば賞金ランキングも大きく上がります。それとは別に、多くの大会に出場して好成績を残し続けた選手をポイントによって評価することで、賞金女王とはまた別の優秀選手を決めたいと考えました。最優秀選手には賞金500万円と、副賞としてメルセデス・ベンツ車両などが贈呈される。選手のモチベーションは高まるし、能力をさらに引き出すツールとして導入しました。

―― 現在は、39週におよぶシーズンに37試合が行なわれています。今後、さらに試合数を増やすことは考えられていますか。

小林:スケジュール上は39試合の開催が可能ですが、いろいろな状況から判断して、今は37試合がベストだと考えています。

―― ゴルファー個人の人気ではなく、競技自体に魅力があるから、人気選手が海外に飛び出して行っても、それほど国内ツアーに影響がないのではないでしょうか。

小林:選手の海外流出による影響は、私たちも心配でした。しかし、その影響はまったくないわけではないけれど、危惧したほどではありませんでした。やはり、たくさんのご支援があってツアー自体にも魅力があるからだと思います。

―― 日本のゴルフ界は、2003年のミヤギテレビ杯で優勝した宮里藍選手と、2007年の石川遼選手のアマチュア優勝が大きなターニングポイントとなりました。しかし、男子ツアーは苦戦し、試合数も27大会(海外共催含む)です。なぜ女子ツアーはニューヒロインが次々と誕生し、ツアー全体の人気につなげられたのでしょうか。

小林:宮里藍選手の同世代には横峯さくら選手や諸見里しのぶ選手がいて、いい意味でライバル同士が競り合い、お互いのレベルアップにつながったと思っています。同期が活躍すると、「私も勝ちたい。続きたい」となりますよね。そのあとの有村智恵選手や原江里菜選手の世代もそうなっています。現在は、アマチュアの勝みなみさんが優勝し、同世代の選手が同じことを考えていると思いますし、実際、昨年当時アマチュアの森田遥さんと話した時は「プロと同じ練習をして、プロの試合で勝つことが目標です」と言っていました。頼もしいですよね。

―― 大会を開催したいというスポンサーがあとを絶たず、今は"順番待ち"の状況だとお聞きしました。

小林:おかげさまでオファーはいただきます。LPGAツアーはこの30年ほど、年間30試合以下になったことがありません。1989年から1992年は、39大会フルでありました。当時はバブルの真っ最中でしたが、不景気に陥(おちい)っても、たくさんのスポンサーさんが支援を続けてくださっています。日本のゴルフトーナメントは、大会スポンサーさんがたくさんのお金を出してくださるからこそ開催できる。毎年、毎試合テレビ中継があり、途切れることがありません。そして長年にわたり、継続して大会を開催してくださる上で、重要なポイントはプロアマ大会です。スポンサー各社が、大事なお客様をプロアマ大会にご招待して、女子プロと一緒にその日を楽しんでいただく。私たちはそのお客様に喜んでいただけるように選手と一緒になって努力しています。トーナメントを開催してくださるスポンサーも、当然のように費用対効果を考えています。ですから、我々としては、プロアマを重要視してきました。

―― それは1996年から2011年1月まで会長を務めた樋口久子氏の頃からですか。

小林:いえ、1994年の清元登子会長からです。高校や大学を卒業してすぐ活躍するプロゴルファーは、社会性が身についていません。そこで清元会長が、新人プロはもちろん、選手をはじめとする会員に対して3日間のセミナーを開催し、ルールの勉強は当然として、社会人としての振る舞いやマナーを中心とした様々なことを、各専門家をお呼びして教育してもらいました。樋口会長時代に地盤を固め、私もそれを引き継ぎ、今はソーシャルメディアの利用法など時代に沿ったものも指導しています。20年間の取り組みで、ようやく成果として表れてきたのが今だと思います。

―― 盛況だからこそ、将来に向けて危機感を抱く一面もあるのではないですか。

小林:<実るほど頭を垂れる稲穂かな>。このことわざを今年開幕戦前のミーティングで選手たちと共有しました。これからも女子プロゴルフツアーがますますスポンサーはじめ全国のゴルフファンの皆様に応援していただけるように努力して参ります。

インタビュー後編に続く

柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji