業界紙や専門誌の知られざる世界を紹介。今回は「日用品・化粧品業界のスタンダード紙」をピックアップします。

『石鹸日用品新報』
創刊:1948年
刊行ペース:毎週水曜日発行
部数:1万2000部
読者層:原料メーカー、日用品・化粧品製造・販売会社、卸店、ドラッグストア、ホームセンター、スーパーなど。
定価:1万6200円(年間購読・送料込)
購入方法:1年以上の定期購読が基本で、発売元・石鹸新報社に直接注文。

 スーパーやホームセンターで、つい足を止めてしまうシャンプー、歯みがき、石鹸、洗濯用洗剤の売り場。そこから発する香りが、より強烈になったことにお気づきだろうか。

「6、7年前からですね。日本人の好む香りがこうまで変わるとは、誰も予測できなかったと思いますよ」

 そう語るのは藤岡章浩編集長(52才)。特に柔軟仕上げ剤の変化が大きいとか。

「それまでほんのりとした香りが主流だったのですが、今は強い香りのものが売れていて、10年前と比べると約1.5倍の売り上げです」

 そのきっかけを作ったのが“ダウニー”(P&G)。花の蜜のような香りのほか、甘く情熱的な香りやエキゾチックな香りなど種類も多い。

 日本の店頭で販売されているダウニーは、輸入代理店等がアメリカやメキシコ、ベトナムから輸入したもので、国産品より高価格だ。これがヒットして、日本製の柔軟剤も香りが強いものが発売されたという。

「時代の先端を行く女性たちがアメリカ本土やハワイに旅行して、日本にはなかった香りに触れ、輸入雑貨店を探して買うようになったんですよ」

 香り重視は、歯みがきにもみられると、同紙は記している。

〈エスケー石鹸は…“ローズミントハミガキ”(90グラム550円)を新発売する。…30〜40代の“大人女子”をターゲットに…上品なローズの香りが約30〜60分続く〉

〈“デンティスは…“目覚めてすぐKiSSできる”ことを謳い、特に口臭エチケットに敏感な20〜30代女性に支持されている”〉

「また、昨今は歯周病予防も歯みがきのトレンドになっています。歯みがき、歯ブラシのほか、フロスや液体洗口液なども売り上げを伸ばしていますね」

 6月4日が“虫歯の日”なら、毎月8日は歯ブラシの日だ。歯のケアには気づかっていても、歯ブラシの毛先が広がっている人は多い。

「使い続けて毛先が開いた歯ブラシは清掃力が4割減る、というデータもあり、月に1度、交換するのが理想です」

 と、藤岡さん。

 歯ブラシ、石鹸、トイレットペーハー。とにかくそこにあって当たり前の“日用品”だが、それが店から消えたらどうなるか。災害時、トイレットペーパーなどが入荷されずに、途方に暮れた人も多いのではないか。

 実は、ここ数年、それに近い危機が、日本各地で起きかねなかった、ということは意外と知られていない。

「多くの商品は、メーカー、卸業、お店を通して私たちの手に渡ります。例えば業界トップの花王は、自社商品の96%が大型店舗などへの直販で、全国9万店に直接配送しています。そして残る4%を“代行店”と呼ぶ中小、家族経営の卸売業が、花王から仕入れて、お店に配送しているのですが、その数、なんと直販店より多い11万店」

 みな地域に密着した小売店だが、そこが大型店との競争に負けて店じまいをすると、納入していた卸売業は経営が厳しくなって、廃業に追い込まれる。

 1989年に1540社あった日用品卸売業が、吸収合併などにより、2013年には305社にまで激減した。

 その結果、このままでは日本中の山間部、僻地、離島などに商品が行き渡らない、という事態がすぐそこまで押し寄せていたという。藤岡さんは言う。

「卸売業は、毛細血管に血液を送るような役目。人も国も、毛細血管の動きが止まると生命の危機です」

 そこで今年5月、全国の地域に密着した卸(現76社)が集まって、全国規模のネットワークを組み、“サプリコ”という組織をつくって、全国津々浦々に商品が届く仕組みをつくり上げた。

 石鹸の香りが私たちの手元に届くまでには、多くの物語が紡がれていたのである。

※女性セブン2015年7月2日号