魚がいない「タブレット鮮魚店」が出現

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「そのヒラメ、どう調理するの?」とある昼下がりの東京・神楽坂、オシャレな雑貨店で近所の主婦がタブレットに話しかけている。窓にはためくカラフルな大漁旗から察するに鮮魚店のようだが、肝心の魚がない──何あろう、ここは「魚のない鮮魚店」である。

 本業はトラック運転手の吉川仁さん(62)が、週末の副業として始めた鮮魚店。故郷の北海道・小樽のホッケが無性に食べたくなり、4年前にこの商売を思いついた。付き合いのあったJR小樽駅前の三角市場で店を構える川嶋鮮魚店とネットで結び、ライブ中継で50種類もの新鮮な魚介類を売りさばく。

 吉川さんが手にするタブレットに映るのは850キロ離れた川嶋鮮魚店の魚。常時50種類揃う食材の中から選べる。小樽の店先では、川嶋孝幸社長が店先でスマートフォンで魚を映しながら東京の客に説明する。

「私の利益は15%ですが、産地直送だから安い。馴染みのない魚も多いけど、さばき方を教えてあげるので喜ばれています。1日4万円売れる日もあります」(吉川さん)

 その場で購入した旬の魚介は、翌々日には自宅に届く。

 普段の週末は三軒茶屋の駐車場で11時から16時まで“店”を開くが、声がかかればどこの町にでも出張。吉川さんの人柄も手伝い客足は途絶えない。

■撮影/渡辺利博

※週刊ポスト2015年7月3日号