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出産という大仕事を終えた後、女性の体はすぐに元通りになるわけではありません。"妊婦さん"が終わると次は"授乳婦さん"になります。つまり、妊娠前の自分ではなく授乳をして子育てをする新しい自分に変化するのです。育児への不安を少しでも解消するためにも、産後のホルモンの変化と産後の肥立ち(回復)について、あらかじめ知っておきましょう。

○後陣痛(こうじんつう)って何?

赤ちゃんを産むために伸びて大きくなった子宮は、出産後、約1カ月をかけて元の大きさまで戻っていきます。産後すぐに子宮が収縮するので、弱い陣痛のような痛みが始まります。これが「後陣痛(こうじんつう)」です。

後陣痛の程度には個人差があり、分娩(ぶんべん)当日から翌日をピークにおさまる人もいれば、1週間ほど続くという人もいます。また、経産婦さんほど痛みが強く、長く続くことが多いです。子宮が元に戻るための大切な収縮なのですが、痛みが我慢できない場合は医師に相談しましょう。

また分娩の際に、肛門と膣の間の皮膚である会陰(えいん)を切開したり(会陰切開)、帝王切開手術を受けたりした場合は、傷による痛みが回復するまでに時間が必要です。

○体重は減る人も増える人も

妊娠中には、人によってかなり幅がありますが、15kg以上増えた! という人もいます。本当に妊娠前の体重に戻れるのか不安になる人も多いでしょう。

出産後は通常、赤ちゃんと、羊水や胎盤の重さを合わせた約4〜5kgの体重が自然に減るとされています。その後、母乳育児では、母乳中のカロリー排せつが多いので2カ月から半年くらいで少しずつ元の体重に戻ることが多いようです。授乳をしない場合は、多少体重が戻りにくいかもしれません。

産後の体重の変化には個人差も大きく、なかには「産後太り」と言って体重が増えてしまう人もいます。だからといって、産後の大事な回復の時期に無理なダイエットをするのは決してお勧めできません。体重がなかなか減らずに悩んだら、食事を抜くことはせずに1日3食の食事内容を見直しつつ、間食を控えるなどの方法で体重を減らしていく努力を。また、産後1〜5カ月は、ヨガなどの骨盤ケア中心の有酸素運動を積極的に行い、6カ月以降は激しいスポーツも可能になるので筋力アップを目指した運動を行いましょう。

○生理再開は卒乳後が一般的

生理の再開時期も、人によってまちまちです。授乳中に分泌される「プロラクチン」というホルモンは、通称「子育てホルモン」と呼ばれ、すぐに妊娠しないように排卵を抑制する働きがあります。すなわち、授乳中には生理が再開しないこと多く、卒乳したら再開したという人がほとんど。しかし、授乳中でも卵巣機能が強いタイプだと5〜6カ月で再開することもあります。

また、母乳をあげていない人の場合は2〜3カ月後くらいの再開が一般的。授乳中であれば、産後1年以上でも生理が始まらないのは普通ですが、母乳を止めて3カ月以上たっても始まらない場合は、一度産婦人科を受診してみましょう。

ちなみにセックスは、1カ月検診で特に問題がなければ、様子を見ながら再開してもよいでしょう。ただし一つ気をつけたいのは、避妊のこと。生理がなくても排卵がいつ起こるかはわからないので、次の妊娠を考えていないのなら必ず避妊が必要です。なお、低用量ピルは授乳中には服用できません。

○産後のマイナートラブル

そのほか産後しばらくは、以下のようなトラブルが起こる場合があります。

・抜け毛
産後は女性ホルモンのバランスが大きく変わるために一時的に抜け毛が増えますが、しっかり栄養を取っていれば、やがて元に戻ります。

・便秘
産後は母乳に水分をとられるため、便秘になりやすい状態。こまめな水分補給が必要です。

・痔(じ)
妊娠中から赤ちゃんを大きく育てるために、子宮とその周りの筋肉が緩んで伸びます。特に骨盤底筋群という、ナプキンをあてる場所の筋肉は出産前後でとても柔らかくなります。骨盤底筋群は子宮や膀胱(ぼうこう)、腸を支えているテント状の筋肉なので、ここが緩むと痔になりやすくなり、赤ちゃんが通過した後はさらに痔が外に出てきてしまいます(脱こう)。骨盤ケアやインナーマッスルを鍛えることで3〜6カ月かけて徐々に戻っていくことが多いので、産後すぐから骨盤底筋群を鍛える体操(ケーゲル体操)をすることをお勧めします。

・尿漏れ
産後は尿道を締めている筋肉がゆるむため、尿漏れしやすくなります。痔と同様の原因で起こるので、同じく産後すぐからケーゲル体操を行いましょう。ほとんどの人は1カ月検診までに治りますが、筋力が弱いタイプの方は長引く場合もあります。

・おっぱいトラブル
食事や生活環境、育児の疲れなどから、乳管が詰まって炎症を起こし乳腺炎になることがあります。逆に、おっぱいがなかなか軌道に乗らず悩む人もいます。また、赤ちゃんが上手におっぱいを吸えないことで乳首に痛みや傷が生じる場合も。いずれにしても、1人で抱え込まずに出産先の産院に相談したり母乳外来に行ってみたりするなど、母乳育児支援をしている施設を探しましょう。

これらのトラブルは、いずれも命に関わらないようなことですが、本人は周囲が思っている以上にナーバスになりがち。また、産後1カ月まではホルモン変化が激しいので、マタニティブルーなど精神的にも不安定になるものです。1人で我慢せずに、症状に応じて産婦人科を受診しましょう。

また、パートナーや周囲の人がこうした体の状態を理解し、気遣ってあげるだけでも、お母さんのストレスはずいぶん軽くなるはずです。そして、「床上げは1カ月で」という昔からの言い伝えのように、まず産後1カ月は寝て過ごし、赤ちゃんのお世話だけにして家事などは控えた方がよいでしょう。これが、産後肥立ちをよくするための秘けつです。

※画像は本文と関係ありません

○善方裕美 医師

日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。

主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0〜6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など

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