現地6月25日に行なわれるNBAドラフト――。今年のドラフト全体1位指名が予想されるのは、アメリカでの報道を見る限り、ふたりの選手に絞られている。ひとりはデューク大のジャリル・オカフォー、そしてもうひとりはケンタッキー大のカール=アンソニー・タウンズだ。くしくもポジションは、ともにセンター。さらにどちらも大学1年生で、近年のNBAドラフトのキーワードとなっている、大学に1年間だけ在籍してアーリーエントリーする「One & Done」であることも同じである。

 オカフォーが在籍するデューク大は、今年4月に通算5度目のNCAAトーナメント優勝を果たした名門大学だ。昨年のドラフト全体2位で指名されたジャバリ・パーカー(ミルウォーキー・バックス/SF)、2011年の全体1位で指名されたカイリー・アービング(クリーブランド・キャバリアーズ/PG)、1999年に同じく全体1位で指名されたエルトン・ブランド(アトランタ・ホークス/PF)などを輩出している。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 オカフォーは211センチ・125キロの体躯を誇り、「20年にひとりの素材」と早くから将来を期待されている選手だ。各年代別でアメリカ代表に選出され、今年は所属するNCAAディビジョン1のアトランティック・コースト・カンファレンスでプレーヤー・オブ・ザ・イヤーに輝くなど、数多くの個人賞を獲得している。ローポストからパワーでディフェンスを押し込んでフィニッシュすることもできれば、ステップワークを駆使してマークマンを抜き去ることもできる「ピュアセンター」タイプで、サンアントニオ・スパーズのティム・ダンカンに似たタイプと評価されている。

 一方、タウンズもバスケットボールの超名門大学の出身だ。ケンタッキー大出身のNBA選手といえば、2012年の全体1位で指名されたアンソニー・デイビス(ニューオーリンズ・ペリカンズ/PF)、2010年の全体1位指名のジョン・ウォール(ワシントン・ウィザーズ/PG)、2006年に1巡目全体21位でプロ入りしたレイジョン・ロンド(ダラス・マーベリックス/PG)などが挙げられる。

 211センチの身長に加え、222センチのウイングスパンを誇るタウンズは、柔らかいシュートタッチでゴール下のみならず、ミドルレンジからのシュートも得意なセンターだ。ピュアセンターと評されるオカフォーとは対照的に、リムから離れてプレーすることもできるため、「ハイブリッドセンター」と呼ばれている。また、ブロックも得意でディフェンダーとしてのポテンシャルが高いので、1980年代半ばから2000年代初頭にかけて活躍したアキーム・オラジュワン(元ヒューストン・ロケッツなど)タイプと評されることが多い。

 しかし、オカフォーもしくはタウンズ、または他の誰かがドラフト全体1位で指名されたとしても、それに見合う活躍が約束されたわけではない。

 過去20年を振り返り、ドラフト全体1位指名された選手でルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得したのは、以下の8人しかいない。アレン・アイバーソン(1996年ドラフト/元フィラデルフィア・76ersなど)、ティム・ダンカン(1997年)、エルトン・ブランド(1999年)、レブロン・ジェームズ(2003年/クリーブランド・キャブス/SF)、デリック・ローズ(2008年/シカゴ・ブルズ/PG)、ブレイク・グリフィン(2009年/ロサンゼルス・クリッパーズ/PF)、カイリー・アービング(2011年)、アンドリュー・ウィギンス(2014年/ミネソタ・ティンバーウルブズ/SF)だ。

 20人中8人――。つまり、ドラフト全体1位指名された選手がデビューイヤーに最も活躍したルーキーになる確率は、40パーセントでしかない。

 もちろん、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得できなくとも、その後にオールスタークラスに成長したドラフト全体1位選手は多く存在する。ドワイト・ハワード(2004年/ヒューストン・ロケッツ/C)、ジョン・ウォール(2010年)、アンソニー・デイビス(2012年)などがそうだ。

 ただ、今季のドラフト1位指名候補の大本命ふたりが、ともにセンターだという点は少々気にかかる。過去20年間でドラフト全体1位指名されたセンターは、以下の選手たちである。1998年のマイケル・オロウォカンディ(元ロサンゼルス・クリッパーズなど)、2001年のクワミ・ブラウン(前フィラデルフィア・76ers)、2002年のヤオ・ミン(元ヒューストン・ロケッツ)、2004年のドワイト・ハワード、2005年のアンドリュー・ボーガット(ゴールデンステート・ウォリアーズ)、2007年のグレッグ・オデン(前マイアミ・ヒート)の6人だ。

 ヤオ・ミンは現役時代にオールスター級の成績を残し、ハワードもリーグを代表するビッグマンに成長した。ボーガットもチームの主軸ではないものの、ウォリアーズの一員として今年のNBA制覇に貢献している。ただ、残りの3選手はドラフト全体1位にふさわしい活躍を見せたとは言いがたい。

 1998年に鳴り物入りでNBA入りしたオロウォカンディは、毎シーズンのようにケガに悩まされたビッグマンだった。プロ1年目はオールルーキー2ndチームに選ばれるものの、その後は鳴かず飛ばず。2006−2007シーズンを最後に、ひっそりと引退した。不名誉なことに、ドラフト上位指名で期待外れだったビッグマンを、「オロウォカンディ2世」と呼ぶことも多い。

 2001年にワシントン・ウィザーズからドラフト全体1位でピックアップされたクワミ・ブラウンも、悲運な選手のひとりだ。1990年代後半のNBAは、「高卒プレーヤー」が注目され始めた時期だった。1995年に全体5位で指名されたケビン・ガーネット(ミネソタ・ティンバーウルブズ/PF)や、1996年の全体13位でプロ入りしたコービー・ブライアント(ロサンゼルス・レイカーズ/SG)の活躍により、才能あふれる高校生の価値が高騰したのである。

 そんなタイミングで白羽の矢が立ったのが、ブラウンだった。ブラウンは大学進学を取りやめ、NBA史上初となる「高卒ドラフト全体1位」でプロ入りを決意。当時、ウィザーズの編成担当だったマイケル・ジョーダンが才能を高く評価したことも、ブラウンへの期待度を増幅させた。しかし、入団後は結果を残せないままチームを転々とすることになり、2013−2014シーズンを最後にプレーしていない。

 そして現在27歳のオデンも、過去に7度もヒザの手術を受け、実質3シーズンしかプレーできていないドラフト全体1位のセンターだ。実働3シーズンの成績は、平均8.0得点・6.2リバウンド。不運ではあっただろうが、同年のドラフト全体2位指名がケビン・デュラント(オクラホマシティ・サンダー/SF)であることを考えると、期待外れと言わざるを得ない。

 オデンは2013−2014シーズンにマイアミ・ヒートで23試合プレーしたのち、解雇された。その後、オデンの獲得に乗り出すチームは現れず、昨シーズンは所属チームなし。今オフはシャーロット・ホーネッツやダラス・マーベリックスのワークアウトに参加する予定で、NBA復帰を模索している。

「何十年にひとりの逸材」や「ヤング誰々」など、ドラフト前の選手を紹介する際に使われる常套句の数々――。6月25日に選ばれる今年のドラフト全体1位選手が、そこに込められる期待以上の選手に成長してくれることを願いたい。

水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro