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今年の12月から、従業員数50人以上の事業場(※1)をもつ企業は、年1回以上の「ストレスチェック」を実施することが義務づけられる。ストレスチェックとは、従業員が抱えている心理的な負担の程度を把握するための検査であり、職場のメンタルヘルスを向上させることが本制度の目的だ。

厚生労働省が2014年9月に発表した「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、全事業場のうちメンタルヘルスに取り組んでいる事業場の割合は60.7%となっている。一方、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業または退職した労働者がいる事業場の割合は 10.0%と、前年の発表よりも上昇している。多くの企業は、ストレスチェックを職場で適切に運用できるように、これから準備をしていかねばならない。

ところが、マイナビニュースが6月1日に実施したアンケート(※2)では、「改正労働安全衛生法(ストレスチェック制度)が、今年の12月から施行されることを知っていますか?」という設問に対し、「はい」と答えたのは200人中30人、制度の認知度はわずか15%にとどまった。

本記事では、ストレスチェックの導入を円滑にするために、改めて制度について振り返るとともに、既に始まっているストレスチェックサービスについて紹介していこう。

※1 事業場とは、工場や事務所・店舗など「一定の場所において関連する組織のもとに継続的に行われる作業のまとまり」のこと。同じ会社でも場所が離れている場合は、異なる事業場として扱われる。

※2 アンケート対象:マイポ会員のうち社会人、実施日:2015年6月1日、実施方法:Webページに記入、有効回答数:200

○制度導入の背景

ストレスチェック制度導入の背景には、うつや不安などの精神的な不調に悩む働き手の急増がある。

厚生労働省によると、2008年には、うつ病と診断される人の数が100万人を超えた。また警視庁の発表では、2012年の自殺者のうち、勤務問題が理由だった人は約2,500人に上る。厚生労働省によるこの年の労働災害による死亡者数は1,093人であり、自殺者数が上回っている。

さらに、2013年の精神障害による労災補償請求件数は1,409件。これは、4年前と比べておよそ1.25倍に増加した数字だ。ちなみに、年齢別では30〜39歳が最も多く、業種別では、「社会保険・社会福祉・介護事業」「医療業」「道路貨物運送業」「情報サービス業」が上位を占めている。(厚生労働省による平成25年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」参考)

精神的な不調による生産性の低下は、企業にとっても大きな損失となる。2011年に学校法人慶應義塾が実施した調査によれば、統合失調症・うつ病性障害・不安障害による非就業・欠勤・低生産のための社会的コストは、約8兆円にも達する。

仕事を原因に精神に不調を覚え、自殺にまで追い込まれる人が増加傾向にある。こうした背景のもと、昨年に労働安全衛生法の改正法案が可決され、ストレスチェック制度が導入されたのだ。従来の労働安全衛生法は、残業という労働の「量」に対してのアプローチが主だったが、これからは労働の「質」も重視されることとなった。

○実施の流れ

ストレスチェックの実施にあたっては、厚生労働省がマニュアルおよびガイドラインを公開している。大まかな流れは下記の通りだ

(1)事業者による方針の表明
(2)各企業の衛生委員会で実施方法について審議
(3)従業員に周知
(4)調査票を用いたストレスチェック
(5)高ストレス者に対する医師の面接指導(希望者のみ)
(6)職場ごとのストレス傾向を分析
(7) (5)(6)をもとに職場改善

ストレスチェックに用いる調査票は「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域が含まれている必要がある。どのような調査票を用いるかは選択可能だが、国は標準的な調査票として「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を推奨している(厚生労働省のWebサイトよりダウンロード可能)。

ストレスチェックによって高いストレスを抱えていると判断された従業員は、医師による面接指導を希望することができる。そして事業者は、面接指導を踏まえた医師の意見を勘案して、労働時間の短縮や仕事内容の変更といった就業上の措置を執らなければならない。注意すべきは、ストレスチェックの結果は重要な個人情報だということだ。検査結果は検査実施者(医師など)から直接本人に通知され、本人同意がない場合は事業者には提供されない。

この調査によって分かるのは、従業員ひとりひとりのメンタルヘルスだけではない。部・課ごとのストレス傾向を分析することで、どの職場に問題が潜んでいるか、早期発見することができる。この集団分析結果は、個人情報は明かさずに、検査実施者から事業者に提供される。精神的な不調を未然に防ぐためには組織的な対応が欠かせないが、そのための効果的な情報が得られるというわけだ。

○ストレスチェック関連サービス

厚生労働省が運営するメンタルヘルスのポータルサイト「こころの耳」では、ストレスチェック制度に関わる情報提供や、心の悩みを相談できる機関の紹介が行われている。

USENやNECソリューションイノベータ、富士通など企業各社では、ストレスチェック制度に対応したサービスが提供されている。例えばUSENでは、ストレスチェックはもちろん、神経精神科の医師が監修するeラーニングでメンタルヘルスに関する知識を得ることができる「こころの保健室」というサービスを展開している。

「こころの耳」では、集団ごとの集計・分析や高ストレス者の選定などができないことから、労働者が「こころの耳」を利用してセルフチェックを行っただけでは、法に基づくストレスチェックを実施したことにはならないと厚生労働省が発表している。「こころの保険室」だと、個人結果に基づき、全体や組織ごとに集計された結果が、全国平均と共に表示されるなど、厚生労働省の指針や法令にそったサービスとなっており、ストレスチェック制度に対応している。さらに、ASPサービスとして提供されており、自社専用のページを作成できたり、機能の出し分けができるなど、企業ごとにカスタマイズできるといった特徴を持っている。このほかにも、ストレスチェック制度に向けたサービスを、企業各社で提供しているので、詳しくは各Webサイトで確認していただきたい。

また、Webサービス以外にも社員向けのメンタルヘルス講師養成講座など、12月に向けてストレスチェック関連サービスの数々が動き出している。働きやすい環境をつくり出していくための、良い契機とすべきだろう。

(瀬戸義章)